著者
片岡 孝夫
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.87-100, 2009-03-12

サーチ論的な貨幣的交換のモデルを用いて貨幣供給量と定常均衡の関係,ならびに定常均衡の動学的分析を行う。 貨幣供給量が最適な定常均衡に対応する水準にあるとき,連続的な定常均衡が存在し,それらの中のどれが実現するかは初期条件に依存する。貨幣供給量が上の水準を上回るときには,比較的好ましい鞍点安定的定な常均衡が存在するが,その水準に僅かでも及ばない場合には,貨幣は機能不全を起こし,経済は常に自給自足経済と同程度の劣悪な状態に収束してしまう。このような状況下で,政府が増発した貨幣で実物財を購入するならば,その財が廃棄されたとしても,パレートの意味で改善がなされる場合があることが示される。
著者
片岡 孝夫
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

細胞傷害性T細胞(CTL)はパーフォリン依存性経路およびFasリガンド依存性経路によってウイルス感染細胞や腫瘍細胞を殺傷する。エポキシシクロヘキセノン誘導体ECHやRKTS-33は、カスパーゼ8の活性化を阻害し、Fas依存性のアポトーシスを特異的に阻害する。ECHやRKTS-33は、CTLによるFasリガンドの発現誘導に対する抑制作用が弱かったが、パーフォリンを発現していないCD4^+CTLやコンカナマイシンAで処理したCD8^+CTLによるFasリガンド依存性の細胞傷害経路を強く抑制した。しかしながら、ECHやRKTS-33はCD8^+CTLによるパーフォリン依存性の細胞傷害経路を抑制しなかった。これらの結果から、ECHやRKTS-33は、CTLの細胞傷害機構において、Fasリガンド依存性経路の特異的な阻害剤であることが明らかとなった。タンパク質合成阻害剤アセトキシシクロヘキシミド(E-73)は、IL-1による転写因子NF-κBの活性化を抑制せず、TNF-αによるNF-κBの活性化を選択的に抑制する。ヒト肺がん腫A549細胞をE-73で処理すると、TNFレセプター1のA549細胞における発現量が減少し、低分子量化したTNFレセプター1が培地中に増加することが観察された。メタロプロテアーゼ阻害剤GM6001やTACE(TNF-α converting enzyme)阻害剤TAPI-2で前処理すると、E-73によるTNFレセプター1の培地中への蓄積が抑制された。以上の結果から、E-73はTACEによるTNFレセプター1のシエディングを誘導することによって細胞表面のTNFレセプター1の発現量を減少させ、TNF-αに対するA549細胞の反応性を低下させることが明らかとなった。