著者
柏木 千恵子 片岡 孝史 新谷 修平 藤田 直也
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ba0291, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 急性期脳卒中患者において,発症直後より転帰を予測することは,今後の方針決定やリハビリテーションの計画,在院日数の短縮に有用である。National Institute of Health Stroke Scale(以下,NIHSS)は,脳卒中重症度評価スケールとして広く使用されているが,NIHSS scoreと転帰との関連を検討した研究はほとんどない。前回,我々は理学療法開始初期のNIHSSを用いて当院から回復期病院経由後の転帰を予測し,NIHSS score12点が転帰に妥当なカットオフ値と判断した。そこで今回,当院からの転帰に着目し,理学療法開始初期のNIHSSを用いて転帰に妥当なNIHSS scoreのカットオフ値を求め,予後予測の一助とすることを目的とする。【方法】 対象は2009年4月から2011年3月までに脳血管障害(くも膜下出血を除く)により当院に入院し,理学療法を実施した552例から後述する除外対象を除いた536例(男性326例,女性210例,平均年齢72.5±11.8歳)とした。対象者は,入院前の所在が自宅であること,初発の脳血管障害であること,理学療法開始初期にNIHSSの評価がなされていること,パーキンソン病などの神経変性疾患を有さないものとした。除外対象は病状が悪化したもの,カルテでの追跡調査が不可能なものとした。方法は,対象のうち当院から自宅退院した群と当院から自宅以外に転院もしくは退院(回復期病院,一般病院,施設)した群の2群に分類し,カルテより後方視的に調査した。調査項目は年齢,性別,在院日数,発症から理学療法開始までの日数,理学療法開始時のNIHSS scoreとした。2群間の統計処理は,NIHSS scoreのカットオフ値の算出にROC曲線を用いた。また,有意水準を5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 当院では,倫理的配慮として入院時に御本人,そのご家族に個人情報保護に関する説明をしており,個人が特定されないことを条件として院内外へ公表することに同意を得ている。【結果】 理学療法開始初期のNIHSS scoreを転帰によって2つに分ける場合,ROC曲線の曲線下面積は0.94となり高度の予測値を示した。また当院より転帰する場合の妥当なカットオフ値はNIHSS score 6点となり,感度は92%,特異度は80%であった。 【考察】 本研究結果より,脳卒中患者に対してNIHSSを用いた早期からの転帰の予測が可能であることが分かった。NIHSSはt-PAの適応基準でもあり,Dr.やNs.も周知している場合が多いため,今回のカットオフ値の算出は他職種間での転帰の予測に関する評価ツールとして使用されることが期待できる。前回の研究結果では,当院から回復期病院を経由した後の転帰(自宅と一般病院,施設)のカットオフ値をNIHSS score12点と判断した。各転帰の観点からこれらの結果を反映するとNIHSS scoreを後述する3群に分類することができる。1)NIHSS score 5点以下;当院から自宅へ退院2)NIHSS score 6~11点;当院から回復期病院を経由し,その後自宅退院3)NIHSS score 12点以上;当院から回復期病院を経由するが一般病院へ転院もしくは施設へ退院。上記分類は早期からの転帰の予測としてのツール以外に,当院の脳卒中患者の予測に関するアウトカムとしての指標を設定することができると考える。これらのカットオフ値を経時的にモニタリングしていくことが病院の質の向上につながり,他病院との比較が可能となる。本研究では転帰の予測の判断をNIHSSのみで行っており,NIHSS score 5点以下の逸脱例は40件であった。今後は,転帰の予測の精度をあげるためにもNIHSSに加えて逸脱例の転帰に関する因子の検討も行っていく必要があると考える。【理学療法学研究としての意義】 脳卒中急性期病院での早期からの転帰の予測は重要である。NIHSS scoreのカットオフ値の算出により転帰の予測の他に,当院におけるアウトカムの検討が可能となり,臨床指標としても捉えることができた。そのためNIHSSが早期からの転帰の予測の可能性を示した本研究は有意義であったと考える。
著者
國安 勝司 荒尾 賢 片岡 孝史 栗山 努 日傳 宗平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【目的】日本に理学療法士が誕生し50年を迎え,理学療法士の社会的認知度も上がっていると思われる。しかし,その具体的な業務については隣接職種と混同されているのも事実である。岡山県理学療法士会(以降,本会)は県民への理学療法士(以降,PT)の啓発活動を社会局が中心となり企画しているが,効果的な方法の一つとしてマスメディアを活用した経験を報告する。【活動報告】協会が理学療法週間として啓発活動を開始した平成7年の理学療法週間モデル事業から本会は参加しており,さまざまなイベントや企画を行ってきた。PTを目指す学生に出張講義の企画や,公共施設で一般向けのPTの紹介イベントを開催した。しかし,出張講義依頼やイベントへの参加者は期待したほどにはならず,より効果的な方法を模索していた。そこに広告会社から地元紙(発行部数42万5800部,県内のシェア約60%)への記事広告掲載の提案がされた。予算的にも支出可能な範囲であり,平成16年以降,7月16日朝刊に「明日は理学療法の日」として見開き半ページのPT紹介記事と,協賛広告を掲載している。内容は会長の挨拶文,PTの業務説明,トピックス,本会主催イベント案内,養成校情報である。【考察】掲載後の反響は大きく,問い合わせも多い。今年度は介護予防についての内容を掲載したところ「PTは介護予防もされるのですね」などすぐに反応があった。様々なイベント・会議等でパンフレット配布や業務の説明をしてきたが,その効果を実感することは少なかった。その点,県内をほぼ網羅している地元紙を利用することは,費用対効果の面からも非常に効果的であると感じている。【結論】職能団体として多くの県民にアピールすることは重要であり,今後は地元紙に加え4大紙にも掲載ができるよう掲載方法を検討したい。さらに今年度は11月11日の介護の日に協賛し,地元放送局のラジオ番組への出演と20回のスポットCMを放送することを決定した。