著者
安田 知子 溝田 康司 小嶺 衛 仲盛 真史
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.175, 2007

【はじめに】<BR> 沖縄理学療法士会には、社会局スポーツ推進部があり、その役割として、理学療法士の立場からスポーツ活動を支援することである。本部の活動は広く県民の健康増進や楽しむべきスポーツ活動時のケガの予防とその対応などに寄与する公益事業の一つと位置づけている。<BR> 今回、高知県理学療法士会からの紹介を受け、韓国プロ野球チームの春季キャンプにおけるコンディショニングサポートを行う機会を得たので、若干の考察を加え報告する。<BR>【経緯】<BR> 平成19年2月中旬に高知県理学療法士会事務局より、沖縄県理学療法士会事務局に以下のような依頼があった。<BR> 1月より高知県下にて春季キャンプを行っていた韓国のプロ野球チームSが2月15日より沖縄でオープン戦を含むキャンプを継続することになっている。高知県理学療法士会は、このチームから依頼を受け、1月中旬から2月中旬までの間の2週間、夜間練習後にコンディショニングのサポートを行っており、引き続き沖縄でもできないかという相談を受けたので、対応をお願いしたいということであった。<BR> チームはすでに15日に沖縄入りしており、早急な対応が必要となり、会長の勅命とともにスポーツ推進部担当理事、部長の承諾の基、活動を行うこととなった。<BR>【期間および活動内容】<BR> 平成19年2月15日から3月8日までの沖縄キャンプ期間中に、夜間練習後のコンディショニングの対応が可能であったのは11日であった。内容は、チームトレーナーの指示を受け、主として疲労回復を目的としたマッサージを含む徒手的療法を行った。対応選手数は、延べ38名で、ポジションの内訳は、投手19名、内野手7名、外野手6名、不明6名であった。<BR> サポートに対応した県士会員は、14名であった。終了後アンケートは、14名中10名から回答を得た(回収率71.4%)。その結果、協力者の平均経験年数は2.8年であった。また、全員が活動への興味から協力を希望し、7名が今後も同様な活動があれば積極的に協力したいと答えた。しかし、今回の貢献度としては、不満足であると答えた者が半数の5名いた。さらに言葉が通じないことに対する不安があるとした者が7名、どのように対応したらいいかわからないとした者は4名であった。<BR>【考察】<BR> 沖縄県は、年間を通じた温暖な気候のため各種スポーツの合宿が盛んに行われている。プロ野球について言えば、今年も日本が1軍8球団2軍4球団、韓国は3球団が春季キャンプを行っている。今回のようなプロのスポーツチームのサポートは日ごろの臨床とは異なった技量が要求され、我々も対応に苦慮するところではある。しかし、沖縄県の県外に対する公益性を考えた時、我々も関与できる可能性を示唆したものと考えられる。対応チームが韓国であったことも考慮すれば、国際的な貢献もあるものと考えられ、今後も同様の依頼があれば積極的に協力すべきと考える。
著者
福田 聡史 喜屋武 龍介 林 敏彦 溝田 康司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1722, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】理学療法士の(以下,PT)の臨床実習では,学生は学内で学習した知識や技術を臨床時現場で活かすための体験ができる貴重な機会である。一方で,学生の指導を担当する指導者(SV)は臨床業務も多く,また,指導のための手間は多岐に渡る。さらに学生のレディネスが不十分な場合には実習を十分に遂行できないこともあり,教員のサポートが必要な場合も多い。今回,長期臨床実習において教員が毎週施設に訪問し,実習の進捗状況や学生の生活状況,指導者と教員の情報共有ツールとしてのプログレスノートを用い,即時性のある対応を試みた。その内容をテキストマイニング手法を用いて分析したので報告する。【方法】事前に今回の取り組みを説明し,同意の得られた施設の指導者とその責任者,当該施設で実習を行う実習生9名と当学院の教員3名を対象とした。各施設に当学院の教員を1名割り当て,毎週1回各施設を訪問した。訪問時の共有ツールとして「実習計画及び経過記録表(以下,プログレスノート)」を作成し,「生活状況」「実習進捗状況」「実習計画」「その他・連絡事項」の4項目について教員と指導者が自由に記入し,併せて面談を行い経過を追った。プログレスノートの記録結果を,上記4カテゴリーに分類し,記載内容を実習の進捗にポジティブに働く要素や言葉(以下,ポジティブ),ネガティブな要素や言葉(以下,ネガティブ),その他の項目に分け,実習経過に沿った変化を概観的に検討した。また,立命館大学樋口耕一氏が開発したフリーウェアKH Coderを用い,プログレスノートに記載された内容についてテキストデータマイニング分析を行った。【結果】テキストマイニングの分析結果を基に共起ネットワークの結果をまとめた。すべての項目の中心となったワードは,1~2週目は「コミュニケーション」「生活状況」,3~5週目は「1症例目」「初期評価」「発表」,6~8週目は「2症例目」「中間評価」9週目は「発表終了」「レジュメ作成」「修正」「まとめ」,10週目は,「アドバイス」であった。ネガティブ要素のみを抽出した結果,実習の前半においては,「知識」「状況」と「不十分」「低い」がネットワークを形成し,中盤からは,前半のワードに「指導」「検査」が加わった。後半においても同様の傾向を示し,その頻度は増加した。【結論】これらのことから実習前半では学生と指導者間での実習状況や生活状況についてネガティブなワードが多く見られ,ストレスにつながりやすい状況にあると考えられる。実習前半での学生の環境への適応や現場で学びに関する支援やサポートが必要であると考えられる。ネガティブ要素についてテキストマイニング手法を用いて分析する事で,指導者と学生間のストレスにつながりやすい状況について経時的変化を可視化し捉える事が出来ると考える。