著者
内田 知宏 川村 知慧子 三船 奈緒子 濱家 由美子 松本 和紀 安保 英勇 上埜 高志
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.143-154, 2012-03-30 (Released:2012-05-22)
参考文献数
34
被引用文献数
7 8

本研究は,自己と他者に対するスキーマを測定するために作成された日本版Brief Core Schema Scale(JBCSS)の信頼性,妥当性について検討をした。あわせて本研究では,自覚的な抑うつとスキーマとの関連について検討した。JBCSSの因子構造を確認するための確証的因子分析からは,「自己ポジティブ(PS)」,「自己ネガティブ(NS)」,「他者ポジティブ(PO)」,「他者ネガティブ(NO)」の4因子構造が確認された。さらに,クラスター分析によってこれら4因子を組み合わせたスキーマパターンの類型化を試みたところ,4つのクラスターが抽出された。分散分析の結果,自己および他者の両方に対してネガティブなスキーマをもつ群は,他の群と比べてもっとも抑うつ得点が高かった。こうした結果から,JBCSSで測定される自己と他者に対するスキーマを組み合わせて検討することで,症状に関するより詳細な情報が得られることが示唆された。
著者
麦倉 俊司 高橋 昭喜 松本 和紀 隈部 俊宏 隈部 俊宏
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

磁気共鳴画像法撮影では、直径50 cm程度の非日常的かつ狭小な装置中で、30分間以上体動しないでいる必要がある。閉所恐怖症あるいは若年小児患者では安静が保てないため呼吸、脈拍モニター装着下で、鎮静薬、静脈麻酔薬で鎮静をはかって検査を施行されている。最近開発された密封ゴーグル型スクリーンとヘッドフォン装着下にDVDを視聴すれば、MRI装置の中にいるという視覚、聴覚情報を遮断でき、閉所恐怖症あるいは若年小児もMRI検査を完了する事が可能となった。本研究からDVDバーチャル・リアリティーによって、薬物などによる鎮静が不要な「患者にやさしいMRI検査」となりうることが検証された。
著者
濱家 由美子 小原 千佳 冨本 和歩 松本 和紀
出版者
日本精神保健・予防学会
雑誌
予防精神医学 (ISSN:24334499)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.31-42, 2018 (Released:2020-12-01)
参考文献数
26
被引用文献数
1

精神病とトラウマの関連性は広く知られており、初回エピソード精神病 (First Episode Psychosis: FEP) やAt-Risk Mental State (ARMS) でも子ども時代の逆境体験を含むさまざまなトラウマを経験する割合は高い。トラウマの問題を心理社会的治療の1つに含めることが理想的だが、実際にはトラウマの問題を同定し、適切な対処や治療に結びつける作業は難しいことが多い。トラウマの問題は精神病症状の背後に隠れてしまったり、トラウマに伴う回避や認知の歪みの影響で適切に把握されにくく、トラウマを扱うことへの苦手意識や治療者の自信のなさなどにもよって、トラウマが早期介入の治療標的として選択される機会は少ない。 一方、近年、精神病に併存する心的外傷後ストレス障害 (Posttraumatic Stress Disorder: PTSD) に対してもトラウマに焦点化した治療介入で症状が改善することが明らかにされ、早期介入の視点からもこの問題に取り組んでいく重要性が認識されるようになっている。トラウマの問題を抱える早期精神病の人々を見出し、この問題に早期から取り組むことで、患者の病態の理解が進み適切な支援に結びつくことが期待できる。 今後早期介入の現場においても、治療初期にトラウマ体験の有無を評価し、トラウマが確認された場合には、患者に安心感を与えながらトラウマの問題を共有し、心理教育を行っていく基本的なアプローチを普及させていくべきだろう。さらに、必要に応じてトラウマに焦点化した心理療法を提供するという治療ステップを踏めるような医療環境を整備することが求められる。
著者
朝隈 英昭 藤島 宏之 村本 晃司 矢羽田 第二郎 牛島 孝策 松本 和紀 粟村 光男
出版者
福岡県農業総合試験場
雑誌
福岡県農業総合試験場研究報告 (ISSN:13414593)
巻号頁・発行日
no.33, pp.24-28,63, 2014-03

「甘うぃ」は,中国系キウイフルーツ「ゴールデンキング」の自然交雑実生の中から選抜した品種である。育成地(福岡県筑紫野市)における開花盛期は5月中旬,収穫適期は10月下旬であり,いずれも「へイワード」より早い。果皮色は明褐色で,果肉色は黄~黄緑色である。果形は長楕円形で,果実重は150g程度と大果である。糖度は17~18度と高く,良食味である。5℃で3ヶ月程度貯蔵できる。
著者
落合 和徳 松本 和紀 寺島 芳輝
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.365-369, 1994-10-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
9
被引用文献数
1

月経前症候群 (PMS) は月経前, 3~10日の間続く精神的あるいは身体症状で, 月経開始とともに減退ないし消失するものと定義されている。原因としては, エストロゲン・プロゲステロン失調説, βエンドルフィン上昇説, ビタミンB6欠乏説, 低血糖説, 自己免疫説などが提唱されているが, いまだ定説はない。したがって治療も多岐にわたって試みられており, 治療効果を客観的にとらえる必要がある。そこで我々は臨床症状を精神, 神経, 乳房, 水分貯留, 胃腸, 皮膚などの各症状に大別しそれぞれに0-20点を与え総計100点となるPMSスコアを作成した。治療前後で比較し, 治療前値の30%以下になったものを著効, 31~60%を有効とし桂枝茯苓丸エキス剤 (TJ-25) の効果を検討した。実証のPMS患者4名に投与したところ2名が著効, 2名が肩効であり副作用もなく, TJ-25の有効性が示された。
著者
松本 和紀
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、統合失調症(精神分裂病)の記憶機能に注目し、これが統合失調症の病態といかなる関わりがあるかを明らかにするために行った。報告者の研究により統合失調症では、記憶や言語機能を反映する事象関連電位反復効果に異常があることが見いだされているが、今回は特にこの反復効果が、統合失調症に特徴的である思考障害の基盤にある認知神経異常として現れると考え実験を行った。対象は、健常対照者10名、統合失調症患者19名で、患者はDSM-IVの基準を満たし、検査時には寛解期にあった。いずれの被検者に対しても研究について書面でのインフォームドコンセント行った。思考障害の評価にはホルツマンらの思考障害評価尺度を用いた。統合失調症患者は、この尺度に基づき思考障害群9名と非思考障害群10名に分けられた。反復効果課題施行中の事象関連電位が測定された。刺激は、かな二文字からなる単語で、標的は動物を意味する単語、非標的はそれ以外の単語を用いた。非標的の半分は初回提示の後に反復され、その半分は直後に反復される直後反復で、残り半分は平均5単語おいて反復される遅延反復であった。思考障害群では、有効な反復効果は認められず効果の大きさは刺激提示後300-500ミリ秒の平均振幅で健常群と比べ有意に減弱した。非思考障害群は部分的に反復効果を認め、効果の大きさは健常者と思考障害群との中間であった。反復効果の頭皮分布は、思考障害群では健常群や非思考障害群で認められる正中有意の分布を示さなかった。反復効果は、記憶や言語などの認知機能と関わりが深いことが知られており、特に刺激提示後400ミリ秒近辺の電位はN400成分と関わりが深いことが知られている。本研究の結果、思考障害を有する統合失調症患者では、N400の調整機構が障害されており、記憶や言語と関わる認知機能が思考障害の基盤にある可能性が指摘される。
著者
松本 和紀 進藤 克博 松岡 洋夫 松本 和紀
出版者
東北大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

本研究は脳内で行われる言語情報処理の早期の「知覚処理」から後期の「意味処理」への変換の仕組みとその相互作用を電気生理学的に解明していくために、事象関連電位を用いて早期の知覚情報処理に関わるNA電位と意味・記憶処理と関わるERP反復効果を指標に研究を行った。今年はNA電位とERP反復効果を健常者と精神分裂病者を対象に調べた。実験1:外国文字とかな文字との比較-刺激は非読外国文字、無意味かな単語、有意味かな単語の三種類。刺激は二文字からなり200m秒、2〜3秒の間隔で提示された。被験者はある意味範疇に属する単語に対してボタン押し反応をした。NA電位は非標的刺激に対するERPから単純反応課題に対するERPを差分して得られた。結果、NA電位は、三種類の刺激間で差が認められず、早期知覚処理では、意味の有無、日本語・外国語の違いなく同等に処理が行われることが分かった。健常者と分裂病者の比較では、分裂病者でNA電位の遅延が認められたが、刺激間の差はなかった。実験2:ERP反復効果とNA電位の比較-刺激は二文字からなるかな単語で、標的は動物の意味をもつ単語で非標的はそれ以外のかな単語。非標的の半分は初回に提示される単語で、残り半分は直後反復される単語と平均5単語間隔をおいて遅延反復される単語とに分けられた。単純反応課題も施行され、実験1と同様の方法でNA電位が計測された。結果、反復単語に対してCzを中心に全般性にERPが陽性方向へシフトするERP反復効果が認められた。NA電位とERP反復効果とは振幅や潜時に相関は認められなかった。一方で精神分裂病では、直後反復でのERPで反復効果の減弱が認められた。この結果、知覚の早期処理と記憶処理とでは、ある程度独立した機構が並行した処理を行っている可能性が指摘され、精神分裂病では知覚の早期処理の遅延と、記憶や意味と関連する電気生理学的活動の減弱が推定された。