著者
久保田 貴之 中島 早紀 漁田 俊子 漁田 武雄
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

中島・漁田・漁田(2015)は,再認弁別におけるビデオ文脈依存効果が手がかり負荷の増大にともなって消失することを示し,手がかり負荷の増大にともなう手がかり強度の低下をアウトシャイン原理の影響と推測した。本研究は,この推測の妥当性を検証することを目的とし,同じ手がかり負荷のもとでも,項目手がかり強度を下げることでビデオ文脈依存効果が生じるかを調べた。実験は,中島ら(2015)の手がかり負荷18条件の材料および手続きを踏襲したが,項目の提示時間のみ,中島ら(2015)の4秒/項目から1.3秒/項目に変更した。実験の結果,手がかり負荷が同じであっても,項目の提示時間が短い場合には再認弁別においてビデオ文脈依存効果が生じた。この結果は,中島ら(2015)の推測の妥当性を高めるとともに,ビデオ文脈依存再認がアウトシャイニングを支持することを意味している。
著者
久保田 貴之 平野 由紀子 漁田 俊子 漁田 武雄
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

本研究は,対連合学習における項目対とビデオ文脈の意味的関連性が記憶成績に与える影響の方向性を調べた。先行研究では,項目対とビデオ文脈の関連性が記憶成績に与える影響の方向性が明らかにされていなかった。そこで,本研究は,項目対とビデオの関連がある条件(関連あり条件),項目対とビデオの関連がない条件(関連なし条件)に,グレー背景を用いる統制条件(グレー文脈条件)を加えた。実験の結果,関連あり条件およびグレー文脈条件の平均再生率が,関連なし条件に比べて有意に高かった。また,関連あり条件とグレー条件の平均再生率に有意な差は見られなかった。これらの結果は,(a)項目対とビデオ文脈間の関連性によって記憶成績が引き上げられること,(b)1回提示では,引き上げられた成績が,統制条件を上回らないことを示唆している。
著者
久保田 貴之 張 羽 漁田 俊子 漁田 武雄
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.42-42, 2015

聴覚情報に関するこれまでの環境的文脈依存効果研究において,日常場面で発生する環境音文脈は,その対象として扱われていなかった。そこで,本研究は,環境音文脈依存効果の特性を明らかにすることを目的とし,手がかり負荷(負荷1,負荷12)を操作し,文脈依存効果の生起を調べた。実験では,まず,24項目の単語を1つずつ5秒間の環境音とともに提示し,偶発学習させた。その後,学習時に用いた環境音の半数を用いて再生テストを行った。環境音は,負荷1条件においてランダム提示,負荷12条件においてブロック提示とした。実験の結果,負荷12条件のみ,文脈依存効果が生じた。この結果は,手がかり負荷が大きい場合に環境音が文脈手がかりとなり,小さい場合に手がかりとならないことを意味する。このような結果が生じた理由としては,(a)環境音文脈の手がかりとしての弱さ,(b)グローバル文脈としての機能の喪失の2つの可能性がある。
著者
漁田 武雄 漁田 俊子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.98-98, 2008

BGMの熟知性(既知,未知)×文脈(同文脈,異文脈)の4群に,大学生96名をランダムに割り当てた。各大学生は個別に実験参加した。教示につづいて,24個の漢字2文字熟語を,4個ずつ6回に分けて,各々30秒間コンピュータ画面に提示した。大学生は4つの熟語を用いた文を作成し,口頭報告した。作文の際に,各条件に対応するBGMを流した。作文が終わるとBGMを止め,コンピュータ画面に背を向けさせた。そして連続加算課題を5分間行わせた。つづいて,作文で使用した熟語の自由再生を行わせた。その際,SC条件では作文時と同じBGM,DC条件では作文とは,同じ熟知性で異なるBGMを流した。総再生数および,各熟語群からの第1反応数のいずれにおいても,文脈の主効果のみが有意で,熟知性の主効果と交互作用は有意でなかった。以上,これまで未知楽曲でのみ報告されていたBGM文脈依存効果が,既知楽曲でも生じることを見いだした。