著者
竹末 芳生 横山 隆 児玉 節 藤本 三喜夫 瀬分 均 村上 義昭 今村 祐司
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.137-142, 1989-02-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
8

院内感染において, メチシリン耐性S.aureus (MRSA) は重要な位置を占めている。そこで, 当科において1983年より1988年4月までに臨床より分離された214株ならびに手術場の浮遊, 落下, 付着細菌62株のS.aureusを対象とし, コアグラーゼ型別分類を中心にMRSAの検討を行なったので報告する。病棟分離株の検討では, メチシリン高度耐性株 (MIC>100μg/ml) は1983年には認められなかったが, その後急増し, 1987年にはMRSA (MIC≧12.5μg/ml) の約60%を占めていた。しかし医療従事者がMRSAが流行していることを認識し, 病棟での消毒をクロールヘキシジン・アルコール溶液に変えるなど院内感染対策を行なったところ, 1988年にはメチシリン高度耐性株並びにMRSAは激減した。コアグラーゼ型の検討ではMRSAは1984年まではコアグラーゼIV型が主であったが, 1986年以降II型の耐性株がほとんどを占めるようになった。このコアグラーゼII型MRSAの特徴は, メチシリンやその他のβ-ラクタム剤に対し高度耐性化すること, ペニシリナーゼを高度に産生する株が少ないこと, MINOやピリドンカルボン酸系薬剤に感受性を示すこと, また最近GM感受性, AMK耐性株が流行していることであった。手術場においては, 全株MSSAであり, またコアグラーゼ型による検討ではVII型が手術場における流行株と推察され, 当科におけるII型MRSAの交叉感染の場は病棟であると考えられた。