著者
溝口 環 飯島 節 江藤 文夫 石塚 彰映 折茂 肇
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.30, no.10, pp.835-840, 1993-10-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
14
被引用文献数
17 31 17

痴呆に伴う各種の行動異常は介護者にとって大きな負担となるが, 行動異常を定量的に評価する方法はまだ確立されていない. そこで, Baumgarten らの Dementia Behavior Disturbance Scale (DBDスケール) を用いて, 痴呆患者の行動異常の評価を試み, 評価法の信頼性と妥当性ならびに介護者の有する負担感との関連について検討した.痴呆群27例 (アルツハイマー型21例, 脳血管性6例, 男性9例, 女性18例, 平均年齢77.7歳) および神経疾患を有するが痴呆のない非痴呆群17例 (男性2例, 女性15例, 平均年齢76.8歳) の外来通院患者と施設入所痴呆患者10例 (アルツハイマー型9例, 脳血管性1例, 男性2例, 女性8例, 平均年齢82.3歳) を対象とした. DBDスケールは, 28項目の質問からなり, 異常行動の出現頻度を5段階に分けて介護者が評価した.DBDスケールの信頼性については, 再テスト法の相関係数0.96, Cronbach のα係数0.95, 評価者間信頼性は Intraclass Correlation Coefficient (ICC) 平均0.71と何れも高い値を示した. 妥当性については, DBDスケール得点と簡易知能質問紙法 (SPMSQ) 誤答数との相関係数0.54と知的機能との相関は良好であった. DBD得点とアンケートで評価した介護者の負担感との間に有意の相関を認め (r=0.53), 介護の負担度を反映し得る指標としての有用性も示唆された.DBDスケールは, 痴呆に伴う行動異常の客観的評価や経過観察の方法として信頼性が高く, 介護負担も反映しうる有用な評価法である.