著者
芳竹 宏幸 山口 智之 高見 友也 畑野 光太郎 片岡 直己 牧本 伸一郎
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.812-816, 2021-12-28 (Released:2021-12-28)
参考文献数
10

膀胱破裂は術前診断に至ることは比較的困難であり,試験開腹を行った際に診断されることが多い。膀胱破裂により腹腔内に尿が漏出すると,血中BUN,Cr濃度が上昇するpseudo renal failureを認めることがある。今回われわれは,術前診断に至った1例を含む膀胱破裂を3例経験したので報告する。症例1:76歳,男性。突然の下腹部痛を主訴に救急搬送された。膀胱造影で腹腔内への造影剤漏出がみられ,膀胱破裂の診断で開腹手術となった。 症例2:66歳,女性。下腹部痛を主訴に来院され,汎発性腹膜炎の診断で試験開腹術となり,術中に膀胱破裂の診断に至った。症例3:88歳,女性。数日前からの腹痛が突然増悪したため受診し,CT検査で腹腔内遊離ガスを認め,消化管穿孔疑いで試験開腹術を施行し,術中に膀胱破裂の診断に至った。いずれの症例でもBUN,Crの上昇を認め,汎発性腹膜炎の症例でBUN,Crの上昇を認めた際にはpseudo renal failureを考慮し,膀胱破裂の検索を行う必要があると考える。
著者
山口 智之 片岡 直己 冨田 雅史 坂本 一喜 新保 雅也 牧本 伸一郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.73, no.7, pp.1722-1726, 2012 (Released:2013-01-25)
参考文献数
11

症例は55歳,女性.慢性関節リウマチに対しインフリキシマブの投与を受けていた.全身倦怠感と採血上の貧血の進行を認め,下部消化管内視鏡検査を受けたところ,回腸末端の潰瘍性病変を認め,生検の結果腸結核の診断となった.胸部CT検査では全肺野に小粒状陰影を認め粟粒結核と診断され,喀痰TB-PCR陽性,塗末で抗酸菌陽性であり,腸結核,粟粒結核の診断となり結核専門病院へ紹介入院となった.このころから腹痛と頻回の下痢を認めていた.結核専門病院を退院後,腹痛が増強したため受診し,CT検査上回盲部の狭窄像と回腸直腸瘻を認めたため外科紹介となった.回盲部切除術と直腸瘻孔部の縫合閉鎖を行った.術後は正常便となり特に合併症なく17日目に退院となった.インフリキシマブが結核発症の危険因子であるのは周知の事実であるが,腸瘻を形成する症例は極めて稀であるので文献的考察を加え報告する.