著者
澤 由貴 周本 剛大 横山 岳生 三井 一鬼 兼島 孝
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.15-19, 2020 (Released:2020-03-28)
参考文献数
16
被引用文献数
1

掻痒性皮膚炎をシクロスポリンA(CyA)で治療していた,去勢オス,8歳のスコティッシュフォールドが慢性の消化器症状を主訴に来院した。A/G比の低下,抗猫コロナウイルス(FCoV)抗体価の上昇を認めたため,免疫力低下からのFCoV持続感染を疑いCyAを休薬した。その後,掻痒の管理が困難になったためにオクラシチニブを使用したところ,消化器症状は改善して抗FCoV抗体価も低下した。しかし1年半後に腎臓に腫瘤を認めリンパ腫と診断したため使用を休止した。オクラシチニブは猫の掻痒性皮膚炎に効果を示すが,高用量投与時の免疫抑制には注意すべきだと考えられる。
著者
澤 由貴 周本 剛大 横山 岳生 三井 一鬼 兼島 孝
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.15-19, 2020
被引用文献数
1

<p>掻痒性皮膚炎をシクロスポリンA(CyA)で治療していた,去勢オス,8歳のスコティッシュフォールドが慢性の消化器症状を主訴に来院した。A/G比の低下,抗猫コロナウイルス(FCoV)抗体価の上昇を認めたため,免疫力低下からのFCoV持続感染を疑いCyAを休薬した。その後,掻痒の管理が困難になったためにオクラシチニブを使用したところ,消化器症状は改善して抗FCoV抗体価も低下した。しかし1年半後に腎臓に腫瘤を認めリンパ腫と診断したため使用を休止した。オクラシチニブは猫の掻痒性皮膚炎に効果を示すが,高用量投与時の免疫抑制には注意すべきだと考えられる。</p>
著者
平澤 由貴 倉田 昌明 中島 実千代 坂本 憲吾 小田部 耕二 佐藤 伸一 野村 護
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.38, pp.20157, 2011

【目的】一般毒性試験における血液凝固系検査では,血小板数,PT,APTT及びフィブリノーゲン(Fbg)がルーチンに測定されるが,これらの項目だけでは血小板機能や線溶系の異常は検出できない.薬物の血液凝固系への統合的な評価には,これらの測定を補足する必要がある.今回,ヒトに類似する実験動物であるカニクイザルについて,血小板機能検査である血小板凝集能,また血管異常も含め凝固異常を総合的に評価できる出血時間,FDPについて測定したので報告する.また,ルーチン項目に関し,産地間差(フィリピン,中国,ベトナム,インドネシア)も含め基礎的に検討した.【方法】(1)出血時間:市販の注射針を一定の深さに穿刺できるように加工して,穿刺器具とした.無麻酔下で尾背部を穿刺部位とした.湧出血を一定間隔で濾紙に吸い取り,吸着血痕が1mm以下となった時間をエンドポイントの出血時間とした.(2)血小板凝集能:無麻酔下に大腿静脈からクエン酸加採血し,遠心分離(200×g)して多血小板血漿(PRP)を分取し,さらに遠心分離(2000×g)し乏血小板血漿(PPP)を分取した.PRPの血小板数が約35×10<SUP>4</SUP>/μLになるようにPPPで希釈調製した.凝集誘発剤はADP 5,20 μmol/L及びコラーゲン3 μg/mL(いずれも最終濃度)を用い,光透過法により凝集率を測定した.(3)その他のルーチン項目(血小板数,PT,APTT,Fbg)は自動分析装置,FDPは用手法にて測定した.【結果】(1)出血時間:出血時間は1~3.5分であった.2回の繰返し穿刺でも出血時間に差はなかった.今回の方法では,穿刺傷は小さく出血量も限られており,生体に対する侵襲性は小さいと考えられた.(2)血小板凝集能:最大凝集率はADP 5 μmol/Lで約63%,ADP 20 μmol/Lで約75%,コラーゲン3 μg/mLで約75%あった.また,ADP 20 μmol/Lで誘発した凝集の日内と日差変動に大きな変動はなかった.(3)血小板数,PT及びAPTTに産地による大きな違いはみられなかった.【結論】ルーチンの血液凝固系検査項目に加えて,血小板凝集能(ADP,コラーゲン凝集)及び出血時間について基礎的なデータを得ることができた.これらの検査は侵襲性が小さく,さらに線溶系検査を組み合わせることで,一般毒性試験でより詳細かつ統合的な血液凝固異常の評価が可能である.