著者
山口 夏美 西尾 進 門田 宗之 森田 沙瑛 湯浅 麻美 松本 力三 平田 有紀奈 山尾 雅美 楠瀬 賢也 山田 博胤 佐田 政隆
出版者
一般社団法人 日本超音波検査学会
雑誌
超音波検査技術 (ISSN:18814506)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.590-596, 2022-12-01 (Released:2022-11-22)
参考文献数
20

症例は,60代女性.幼少期に心雑音を指摘され,21歳時に当院で膜様部型心室中隔欠損症と診断されていたが,その後は医療機関を受診していなかった.今回,発熱および咳嗽を主訴に近医を受診し,血液検査で細菌感染が疑われ,抗生剤が処方された.心拡大とNT-proBNPが高値であったことから精査のため前医を紹介受診したところ,経胸壁心エコー図検査で肺動脈弁に長径30 mm程度の可動性を有する心筋と等輝度の異常構造物を認め,重症の肺動脈弁逆流を呈していた.感染性心内膜炎の診断で同日に前医に入院し,抗生剤が開始された.その後,外科的治療検討のため当院へ紹介となった.同日施行された経胸壁心エコー図検査では肺動脈弁に付着する巨大な疣腫と重症の肺動脈弁逆流を認めた.また,心室中隔膜様部に既知の心室中隔欠損を認めた.さらに右室内に異常筋束を認め,右室二腔症と診断された.前医の血液培養からStaphylococcus warneriが検出された.血行動態は安定しており,明らかな塞栓症は起こしていなかったため抗生剤による加療が優先された.その後,待機的に肺動脈弁置換術,心室中隔欠損閉鎖術,右室流出路心筋切除術が施行された.右心系の感染性心内膜炎の割合は感染性心内膜炎全体の5~10%程度とされており,左心系に比べ少ない.今回,先天性心疾患に合併した肺動脈弁位感染性心内膜炎の1例を経験したので報告する.
著者
湯浅 麻美 西尾 進 平田 有紀奈 大櫛 祐一郎 荒瀬 美晴 楠瀬 賢也 山田 博胤 佐田 政隆
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.404-411, 2022-07-25 (Released:2022-07-25)
参考文献数
17

目的:潰瘍形成を伴うプラークは,要注意プラークとして脳梗塞発症のリスクを有するとされている。また,頸動脈エコー検査時に偶然発見される無症候性の潰瘍形成を伴うプラークは少なくない。本研究の目的は,頸動脈エコー検査において無症候で発見された潰瘍形成を伴うプラークが,同様のリスクを有する潰瘍形成のないプラークと比べ,経過観察中に脳梗塞を疑うような神経学的症状(以下,神経学的症状)出現が多いか否かを検討することである。方法:2014年1月から2018年12月までの間に,初回超音波検査で潰瘍形成を認めた87例を潰瘍形成群,初回検査で潰瘍形成を伴うプラークを指摘されなかった1,526例から,propensity scoreを用いてリスクファクターをマッチさせた87例を抽出し非潰瘍形成群とした。両群の神経学的症状出現の有無について後ろ向きに調査し,比較検討した。成績:検査後の経過観察中に神経学的症状の出現を認めたのは,潰瘍形成群87例中2例(ともに一過性脳虚血発作)であり,非潰瘍形成群では神経学的症状の出現を認めなかった。2群間の神経学的症状出現の有無について統計学的有意差を認めなかった。結論:無症候で発見された潰瘍形成を伴うプラークは,経過観察中の神経学的症状出現と有意な関連を認めなかった。