- 著者
-
渡邉 克晃
北川 隆司
- 出版者
- Japan Association of Mineralogical Sciences
- 雑誌
- 日本鉱物学会年会講演要旨集
- 巻号頁・発行日
- pp.77, 2004 (Released:2005-03-10)
はじめに 露出している岩石表面にはしばしば地衣類の生育が観察される。地衣‐岩石接触面では地衣類による物理的・化学的変質作用が起こっており、一次鉱物の微小片や、粘土鉱物および鉄の酸化物・水酸化物などの二次生成鉱物が接触面に沿って保持されることが知られている(Banfield et al., 1999)。そしてこれらの生成物に地衣体の遺骸が加わることで、土壌前駆物質としてのはたらきを有することになり、こうした現象は初生的な土壌生成作用であるとみなすことが出来る(大羽・永塚,1988)。 近年の急速な都市化によって天然の岩石・土壌は様々な人工基物で覆われるようになり、それに伴い人工基物表面にも地衣類の生育が観察されるようになった。ただしその種類数、個体数は著しく貧弱である。代表的な人工基物であるアスファルトおよびコンクリートは、その主成分が破砕岩石片であるにもかかわらず、天然の岩石表面と比べて地衣類の生育が制限されている。人工基物と地衣類との間ではどのような作用が起こっているのか、地衣‐花崗岩接触面での現象と比較した結果を報告する。試料採取および実験方法 人工基物(アスファルトおよびコンクリート)表面に生育する地衣類のサンプルとして、固着地衣類Porpidiaを広島県東広島市の市街地から採取した。また、花崗岩表面に生育する地衣類のサンプルとして、同じく固着地衣類Porpidiaを広島県本郷町から採取した。 採取したそれぞれの試料の薄片試料を作成し、偏光顕微鏡観察とEPMAによる化学分析を実施した。結果 花崗岩‐地衣接触面では、花崗岩構成鉱物である黒雲母と地衣類との間で物理的破壊現象および化学的変質現象が認められた。しかし、他の構成鉱物である石英および長石類との接触面でははっきりとこれらの現象を確認できなかった。一方、人工基物‐地衣接触面では、構成鉱物と地衣類との間に明瞭な相互作用を見出すことができなかった。文献・ 大羽裕・永塚鎮男(1988)土壌生成分類学,122-126.・ Banfield et al. (1999) Biological impact on mineral dissolution. Pro. Natl. Acad. Sci., USA. 96, 3404-3411.