著者
石上 裕 鈴木 茂 滝沢 靖臣
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協会誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.331-336, 1995-06-20 (Released:2012-11-20)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

クルクミンは, 多年草ショウガ科ウコン (Curcuma Longa) の根茎から抽出される橙黄色の天然色素で蛍光を発し蛋白質膜に染着しやすい性質がある。著者らは, この特異な性質と構造に着目し, 両親媒性の新規な蛍光プローブを得る目的で, クルクミンと各種のアルキルアミン, 塩基性アミノ酸 (アルギニンなど) の中和塩を調製しその性質を調べた。その結果, クルクミンの有機アミン塩は, 表面張力低下作用を示すとともに, 臨界ミセル濃度 (cmc) を持っ界面活性剤となり, また有機アミン塩に誘導することにより, クルクミン水溶液の蛍光が増大し, 変褪色を抑えることを見い出した。また, これらのクルクミン誘導体の蛋白質膜に対する相互作用では, その表面の微視的環境を測定できる (環境プローブ) 可能性が示唆された。さらに, クルクミンのフェノール骨格は, 抗酸化能を持っているので, 選ばれたメチルチオメチル基を導入し, 大きな抗酸化機能を持たせることに成功した。
著者
滝沢 靖臣
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.4, no.7, pp.279-285,270, 2004

近年, ポリフェノールの生理活性が注目されその合成と酸化反応が注目されている。カテキン, トコフェロール, ケルセチンは食品成分としても知られており抗酸化活性をはじめ抗癌作用でも知られている。これらのポリフェノールについて最近の合成と酸化について概説した。ルイス酸 (TiCl<SUB>4</SUB>, BF<SUB>3</SUB>, Et<SUB>2</SUB>0) またはTMSOTfを用いてカテキンの4位と8位での選択的C-Cカップリングにより二量体, 三量体, オリゴマーの合成がなされた。脂質酸化の条件下でカテキン, ケルセチンは酸化的に二量化等の化合物に変換された。トコフェロールは紫外線照射下での酸化により三量体が得られた。水酸基を有するトコフェロールの骨格にアセトキシ基を選択的に導入させることによりカテコール型トコフェロール化合物に変換した。いままでに得られているフェノール類の特性を用いた合成法と酸化反応を基礎にしてより効率的な機能性フェノール類の化学の構築が期待される。