著者
渡邊 康玄 高杉 優人 片山 小裕美
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.I_775-I_780, 2021 (Released:2022-02-15)
参考文献数
10

砂防ダムは,土砂災害防止の観点から極めて有効な構造物であるが,河床縦断形や土砂輸送の不連続を生じさせ,河川環境の観点からはこれらへの対策が必要となっている.近年,既設の砂防ダムにスリットを入れ,大規模出水時には土砂を捕捉し,小規模出水時には土砂を流下させる機能を持たせて,河川環境の改善を図る例が多くなっている.河床縦断形や土砂輸送の観点からの知見は増えてきているものの,河床材料の質や河床形態の変化という点では,いまだ十分に明らかにされていない.本研究では,知床半島に位置するイワウベツ川の砂防ダムを基にした水理模型実験を実施し,小規模出水時に排出される土砂によるダム上下流の河道の応答と,その後の大規模出水時の河道の応答について検討を行った.その結果,ダムのスリット化により,河床高の連続性が回復するとともに,小規模出水では,ダムが存在しない状態及びスリット化以前の交互砂州形状を維持するものの,その後の大規模出水時には交互砂州の波長,波高とも増大することが把握された.
著者
渡辺 恵三 中村 太士 加村 邦茂 山田 浩之 渡邊 康玄 土屋 進
出版者
Ecology and Civil Engineering Society
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.133-146, 2001-12-27 (Released:2009-05-22)
参考文献数
55
被引用文献数
24 21

本研究では河川構造の空間スケールの階層性および関連性に着目し,河川改修が底生魚類の分布よび生息環境におよぼす影響を明らかにすることを目的とした.調査は,1998年9月から1999年9月までの1年間,石狩川水系真駒内川において施設整備の異なる約2km区間を河道区間スケール(護岸区間,自然区間,流路工区間)として設定し,各区間を通過する物質量を測定した.さらに各河道区間内において瀬と淵を流路単位スケールとして設定し,各流路単位における底生魚類と生息環境の関係の解析をおこなった.ハナカジカの生息密度は,自然区間,護岸区間に比べて流路工区間で著しく低かった.しかし,フクドジョウの生息密度は河道区間による差はみられなかった。パナカジカの生息密度が低かった流路工区間では自然区間,護岸区間と比較して河床の特性に違いが認められ,特に小粒径砂礫が多く,浮き石が少なかった.また,ハナカジカの生息密度は,巨礫と浮き石の割合に強い正の相関が認められた.このことから,流路工区間で生息密度が低かったのは,生息環境や産卵環境および避難場所として利用可能な巨礫や浮き石の減少によるものと考えられた.流路工区間の瀬において巨礫や浮き石の割合が自然区間および護岸区間に比べて低かったのは,河道区間スケールの影響として増水時における掃流力の低下にともなう小粒径砂礫の堆積および河床が動きづらくなったことすなわち攪乱が起こりにくくなったことが考えられた.さらに,流路単位スケールにおいては,平水時における微細粒子の被覆・堆積によるものと考えられた.このように,河道区間スケールおよび流路単位スケールの階層性のある各空間スケールに関連した要因によって,ハナカジカの主な生息場所である瀬の河床材料およびその状態が改変した結果,流路工区間においてハナカジカの生息密度は低かったと考えられる。