著者
片山 建二 由井 宏治 澤田 嗣郎
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.672-676, 2001-06-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
29

光熱変換分光法の最近のトピックスについて紹介する。近年,本分野では光吸収後の励起電子・熱・弾性波の緩和現象を高時間分解能で計測し,得られる物理・化学的構報をさまざまな物性測定に利用しようという研究が急速に進展してきた.例えば,本法による固体表面物性計測を,ナノ薄膜や多層膜の熱・弾性物性や膜厚測定に応用したり,高速時間分解顕微光熱変換測定により,励起キャリア・熱拡散・表面弾性波の挙動を直接二次元画像表示することなどが行われている.また,光励起によって熱や音が発生する素過程そのものを明らかにしようという,古そうで新しい研究も行われている.
著者
二又 政之 松田 直樹 清水 敏美 澤田 嗣朗 片山 建二
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1.表面増強ラマン散乱(SERS)を利用した単一分子分析法の確立:1)銀ナノ粒子接合部に1個の吸着分子が存在するとき、巨大な増強度が得られることを、ラマンスペクトルと弾性散乱スペクトルの時間相関及び3次元FDTD法により、明らかにした。2)DNA塩基の内アデニン、グアニンなどのプリン環と銀表面との電子移動相互作用が巨大な増強を与えることを見出した。3)巨大SERSと同時に観測される発光スペクトルが、吸着種の蛍光とともに、金属表面の励起電子が吸着種により非弾性散乱されることによることを初めて見出した。4)脂質ナノチューブに最適サイズを有する金ナノ粒子を導入し、その表面プラズモンを励起することで、カルボニル基のピーク波数のシフトや、糖分子のスペクトルパタンなど、バルク状態とは全く異なる脂質ナノチューブのラマンスペクトル測定に成功した。この結果は、この方法により、金属ナノ粒子近傍のスペクトルのみが大きく増強されて観測されることを示しており、今後の詳細な解析により有用な結果が与えられるものと考えられる。2.ATR-SNOM-Raman分光法:1)表面プラズモンの干渉及び多重散乱電場が、ラマンイメージ測定に影響しないことを初めて見出した。3.近接場赤外分光法:1)FT-IR分光器をベースにして、全反射型配置で、金コートプローブを配置したAFMとの複合により、ポリマー及びチオール系試料について、チップ増強赤外吸収測定に成功した。また、試料下地に金属ナノ粒子を配置することで、より効率的に増強が行えることを初めて見出した。4.スラブ光導波路(SOWG)分光法の確立:電気化学的に制御可能なSOWG分光法の高感度化を進め、ITO電極上に単分子層以下の量で吸着したヘプチルビオロゲンカチオンラジカルの吸着種の電位依存性とチトクロムcの電位変化に対する応答を明らかにした。