著者
漆原 直人 矢野 正幸
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.207-211, 2014 (Released:2015-03-13)
参考文献数
7

小児の胃食道逆流症の当科での診断手順,治療方針と外科的治療経験などについて報告した。当科では外科治療として腹腔鏡下の Toupet 法による噴門形成術を標準術式としており2000–2013年までに Toupet 噴門形成術が151例(腹腔鏡122例,開腹29例)に施行された。脳性麻痺など神経筋疾患に伴うものが121例と最も多く,食道閉鎖や横隔膜ヘルニアなどの術後10例,食道裂孔ヘルニア10例で,合併疾患のない正常児は 5 例であった。合併疾患のない 5 例は,高度食道炎と食道狭窄 4 例と反復性中耳炎・咽喉頭炎 1 例であった。最近,胃食道逆流症が難治性中耳炎,咽喉頭炎などの原因になるとの報告がみられるようになった。しかし中耳炎,咽喉頭炎など耳鼻科領域の疾患と GER の関係については,症例も少なく,また小児外科医への認知度も低いことから,今後の検討が必要と思われる。
著者
川島 章子 漆原 直人 福本 弘二 谷 守通 鈴木 孝明 松岡 尚則 福澤 宏明 長谷川 史郎
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.760-763, 2007-10-20 (Released:2017-01-01)
参考文献数
8

症例は10歳男児.自転車で走行中転倒した際ハンドルで右下腹部を強打し,同部に膨隆が認められたため当院を受診.右下腹部に手拳大の膨隆と圧痛を認め皮下に腸管を触知した.腹部CTにて遊離ガス像や臓器損傷はなく,右傍腹直筋部の皮下に小腸の脱出を認めた.臥位安静にて右下腹部の膨隆は消失するが腹圧にて再発するため,外傷性腹壁ヘルニアの診断にて全身麻酔下に手術を行った.右傍腹直筋切開で皮切を行うと,右腹直筋鞘外縁で腹壁が断裂しておりSpigel herniaと診断した.ヘルニア門は弓状線の高さから尾側へ約7cmの長さで存在し,腹腔内臓器の損傷はなく,腹壁の修復は各層で直接縫合し得た.術後2年経過し,再発は認めていない.小児の外傷性腹壁ヘルニアは稀で,検索し得た範囲内で自験例は外傷によるSpigel herniaの本邦報告例中最年少であった.