- 著者
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大毛 宏喜
竹末 芳生
横山 隆
- 出版者
- 日本環境感染学会
- 雑誌
- 環境感染 (ISSN:09183337)
- 巻号頁・発行日
- vol.17, no.4, pp.320-324, 2002-11-26
- 参考文献数
- 23
- 被引用文献数
-
6
術後感染対策として閉鎖式ドレーンの有用性と問題点について検討を行った. 当科で開放式ドレーンをルーチンに用い, 1週間前後留置していた1992年と, 原則として閉鎖式ドレーンを用い, 排液量が少なければ48時間で抜去するとの基本方針に沿った2000年とを比較して, ドレーンの使用状況, ドレーン感染およびcolonizationの頻度, さらに分離菌を検討した. 1992年は開腹手術症例148例全例に開放式ドレーンを挿入していたのに対し, 2000年には118例中37例 (31.4%) でドレーンを使用せず, 使用した症例でも多くは閉鎖式で, 開放式ドレーンを使用したのは全体の5.1%にすぎなかった. その結果, 1992年はドレーン感染 (4.7%), colonization (22.3%) を合わせて27.0%認めたが, 2000年は合わせて14.8%と有意に減少した (p<0.05). 特に閉鎖式ではcolonizationを11.1%に認めたのみで感染例はなかった. 分離菌も外因性感染であるMRSAは7.4%から1.7%, コアグラーゼ陰性ブドウ球菌は12.2%から1.7%といずれも有意 (p<0.05) に減少した. ドレーン自体の感染減少に加え, 閉鎖式であるためにガーゼ交換が不要となり, 標準予防策を励行する意味からも, 院内感染対策として有用であったと考えられた. 留置期間は, 1992年に開放式を9.6±2.7日留置していたのに対し, 2000年は閉鎖式では4.2±1.5日, 開放式でも4.3±3.1日と短縮していた. 膵手術などでは比較的長期間ドレナージが必要であり, 半閉鎖式ドレーンで対応した. またドレーンの早期抜去により縫合不全の際の対処が懸念されるが, 1998年1月から2001年12月までの4年間に3例の縫合不全に伴う骨盤内膿瘍を経験し, いずれもCTガイド下ドレナージにより, 再手術や人工肛門造設を要することなく治療可能であった. 閉鎖式ドレーンは感染対策として有効であり, 今後は我が国でも, 閉鎖式ドレーンの利点を生かした使用が望まれる.