著者
瀧本 知加
出版者
東海大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本年度は、当初予定していた「専門学校化」言説に関する資料収集を一通り終わらせたうえで、専門職大学に関する検討を通して、大衆化した大学と専門学校化の関係性を検証する作業を行なった。専門職大学に関しては、本科研の助成期間内である平成28年度に提出された中教審答申「人の能力と可能性を開花させ、全員参加による課題解決社会を実現するための教育の多様化と質保証の在り方について」の中で、新たな大学として、制度化が提起され、学校教育法が改正されることとなった。専門職大学は既存の専門学校の教育を大学に格上げする形で設計された大学であり、その制度化の議論においては、大学における職業教育と専門学校における職業教育の関係について詳細な議論が行われている。この議論は本科研の課題ともかかわる重要なものであるため当初の作業に加えて、これら専門職大学をめぐる議論の検討を試みることとなった。本年度はそれらの作業をまとめた論文を執筆することができた。専門職大学をめぐる議論からは、大衆的な大学に求められることとなっている職業教育機関としての役割が、実際には多くの大学の中に様々な形で取り込まれており、専門学校との境界線がすでに曖昧となっていることが明らかとなっている。専門職大学は専門学校が大学化したものとして整理できるものであるが、その制度設計は「大学との差異化」を目指しており、本科研が解明を目指す「大学とは何か」という問いの解明の手がかりとなるものである。以上のように、当初の研究予定に加える形で、専門職代が区の検討を行なっているところであるが、補充的な情報を得ることができており、本科研の最終段階である「教育機関としての専門学校と大学の関係の再定位」に向けた資料の収集と検討は順調に進んでいるといえる。