著者
渡邊 衡一郎
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.27-29, 2020-03-30 (Released:2020-03-31)
参考文献数
5

2018年,ついに「公認心理師」が始動した。これまで主であった「臨床心理士」は認定協会による認定資格であり,心理分野における待望の国家資格の誕生である。精神科医は当事者をとかく現症などから横断的に捉えがちである一方で,心理師は心理テストなどの技法を駆使し,縦断的に捉える。心理師からの情報は,我々精神科医が目の前の当事者について,より奥行きを持って捉え,正確な判断を行うための一助となっている。現在の精神医療において,当事者からの精神療法へのニーズは増しているが,限られた時間の中で医師がその全てに応えることは難しい。そこで心理師の出番であるが,認知行動療法が「看護師」が行った場合にのみ保険上算定されて来たことからも分かるように,心理師達の労力に対して,これまで適切な対価が支払われてこなかった。今後,「心理師」が国家資格となったことで認知行動療法を初めとする心理師達が行う精神療法が算定されるようになれば,これまで以上に様々な治療法を呈示することが可能になると考える。認知行動療法などの精神療法の実施,リサーチアシスタントなど,医療施設における心理師の活躍の場は多岐に亘る。国家資格化を機に,これまで以上に精神科医と心理師が密に連携することで,より当事者のニーズに応えることが可能となり,ひいては臨床の質の向上につながることが期待される。
著者
渡邊 衡一郎
出版者
一般社団法人 日本総合病院精神医学会
雑誌
総合病院精神医学 (ISSN:09155872)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.262-267, 2013-07-15 (Released:2016-12-28)
参考文献数
19

うつ病治療において認知行動療法(CBT)が保険適応となり,改めて非薬物療法的アプローチが注目されている。本稿ではうつ病を例にとり,非薬物療法的アプローチの国内外のガイドラインにおける位置づけと,実臨床への応用の可能性について言及した。国内外のうつ病治療ガイドラインを概観すると,薬物療法は中等症例以上では推奨されているが,軽症例では次善の策に位置しており,むしろ当事者を適切な方向に導くような非薬物療法的アプローチが推奨されている。さらには当事者の背景や希望・嗜好などによって治療アプローチが決められることが望ましいとされる。その決め方としては,当事者と治療者がともに治療方針を決定するShared Decision Making (SDM)が推奨される。当事者が「安心・満足・納得」し,その結果レジリエンス(自己回復力)を刺激するようなアプローチこそ意義があると考える。今後,当事者を安心させる支持的精神療法の重要性も認識しつつ,より多くの非薬物療法的アプローチをわれわれ臨床医が治療選択肢に加えられるよう努めなければならないだろう。
著者
西 大輔 渡邊 衡一郎 松岡 豊
出版者
一般社団法人 日本総合病院精神医学会
雑誌
総合病院精神医学 (ISSN:09155872)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.2-9, 2012-01-15 (Released:2015-08-26)
参考文献数
38
被引用文献数
1

レジリエンスは非常に注目されている概念であるが,その理解や臨床への活用は必ずしも容易ではない。本稿では,レジリエンスの理解を深めるため,レジリエンスが注目されてきている理由について考察し,①時間軸も含んだ概念であること,②修正・介入の可能性を含んだ概念であること, ③レジリエンスを「自然治癒力の現代医学版」とみなすことで治療論や回復論が発展する可能性が高まること,の3点をあげた。また総合病院精神科における臨床への活用について,慢性うつ病とディスチミア親和型うつ病への対応および治療方針の決定の際に重視されてきている「Shared decision making」について取り上げ,それらをレジリエンスの視点からとらえなおすことを試みた。レジリエンスという概念の下に実証的研究の成果と臨床から得られた知見を有機的につなげることで,レジリエンスは総合病院精神医学の発展にも大きく寄与し得ると考えられる。