著者
実重 真吾 片山 茂裕
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.34, no.7, pp.548-554, 1997-07-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

インスリン及びIGF-1の培養血管平滑筋細胞 (以下VSMCと略) に対する増殖効果及び細胞外基質のコラーゲン合成能とI型コラーゲンα1鎖の遺伝子発現に及ぼす影響を検討した. ブタの腹部大動脈より採取したVSMCに, インスリンを0, 16, 160nM, IGF-1を0, 1.31, 13.1nMの濃度で添加し, 細胞数・DNA合成能 ([3H]-thymidine) を, またインスリン0, 1,600, 16,000nMを加えて, 蛋白合成能 ([3H]-proline)・総コラーゲン蛋白合成能を調べた結果, 細胞数は1.4倍 (IGF-1) ~1.5倍 (インスリン) に, DNA合成能は3倍 (IGF-1) ~3.8倍 (インスリン) に, 蛋白合成能は1.8倍 (IGF-1) ~3倍 (インスリン) に濃度依存性に有意に増加した. 総コラーゲン蛋白合成は, インスリン16,000nM, IGF-113.1nMの濃度で, それぞれ26.5倍, 2.3倍に増加した. I型コラーゲンα1鎖mRNAは, IGF-1では濃度依存性に増大し, インスリンではIGF-1と比較して弱いが, 増大傾向を認めた. 以上, インスリンやIGF-1が, VSMCの増殖の情報伝達及び細胞外マトリックスの合成に密接に関連している可能性が示唆された.