著者
渡邊 忍 山田 麻紗子 小平 英志 橋本 和明
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal social Welfare, Nihon Fukushi University (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
vol.137, pp.25-38, 2017-09-30

本研究の目的は,児童虐待における虐待者の特徴と児童相談所職員の対応の困難さとの関連を明らかにすることであった.2012 年度にA 市児童相談所が受理・対応したリスクアセスメントレベルが3 もしくは4 の314 件を調査対象とし,各ケースにかかわりのあった職員45 名に調査票への回答を依頼した.虐待者の特徴を示す39 の項目のカテゴリカル主成分分析の結果,イライラやストレスから子どもに行き過ぎたしつけを行う「過度のしつけ」,育児の放棄や家族の生活の不成立を示す「生活能力の乏しさ」,問題を自覚しつつも精神的な安定が得られずに子どもと関われない「感情不安定」の3 つの成分が抽出された.児童相談所職員の感じる困難さとの関連では,行為は認めるが虐待を否認するケース,感情的で話ができないケースで虐待者の「過度のしつけ」が高く,虐待を認めたり消極的に否定するケース,穏やかで関係が形成しやすいケースで虐待者の「感情不安定」が高くなっていた.また,全面的な解決に至らず長期化するケースにおいて「過度のしつけ」と「生活能力の乏しさ」の両方が高かった.これらの結果をふまえ,ソーシャルワークの観点から効果的な支援について議論がなされた.
著者
千賀 則史 姜 民護 山田 麻紗子 渡邊 忍
出版者
日本子ども家庭福祉学会
雑誌
子ども家庭福祉学 (ISSN:1347183X)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.56-68, 2022-11-25 (Released:2023-01-24)
参考文献数
25

本研究では,ネグレクト・心理的虐待事例においてどのように児童相談所が一時保護の判断をしているのかを明らかにすることを目的とした.16名の児童相談所職員にインタビューを実施し,得られたデータは構造構成主義的質的研究法(SCQRM)をメタ研究法とした修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)により分析を行った.その結果,【緊急一時保護の必要性】【子どもに生じている悪影響】【家族の改善可能性】からなるモデルが構築された.本研究より,児童相談所におけるネグレクト・心理的虐待事例への対応は,【緊急一時保護の必要性】の判断から始まるという点では,他の虐待種別と変わらないことがわかった.しかし,子どもの危害がそれほど顕在化していないネグレクト・心理的虐待事例では,児童相談所は,【子どもに生じている悪影響】と【家族の改善可能性】の両方のバランスを丁寧にアセスメントすることで,一時保護を行うかどうかの判断をしていることが示唆された.
著者
山田 麻紗子 渡邊 忍 小平 英志 橋本 和明
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal social Welfare, Nihon Fukushi University (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
vol.137, pp.133-151, 2017-09-30

筆者たちは児童虐待への効果的支援のあり方を探るため,2015 年の児童虐待対応の先進国であるアメリカ(ニューヨーク市,バージニア州)視察に続いて,2016 年に韓国(ソウル市)の関係機関10 ケ所を,次の2 つの知見を得るために視察した.それらは,①韓国の児童虐待に関わる各関係機関の役割・機能,②各関係機関の連携・協働の実際についてである.その結果,過去10 年間における韓国の児童虐待等に関する取り組みには格段の進歩があり,日本にとって学ぶ点が複数みられた.政府,司法,地方自治体,民間機関が縦横に連携・協働している点やひまわり児童センターの総合支援システムには,目を見張るものがある.本稿では,韓国ソウル市における児童虐待,児童福祉の現状と課題などを紹介したい.
著者
山田 麻紗子 渡邊 忍 小平 英志 橋本 和明
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal social Welfare, Nihon Fukushi University (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
vol.137, pp.133-151, 2017-09-30

筆者たちは児童虐待への効果的支援のあり方を探るため,2015 年の児童虐待対応の先進国であるアメリカ(ニューヨーク市,バージニア州)視察に続いて,2016 年に韓国(ソウル市)の関係機関10 ケ所を,次の2 つの知見を得るために視察した.それらは,①韓国の児童虐待に関わる各関係機関の役割・機能,②各関係機関の連携・協働の実際についてである.その結果,過去10 年間における韓国の児童虐待等に関する取り組みには格段の進歩があり,日本にとって学ぶ点が複数みられた.政府,司法,地方自治体,民間機関が縦横に連携・協働している点やひまわり児童センターの総合支援システムには,目を見張るものがある.本稿では,韓国ソウル市における児童虐待,児童福祉の現状と課題などを紹介したい.