- 著者
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安田 知子
小嶺 衛
牧門 武善
座波 信司
城間 定治
仲西 孝之
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement
- 巻号頁・発行日
- vol.2010, pp.GbPI1465, 2011
【目的】当県体育協会スポーツ医・科学委員会では、競技力向上を目的にメンタルトレーニング、フィジカル・コンディショニング(健康管理)サポート、栄養管理を3本柱としたスポーツ医・科学サポートプログラムを実施している。平成22年夏に沖縄県にて開催された平成22年度全国高等学校総合体育大会(通称、美ら島沖縄総体2010)において、我々は、県理学療法士会の協力を得て強化指定校に対して健康管理サポート(以下、活動)を提供した。この活動を通して、理学療法士のスポーツ分野における職域拡大の可能性の一端について、アンケート調査から分析したので報告する。<BR><BR>【方法】美ら島沖縄総体の出場のために県競技力推進本部より強化指定を受けている学校の中で、トレーナーによる健康管理サポートを希望した6競技7校に対し活動を行った。これに参加した理学療法士50名に対し、選択及び記述式回答のアンケート調査を無記名にて行なった。<BR><BR>【説明と同意】アンケート調査の目的に今回の活動に対する自己評価と今後の活動に対する意欲を調査すること、個人を特定しないように配慮した集計結果を体育協会関連の報告書及び各種学会に報告することを明記した。この旨に同意した者が回答した。<BR><BR>【結果】回答は、50名中41名(男性20名、女性21名)、回収率80%であった。内訳は、未婚18(男:女 5:12)名、既婚21(14:7)名であった。経験年数は、2~5年24名、6~10年6名、11~20年5名、21年以上が4名であった。今回の活動の充実感を5段階評価してもらったところ、3ほぼ満足~5満足が21名、1不満~2やや不満が20名であった。総合的な技量では、3ほぼ満足~4やや満足までが7名、1不満が25名、2やや不満が8名であった。具体的な技術の満足度あるいは不満度の高いものを複数選択する項目では、満足度が高い順にストレッチ79%(回答者33名)、マッサージ55%(31名)、運動指導35%(37名)、テーピング17%(35名)であった。次いで、協力の動機について選択式複数回答を求めたところ、全回答数132件のうち最も多かったのはスポーツ外傷や障害に興味があった35件(27%)、次いで理学療法士養成校への進学時にスポーツ関連の仕事に興味があった27件(20%)、卒業時にスポーツ関連の仕事を希望した15件(11%)であった。活動時間は、診療後や休日であった。1回の練習時サポートは、1~3時間程度であったが、試合では競技によっては10時間以上の拘束を余儀なくされるものもあった。また、今回の活動は、今後の展開も視野に入れ受益者負担を原則とした(但し今回は、県の強化関連の費用から捻出された)。そのため、報償金についても質問した。報償金(時給1000円)と交通費(1回1000円)の支払いは、今回も今後もほぼ妥当な金額とされた。今後の協力は18名が可能であるとした。<BR><BR>【考察】今回の活動は、我々が全員理学療法士であるという背景もあいまって、県理学療法士会の全面的な協力を得ることができた。参加者の半数は女性であり、その1/3が既婚者であったことや経験年数が20年を越える者の参加は、当初の予想と反しており、人材確保の面から今後の活動発展への期待を抱かせる結果と思われる。しかし、活動の充実感や技量の満足度は低く、健康管理や競技特性に合わせての外傷後管理や予防の難しさを示す結果ではないかと考える。また、参加者の理学療法士としての経験が浅いことも一つの要因と考えられる。参加動機からは、理学療法士のスポーツ医学への関心の高さを示す一方で、美ら島総体を一県民としてサポートしたいという意識も働いていたものと考える。また、サポート活動時間の確保は、通常は業務に支障のない範囲で行われていたが、大会は平日であったため有給休暇などが利用されていた。365日稼働施設の勤務調整なども含め、副業としての時間の確保は、サポート期間が長期にわたるほど家庭生活への影響が懸念された。今回のスポーツ医・科学サポートプログラムは、報酬の発生により責任と価値を高めていくことを意図した。その点について県理学療法士会にも説明をした上で、限られた予算の中から報償金を支払った。これを大方が必要な経費であるとしたことは、端なるボランティアではなく、職業意識の表れとして捉えている。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】競技、レクリエーションに関わらず、スポーツの日常生活の範疇を超えた身体操作能力は外傷と背中合わせである。理学療法が予防医学であり、自らの身体を操作する能力を高めていくプロフェッショナルであるとすれば、病院内での外傷後の治療に留まらず、健康管理も含めたこの分野での職域拡大は必至である。しかし、多くの問題点もあり、整理し体系化していくことが職域拡大に繋がるものと考える。