著者
泊 祐子 堀 智晴 曽和 信一 早川 淳 又賀 淳
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.2_9-2_18, 1987-06-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
18

本研究は,自宅分娩時代の産婆の仕事を検討することにより,地域で果たしていた役割を明らかにすることを目的とした。 方法は兵庫県但東町にお住まいの大正末期から昭和の初めにかけて開業を始めた3人の産婆からの聴取り調査により行った。 自宅分娩時代は,産婆と産婦との付き合いは長く,産婆は産婦の家などの環境についても良く知っていたし,過去の妊娠歴などの情報も豊富に持っていた。そのため産婦への援助は情報量に対応して個別性が図れた。そして,産婦側でも産婆が自分について知ってくれているので,すぐに相談も可能であり,精神的な安定につながっていたと思われる。 妊娠・出産・育児は決して母親1人に任せることではなく,家族・地域の人達・医療関係者などが協力し合う中でなされることではないだろうか。そのためにも地域の機能の活性化が必要であろう。
著者
田中 育美 泊 祐子
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.165-170, 2018 (Released:2018-11-30)
参考文献数
8

先天性食道閉鎖症は、生下時より経口摂取することができず、根治術後も合併症や食道機能にも問題を残すため、食事摂取状況を長期的に見極めていかなければいけない。そこで、食道閉鎖症児にどのような食事に関する問題が生じているのか、それに対してどのような支援が行われているのかを文献検討で明らかにした。 食道閉鎖症児は【生下時より経口摂取経験がないことによる機能的問題】、【食物への拒否的行動】、【“食べられない” ことに付随した問題】、【長期にわたる食道の器質的問題】があることが明らかになった。これらの問題に対し【根治術前に行われていた支援】、【過敏に対する支援】、【食環境の工夫】が行われていた。 食道閉鎖症児が在宅で食事を進めていく中で、児と養育者にとって食事が苦痛にならないよう、長期的支援が必要であることが示唆された。また今後は、在宅での食道閉鎖症の食事に関する問題と支援についての検討が課題である。
著者
山﨑 晶子 濱西 誠司 泊 祐子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.261-269, 2023 (Released:2023-10-03)
参考文献数
40

目的:3歳未満の子どもを育てる父親のコペアレンティングに妊娠期から出産後に形成される父親像が及ぼす影響を明らかにする.方法:対象者は1,621人であった.先行研究よりコペアレンティングとの関連が示唆された項目と「親になる移行期の父親らしさ尺度」を独立変数,「日本語版コペアレンティング関係尺度:CRS-J」を従属変数とし,独立変数を段階的に投入した3つの重回帰モデルを作成した.結果:全てのモデルで有意な回帰性が認められた(p < .01).ただし,CRS-J得点との有意な関連は,「子どもの存在から沸き立つ思い」「父親意識の高まり」「妻への思い」の得点にのみ認められた.結論:妊娠期からの父親像の形成状況が,乳幼児期のコペアレンティングに影響を及ぼしている可能性が示された.特に,独立変数の中で最も高く影響していたのは「妻への思い」であり,妊娠中の良好な夫婦関係がコペアレンティングに影響を及ぼす重要な要因となっていることが示唆された.
著者
泊 祐子 赤羽根 章子 岡田 摩理 部谷 知佐恵 遠渡 絹代 市川 百香里 濵田 裕子 叶谷 由佳
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.4_841-4_853, 2022-10-20 (Released:2022-10-20)
参考文献数
35

目的:小児の利用者のいる訪問看護ステーション(以下,訪問看護St.)において属性と他施設・多職種との連携困難,診療報酬が算定できないサービスの実施状況の地域差を明らかにする。方法:無作為に抽出した指定小児慢性特定疾病訪問看護St.に質問紙調査を行った。結果:回収した455部を,都市部(31.4%),中間部(31.4%),郡部(36.3%)の3群で比較した。都市部と比べて,郡部では訪問距離「片道15km以上」が61.8%と多く,小児利用者数は4.8±7.0人と少なかった。医療的ケア児数には有意差がなかった。他施設・多職種連携困難は,「退院調整会議での連携に困難を感じる」が都市部より郡部が有意に多かった。また,診療報酬が算定できないサービスの実施は「受診時の訪問看護師の同席」が都市部より郡部が有意に多かった。結論:どの地域でも訪問看護St.が機能しやすい仕組づくりの必要性が確認された。
著者
部谷 知佐恵 岡田 摩理 泊 祐子 赤羽根 章子 遠渡 絹代 市川 百香里 叶谷 由佳 濵田 裕子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
pp.20211206162, (Released:2022-08-03)
参考文献数
33

目的:全国の小児の訪問看護を行う訪問看護ステーション(以下,訪問St.)において診療報酬を算定できないサービスの実態と算定の必要があると考えるサービスについて明らかにする。方法:全国の小児利用者のいる訪問St.に診療報酬を算定できないサービスの実施状況と必要性に関する質問紙調査を行い,455か所の訪問St.の記述統計および自由記述の内容分析を行った。結果:診療報酬を算定できないサービスは78.7%の訪問St.で実施されており,実施による小児のメリットは【状態が変化しやすい小児の体調悪化のリスク回避ができる】【状況の変化に合わせて小児の成長発達が促進できる】【医療的ケア児と家族の生活が安定する】【小児と家族の状況に応じた支援体制が構築できる】があった。結論:多くの訪問St.が,診療報酬の算定ができなくても小児にとってのメリットがあることでサービスを提供しており,算定の必要性を感じていた。
著者
泊 祐子 岡田 摩理 遠渡 絹代 市川 百香里 部谷 知佐恵 濵田 裕子 叶谷 由佳 赤羽根 章子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
pp.20210123121, (Released:2021-07-09)
参考文献数
23

目的:医療的ケアのある重症児を看ている小児専門訪問看護ステーションの専門的役割と機能を明らかにすることである。今後,小児の訪問を新たに始める場合の準備の目安や,重症児と家族をケアする看護師の指針となると考えられる。方法:小児を専門としている訪問看護ステーション5か所の看護管理者5人にインタビューを行い,質的に分析を行った。結果:小児専門訪問看護ステーションは,【重症児の特徴をふまえた高度なケアの実施】と【家族全体の生活を支える援助】から成る『重症児と家族を支える小児専門訪問看護の役割』をもち,その土台には『小児専門としての役割を果たすための訪問看護ステーションの機能』として【小児在宅のプロの育成】と【家族のニーズに応える体制づくり】があった。結論:小児専門訪問看護の教育的機能と相談機能を推進することは,小児の訪問看護の拡大と質の向上につながると考えられる。
著者
竹村 淳子 津島 ひろ江 泊 祐子
出版者
日本小児保健協会
雑誌
小児保健研究 = The journal of child health (ISSN:00374113)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.72-80, 2014-01

成人移行期に二次障害を発症した重症心身障害児の親が治療選択過程で発揮するレジリエンスの様相を明らかにするため, M-GTA の手法を用いて質的に分析した。その結果,親は《二次障害の予備知識のえ蓄え》を土台に,《二次障害出現の実感》をしていた。症状が出現すると《治療の価値と機能の喪失の聞で逡巡》しつつ, 《体調回復への努力》をしたが,わが子の体調悪化をみて《タイムリミットの見極め》をしていた。親は苦悩を断ち切り,二次障害の治療は, 《わが子が生きるための治療と判断》する。そして,〈この先も続く体調変化を受け止める覚悟〉をしながら.,《わが子の体調変化に向き合う覚悟》を高めてゆく。