著者
湧上 聖 末永 英文 江頭 有朋 平 敏裕 渡嘉敷 崇 山崎 富浩 前原 愛和 上地 和美
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.304-308, 2000-04-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
15
被引用文献数
9 5

長期経腸栄養患者に銅欠乏が出現することが時々報告され, 貧血及び好中球減少症を伴うことがある. ある種の経腸栄養剤の銅含量が少ないことが原因で, 治療は硫酸銅や銅含量が多い経腸栄養剤で行われている. 今回, 食品である銅含量の多いココアを用いて銅欠乏の治療を行い, 銅の必要量を検討してみた. 当院に平成10年に入院していた経腸栄養患者86人を対象とした. 男性40人, 女性46人, 平均年齢69歳であった. 基礎疾患は脳卒中71人, 神経疾患5人, その他10人であった. CBC, 電解質, 腎・肝機能, 総蛋白, コレステロール, 血清銅 (正常値78~136μg/dl) を全症例に検査した. まず, 血清銅が20μg/dl以下の8症例に対して, ココアを一日30~45g (銅1.14~1.71mg), 血清銅が77μg/dl以下の31症例に対してはココアを一日10g (銅0.38mg) 経腸栄養剤に混注して1~2カ月間投与した. ココアの量が30~459の8症例の内, 2例が嘔吐と下痢で中断した. 残り6症例は血清銅が平均8.7±6.2から99.0±25.4μg/dlと有意に改善した. ココアの量が10gの31症例は血清銅が平均50.5±19.3から89.0±12.9μg/dlと有意に改善した. 銅欠乏に伴う貧血及び好中球減少も改善傾向がみられた. その後ココア10gで改善した23例についてココアを5g (銅0.19mg) に減量したところ, 平均98±36日で血清銅は90.7±10.4から100.6±17.1μg/dlへ有意に上昇した. これまで成人の一日銅必要量は1.28~2.5mgとされていたが, 今回の結果から銅欠乏の治療に関してはココア一日10g, 銅として0.6mg (ココアの銅含量0.38mgと栄養剤の平均銅含量0.22mg), 維持についてはココア5g, 銅として0.37mg (ココアの銅含量0.19mgと栄養剤の平均銅含量0.18mg) で十分だと示唆され, 経腸栄養剤開発における銅含量の参考になると思われる.
著者
湧上 聖 今村 義典 平 敏裕 山崎 富浩 渡嘉敷 崇 江頭 有朋 末永 英文 前原 愛和 上地 和美
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.88, no.12, pp.2466-2468, 1999-12-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
10
被引用文献数
5

当院に入院していた経腸栄養患者76人中42人が銅欠乏の状態であった.血清銅値が1~27μg/dlの患者8人に対して,ピュアココア30~45g/日を経腸栄養剤に混注し, 1~2カ月使用した. 8例中2例は嘔吐や下痢のため中断し, 1例は途中で輸血を行った.残りの5例は血清銅が12→101μg/dl,ヘモグロビンが10.9→11.9g/dl,白血球が5380→7600と改善がみられた.ココアが銅欠乏症に有効であることがわかった.
著者
湧上 聖 末永 英文 江頭 有朋 平 敏裕 渡嘉敷 崇 山崎 富浩 前原 愛和 上地 和美
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.304-308, 2000
被引用文献数
5

長期経腸栄養患者に銅欠乏が出現することが時々報告され, 貧血及び好中球減少症を伴うことがある. ある種の経腸栄養剤の銅含量が少ないことが原因で, 治療は硫酸銅や銅含量が多い経腸栄養剤で行われている. 今回, 食品である銅含量の多いココアを用いて銅欠乏の治療を行い, 銅の必要量を検討してみた. 当院に平成10年に入院していた経腸栄養患者86人を対象とした. 男性40人, 女性46人, 平均年齢69歳であった. 基礎疾患は脳卒中71人, 神経疾患5人, その他10人であった. CBC, 電解質, 腎・肝機能, 総蛋白, コレステロール, 血清銅 (正常値78~136μg/d<i>l</i>) を全症例に検査した. まず, 血清銅が20μg/d<i>l</i>以下の8症例に対して, ココアを一日30~45g (銅1.14~1.71mg), 血清銅が77μg/d<i>l</i>以下の31症例に対してはココアを一日10g (銅0.38mg) 経腸栄養剤に混注して1~2カ月間投与した. ココアの量が30~459の8症例の内, 2例が嘔吐と下痢で中断した. 残り6症例は血清銅が平均8.7±6.2から99.0±25.4μg/d<i>l</i>と有意に改善した. ココアの量が10gの31症例は血清銅が平均50.5±19.3から89.0±12.9μg/d<i>l</i>と有意に改善した. 銅欠乏に伴う貧血及び好中球減少も改善傾向がみられた. その後ココア10gで改善した23例についてココアを5g (銅0.19mg) に減量したところ, 平均98±36日で血清銅は90.7±10.4から100.6±17.1μg/d<i>l</i>へ有意に上昇した. これまで成人の一日銅必要量は1.28~2.5mgとされていたが, 今回の結果から銅欠乏の治療に関してはココア一日10g, 銅として0.6mg (ココアの銅含量0.38mgと栄養剤の平均銅含量0.22mg), 維持についてはココア5g, 銅として0.37mg (ココアの銅含量0.19mgと栄養剤の平均銅含量0.18mg) で十分だと示唆され, 経腸栄養剤開発における銅含量の参考になると思われる.