著者
牛尾 禮子 郷間 英世
出版者
吉備国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

在宅重症心身障害児(者)の療育を行う中で、母親のストレスに注目した「療育相談モデル」の開発研究に取り組んだ。方法 : (1)全国の主な通園拠点事業施設を訪問し、療育内容について聞き取り調査を行った。(2)通園施設の母親から療育に対する満足度についてアンケート調査を行った。(3)重症心身障害児施設を有する全国の国立療養所に対して、在宅支援および養育者への支援状況などに関するアンケート調査を行った。(4)国立療養所A病院に療育外来を開設した。(5)母親支援として個別相談・グループカウンセリング・ノート交換などを試みた。成果 : アンケート調査結果ではスタッフの在宅支援に対する意識の高まりが見られるが、母親支援を重視し、実際的に機能している施設は皆無であった。また母親自身の満足度は低い。本研究者らが母親支援を重視した療育外来を行った成果として、母親が自覚した変化は、(1)精神的な安定感(明るくいきいきとしてきた・気分が軽くなった・楽しみができた・安心感がある・子どもと離れることができるようになった・子どもに余裕をもって接することができるようになった、など(2)身体的な変化(体調がよくなった)(3)福祉サービスが気軽に利用できるようになった。さらに、母親たちの協力体制の確立、自己の生き方や養育姿勢、および社会に関心を示すようになり、主体的な生き方が志向できるようになってきた。結論 : 養育者である母親の心身の安定は、子どもの養育に決定的な影響を与え、QOLを高めることになる。療育は、具体的な母親支援を機能させ、療育に包括させなければならない。
著者
郷間 英世 吉田 高徹 牛尾 禮子 池田 友美
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.199, 2017

目的 特別支援学校に看護師が配置され医療的ケアを担うようになったものの、看護師と教員の立場の違いによる連携の困難さを感じることが少なくない。そこでその問題点や課題について調査を行った。 方法 対象は近畿地方A県の「医療的ケア」を実施している特別支援学校30校の教員各3名および看護師各2名である。質問内容は「情報交換が十分かどうか」、お互いに「望むことや、理解してほしいこと」などであった。回答は、選択式質問はχ2検定を、記述内容はコード化しカテゴリーに分類した。 結果 18校(60.0%)から回答があり、教員45名看護師33名分を分析した。障害について情報交換が十分と回答したのは教師42名(93.3%)看護師16人(48.5%)、ケアの手技について情報交換が十分と回答したのは教師37名(82.2%)看護師14人(42.4%)と看護師は教員より低値で有意差(いずれもp<0.01)を認めた。記述内容では、教員は看護師に対し『十分コミュニケーションが取れている』という記述もあったが、「最大限活動に参加させたい教員の気持ちを尊重してほしい」「安全第一で守り過ぎないように」など『教育活動の理解』や「看護の立場からの考えや方向性を教えてほしい」「教育の場での医療的ケアについて共通理解をしたい」など『看護の考え方の理解や話し合いの必要性』を望む意見もみられた。看護師から教員に対しては「生育歴や内服薬など」「保護者と教員のやり取りの内容」など『ケア以外の情報の伝達や共有』、「安全への意識」「身体的な問題の基本的な理解」など『教師の医療的考えの理解不足』、「教育計画を立てるときの相談」「打ち合わせや話し合いの時間」など『コミュニケーション不足』について多くの記載が認められた。 考察 医療的ケアが必要な子どもに関わる教員と看護師の考え方の違いが認められ、お互いの立場の理解や連携のあり方についての方法の検討が必要と考えられた。