著者
北尾 邦伸 安井 鈞 長山 泰秀 稲田 充男 新村 義昭 片桐 成夫 井口 隆史 瀧本 義彦 北尾 邦伸
出版者
島根大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

輪島・鳳至地域の現地においてアテ・複層林の森林を対象にして種々の計測を行った。また、その複層林を経営する担い手の経営構造やアテ材の生産・流通構造についても現地調査を行った。さらに、固定試験地の林分構造に関する過去20年間のデータの解析に努めた。これらのことから、次のような新たな知見や林分構造に対する理論モデルを導出した。1.複層林の直径分布および樹高分布は各齢階ごとのそれぞれの分布が結合したものと仮定して、頻度分布モデルとして混合対数正規分布g(w)を誘導し、計測データをあてはめた。結果はよく適合した。2.択伐林内の樹木の伐採確率分布の誘導を行い、混合マルコフ過程を応用した択伐林直径分布モデルを誘出できた。3.よく施業されたアテ択伐林分では直径や樹高の度数分布は逆J字型を示す。施業がよくない光環境のもとでは、上層木のみが成長して択伐林型が崩れる。これら林分構造・成長・光環境の関係を定量的に明らかにした。4.2つのアテ択伐林分における林分各部分の栄養塩類の集積量、およびそれに影響をおよぼす土壌の化学性を下層土壌を含めて明らかにした。これは、森林土壌の肥沃度および物質集積量の基礎的データとなる。5.暴風害の被害形態は幹折れ、根返りが多く、直径・樹高の全てのクラスに及んだ。折損被害は形状比が60-80のものに多く、冠雪害の場合よりも小で、折損高は2-3m、折損比高0.1-0.3と冠雪害に比較して低かった。6.光環境を整える枝打ち作業が労働力不足のために困難となり、この点を基軸にして伝統的なアテ択伐の経営構造が変容を迫られている。また、外材率20%という地域材の地場需要の強い伝統的な生産・流通構造も、その規模が小さく、飛躍的に増大した戦後アテ造林の資源的成熟に伴って、大消費地とのつながりにおける産地形成を迫られている。これらの点を実証的に明らかにした。
著者
大内 謙輔 葛西 絵里香 片桐 成夫
出版者
島根大学
雑誌
島根大学生物資源科学部研究報告 (ISSN:13433644)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.17-21, 2011-09-30

We investigated the amount of stemflow and its water chemistry of Japanese red cedar trees planted in the Sambe Forest, Shimane University. Stemflow properties were related to the several tree?size parameters, i.e., DBH, tree crown projection area, tree crown surface area, tree crown volume and plant biomass. Of tree?size parameters, crown surface area showed the highest correlation with the stemflow amount. The electric conductivity (EC) and pH values of the stemflow water were also related to tree?size. EC of stemflow water increased with tree diameter. On the other hand, pH of stemflow decreased with tree diameter. The stemflow chemistry of trees with thinner diameter reflected the condition of precipitation outside forest. This is due to the difference in the water volume, which passed through the crown of cedar trees. Crown of the thinner trees collected more water than that of the thicker trees.
著者
金子 信博 土井 雅美 片桐 成夫
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.85-91, 1996-12-30
被引用文献数
3

島根県の花崗岩を母岩とする土壌に成立したアカマツ・コナラ二次林で土壌微生物バイオマス炭素量を測定した。二次林と,1994年皆伐の一般造林地,そして皆伐後火入れをした造林地の3箇所で,火入れ後8ヶ月後から14ヶ月後までの期間の微生物バイオマス炭素量の変化をくん蒸抽出法を用いて調査した。微生物バイオマス量は春,秋に比べて夏に多かった。伐採から8〜14ヶ月後には鉱質土壌のバイオマス量は二次林と違いが見られなかったが,有機物層のバイオマス量は二次林よりも低下していた。一方,火入れ造林地では有機物層がすべて失われ,火入れ後14ヶ月経過しても二次林や一般造林地よりも40%から50%程度鉱質土壌のバイオマス量が低かった。