- 著者
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片瀬 拓弥
- 出版者
- 学校法人未来学舎
- 雑誌
- 奨励研究
- 巻号頁・発行日
- 2010
1.研究目的本研究の関連研究である「判別分析による専修学校の中途退学者の早期予測方法の開発」は,線形回帰分析により中途退学者を予測し,その予測率は26.1%(n=271,申請時からの改定値)となっていた.この予測率向上を目的とし,本研究では,非線形回帰分析可能なニューラルネットによる予測方式を開発する.2.研究方法本研究は,2010年度から市販される専門学校版Q-Uを使用する予定であった.しかし,該当商品販売時期が年度後半に延期されたため,入学当初の調査時には,関連研究同様の高校版Q-Uを用いた.さらに,予測率向上を目指すため,性格検査(5因子検査)も同時期に実施した.それらの回答結果を非線形回帰分析手法であるニューラルネットワークの3層パーセプトロンモデルを用いて分析し,予測率向上を目指した.3.研究成果2010年度において新たに取得した性格検査,学力偏差及び高校版Q-Uのデータから説明変数として,29変数(性別:1変数,学力偏差:2変数,学級所属群:4変数,性格検査:5変数,学級状況:4変数,悩み:13変数)を選択した.そのデータを用いて関連研究と同様の線形回帰分析を実施した結果,予測率は14.4%(n=323)となった.つまり,単に性格検査などの説明変数を分析に増加導入しただけでは,直接の予測率向上には到らないことが判明した.そこで,このデータ群を用い,ニューラルネットによる非線形回帰分析を実施した.具体的には,3層パーセプトロンモデルを採用し,最適な中間層数を決定するため,ブートストラップ法による学習実験を数万回行なった.その結果,ニューラルネットワークが過剰学習を起こさず,最も良い予測率を示すのは,中間層のニューロン数が28個であることが判明した.また,その予測率は70.4%となり関連研究に比して大幅に向上した。さらに,中途退学防止策に関する担任の自由記述アンケートをテキストマイニング分析した結果,学級経営方針が指導型・援助型のタイプ別に退学防止の対処方法が異なることが判明した.今後の課題は,このニューラルネットワークモデルが2011年度以降の新入生に対し,実際にどれだけの的中率を持つのか検証することである.