- 著者
-
片岡 喜代子
- 出版者
- 日本言語学会
- 雑誌
- 言語研究 (ISSN:00243914)
- 巻号頁・発行日
- vol.131, pp.77-113, 2007 (Released:2022-03-08)
- 参考文献数
- 53
日本語で文否定要素(Neg)を必要とする不定語+モ「だれも/なにも」は,英語のNPIのany-と同様,否定とともに全称否定解釈を導くので,any-の対応物としてLFでのNegによるc-統御がその必要条件と見なされてきた.また最近のWatanabe(2004)において,イタリア語等の否定環境に現れる不定語と同様にそれ自体否定力を持った要素であるという分析も提示された.本研究では,まず,同じくNegを要求する「シカ」句とそれら不定語+モの相互作用の現象に基づき,不定語+モは,LFでNegにc-統御されてはならないこと,また,それ自体否定力を持たないことを示し,それら先行の分析が不適切であることを示す.その上で,「シカ」句との相互作用の現象に基づいて,不定語+モを含む名詞句全体が全称量化を導く表現であり,それ故に,全称否定を導くためにはLFでNegをc-統御しなければならないことを主張する.