著者
安本 恵 相田 潤 滝波 修一 森田 康彦 本田 丘人
出版者
北海道歯学会
雑誌
北海道歯学雑誌 (ISSN:09147063)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.77-86, 2014-03

本研究は,バングラデシュにおける子供の口腔疾患の現状を把握し,社会行動的リスク要因との関連性を検証することを目的として行った. バングラデシュMohichail郷の小学校12校,計1,763人(女子899名,男子864名)に対し,口腔内診査(齲蝕経験歯数,プラーク付着状況,歯肉炎)およびアンケート調査を行った.二変量解析を行い,居住区と9つの変数;乳歯齲蝕,永久歯齲蝕,プラーク付着状況,歯肉炎,歯磨きの回数,口腔清掃器具の使用,歯磨剤の使用,家族の喫煙習慣,家族の噛みタバコ習慣との関係を分析した.有意性の検定にはχ2検定を用いた.ロジスティック回帰分析には,従属変数として,永久歯齲蝕,歯肉炎,プラーク付着状況を用い,独立変数として8つの変数;年齢,性別,居住区,口腔清掃法,歯磨きの回数,プラーク付着状況,家族の喫煙習慣,家族の噛みタバコ習慣を用いた.データ分析にはSPSS 11.7Jプログラムを用いた. 二変量解析により,居住区の違いにより口腔疾患の有病率および口腔健康行動に有意差が認められた.ロジスティック回帰分析により,従属変数と関連が認められた独立変数は,永久歯齲蝕;プラークが多い(OR=2.81)居住区が僻地(0.76),年齢が大きい(1.09),歯肉炎;プラークが多い(41.0),家族の喫煙習慣がある(1.44),家族の噛みタバコ習慣がある(1.41),年齢が大きい(1.10),プラーク付着状況;従来型の口腔清掃法(1.63),家族に喫煙習慣がある(1.29),女性(0.71),年齢が大きい(0.92)であった. 本研究の結果から,バングラデシュの農村部における口腔疾患の現状および社会行動的要因が明らかになるとともに,社会経済状況や医療,教育水準などがほぼ均一な典型的農村社会の内部において,地理的要因が口腔疾患の有病率と口腔健康行動に影響を与えていることが新たにわかった.
著者
澤尻 昌彦 野村 雄二 谷本 啓二 滝波 修一
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

骨浸潤性腫瘍に対する放射線治療において照射後の骨の機能と形態の保存を目的としてメダカ(Oryzias)咽頭歯骨部を用いて放射線照射後の骨代謝,破骨細胞誘導の信号伝達物質を生化学的に計測してきた。骨浸潤性腫瘍においてはペリオスチンなどが高頻度に発現して骨代謝,石灰化,骨芽細胞の成熟に大きな影響を与えることが示されている。ペリオスチンの骨代謝に与える影響は明らかではないが,ガンマ線照射に比べて炭素線照射によってペリオスチンは増強され骨吸収が阻害されるだけでなく,骨芽細胞が産生される石灰化促進因子が増強される。このために骨の吸収阻害や放射線照射後の病的骨折防止に応用できる可能性が示された。
著者
澤尻 昌彦 野村 雄二 滝波 修一 谷本 啓二
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

放射線生物学や環境変異原の研究にメダカが利用され,咽頭歯骨には破骨細胞の存在するため放射線照射後の破骨細胞性骨吸収における変化の解析を試みた。放射線照射メダカの破骨細胞の活性を経時的に計測した。炭素線照射メダカでは抑制され炭素線照射によって破骨細胞の活性は低下することが示された。免疫染色によって破骨細胞誘導因子を確認すると炭素線照射メダカの咽頭歯周辺では破骨細胞誘導因子が阻害されることが示された。