著者
内田 知宏 川村 知慧子 三船 奈緒子 濱家 由美子 松本 和紀 安保 英勇 上埜 高志
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.143-154, 2012-03-30 (Released:2012-05-22)
参考文献数
34
被引用文献数
7 8

本研究は,自己と他者に対するスキーマを測定するために作成された日本版Brief Core Schema Scale(JBCSS)の信頼性,妥当性について検討をした。あわせて本研究では,自覚的な抑うつとスキーマとの関連について検討した。JBCSSの因子構造を確認するための確証的因子分析からは,「自己ポジティブ(PS)」,「自己ネガティブ(NS)」,「他者ポジティブ(PO)」,「他者ネガティブ(NO)」の4因子構造が確認された。さらに,クラスター分析によってこれら4因子を組み合わせたスキーマパターンの類型化を試みたところ,4つのクラスターが抽出された。分散分析の結果,自己および他者の両方に対してネガティブなスキーマをもつ群は,他の群と比べてもっとも抑うつ得点が高かった。こうした結果から,JBCSSで測定される自己と他者に対するスキーマを組み合わせて検討することで,症状に関するより詳細な情報が得られることが示唆された。
著者
濱家 由美子 小原 千佳 冨本 和歩 松本 和紀
出版者
日本精神保健・予防学会
雑誌
予防精神医学 (ISSN:24334499)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.31-42, 2018 (Released:2020-12-01)
参考文献数
26
被引用文献数
1

精神病とトラウマの関連性は広く知られており、初回エピソード精神病 (First Episode Psychosis: FEP) やAt-Risk Mental State (ARMS) でも子ども時代の逆境体験を含むさまざまなトラウマを経験する割合は高い。トラウマの問題を心理社会的治療の1つに含めることが理想的だが、実際にはトラウマの問題を同定し、適切な対処や治療に結びつける作業は難しいことが多い。トラウマの問題は精神病症状の背後に隠れてしまったり、トラウマに伴う回避や認知の歪みの影響で適切に把握されにくく、トラウマを扱うことへの苦手意識や治療者の自信のなさなどにもよって、トラウマが早期介入の治療標的として選択される機会は少ない。 一方、近年、精神病に併存する心的外傷後ストレス障害 (Posttraumatic Stress Disorder: PTSD) に対してもトラウマに焦点化した治療介入で症状が改善することが明らかにされ、早期介入の視点からもこの問題に取り組んでいく重要性が認識されるようになっている。トラウマの問題を抱える早期精神病の人々を見出し、この問題に早期から取り組むことで、患者の病態の理解が進み適切な支援に結びつくことが期待できる。 今後早期介入の現場においても、治療初期にトラウマ体験の有無を評価し、トラウマが確認された場合には、患者に安心感を与えながらトラウマの問題を共有し、心理教育を行っていく基本的なアプローチを普及させていくべきだろう。さらに、必要に応じてトラウマに焦点化した心理療法を提供するという治療ステップを踏めるような医療環境を整備することが求められる。