著者
神谷 英樹 滝川 久美子 杉山 秀樹 榎崎 茂 間根山 彰一
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.756-762, 2012 (Released:2012-07-13)
参考文献数
8

目的:健康診断における心臓聴診の重要性の評価.方法:対象は2009年4月~2011年3月までに,当センターで健康診断を受診した5,492例(平均47.8±12.0歳,男2,296例,女3,196例).全例に心臓聴診を行い心雑音の有無を評価した.その結果を,病歴,胸部X線検査(XP),心電図検査(ECG)と比較検討し,精密検査結果の追跡を行った.結果:49例(0.89%)に心雑音を認め,うち,未診断例は35例(0.64%)であった.この35例中,XPは29例に施行し要精査例は2例(7%),ECGも29例に施行し要精査例は4例(14%)であった.XP,ECGのいずれか,または両方で異常を認めた例は6例(17%)であった.未診断35例中19例で精密検査結果が追跡可能で,手術適応例(重症)は3例(僧帽弁閉鎖不全症(MR)1例,大動脈弁閉鎖不全症(AR)1例,動脈管開存症1例),専門医の管理を要する例(中等症)は7例(MR 3例,AR 2例,大動脈弁狭窄症2例),軽微な異常は4例(MR 2例,AR 1例,詳細不明1例),異常なしは5例であった.重症と中等症の10例中,ECG異常はなくXP異常は心拡大1例のみで,残り9例は心雑音以外の異常を認めず,心臓聴診のみで診断可能であった.結論:心臓弁膜症や先天性心疾患診断のため,健康診断において心臓聴診は重要である.
著者
根岸 美葉 滝川 久美子 中村 文子 小栗 豊子 乾 啓洋 石井 清 小倉 加奈子
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.677-682, 2020

<p>40歳台の男性。性行為後の関節痛を主訴に当院を受診した。来院時の血液検査では炎症所見が認められ,血液培養から<i>Neisseria gonorrhoeae</i>が検出されたことから播種性淋菌感染症と診断された。血液培養からGram陰性球菌が検出された場合一般的に<i>Neisseria meningitidis</i>を疑うが,翌日の分離培養でヒツジ血液寒天培地にも良好に発育したこと,細菌性髄膜炎の迅速抗原検査キットであるPASTOREXメニンジャイティスキットによる<i>N. meningitidis</i>の免疫学的検査の結果陽性を示したことから両者の鑑別に苦慮した。<i>N. gonorrhoeae</i>と<i>N. meningitidis</i>の保存菌株を用いて,ヒツジ血液寒天培地とチョコレート寒天培地での発育性とPASTOREXメニンジャイティスキットによる<i>N. meningitidis</i>の免疫学的な反応を検証したところ,発育性状に両者の差は認められなかった。しかしながら,<i>N. gonorrhoeae</i>の6株中3株は,<i>N. meningitidis</i>のY/W135特異抗体感作ラテックスと弱い凝集が認められた。<i>N. gonorrhoeae</i>と<i>N. meningitidis</i>の鑑別には,生化学的性状や質量分析によって最終確認する必要がある。</p>