著者
郷間 英世 田中 駿 清水 里美 足立 絵美
出版者
日本発達支援学会
雑誌
発達支援学研究 (ISSN:24357626)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.99-114, 2022-03-31 (Released:2023-03-31)

今回発刊された新版K式発達検査2020の標準化資料を、1983版の標準化資料と比較し、現代の子どもの発達の様相や変化について検討した。その結果、2020年までのおよそ40年間の子どもの発達は、全体的にみると大きな変化はなかったが、いくつかの発達課題で顕著に促進した課題や遅延した課題がみられた。促進したのは「色の名称」課題で4つの色を答える検査項目では12ヵ月の変化がみられた。遅延したのは「図形模写」や「折り紙」課題であり、「正方形模写」「三角形模写」「菱形模写」では9~11ヵ月、折り紙を何回か折る検査項目である「折り紙Ⅱ」「折り紙Ⅲ」では3~6ヵ月の変化が認められた。これらの発達の変化は、社会環境や養育環境などの急激な変化に伴い、子どもの認知や運動の発達が変化してきたことが推測された。この変化をどうとらえ、どのように対応していくかは今後の課題である。
著者
大谷 多加志 清水 里美 郷間 英世 大久保 純一郎 清水 寛之
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.12-23, 2017 (Released:2019-03-20)
参考文献数
33

本研究の目的は,発達評価における絵並べ課題の有用性を検討することである。44月(3歳8ヵ月)から107月(8歳11ヵ月)の幼児および学童児349人を対象に,独自に作成した4種類の絵並べ課題を実施し,各課題の年齢区分別正答率を調べた。本研究では絵並べ課題のストーリーの内容に注目し,Baron-Cohen, Leslie, and Frith(1986)が用いた課題を参考に,4種類の絵並べ課題を作成した。課題は,ストーリーの内容によって「機械的系列」,「行動的系列」,「意図的系列」の3つのカテゴリーに分類され,最も容易な「機械的系列」の課題によって絵並べ課題の課題要求が理解可能になる年齢を調べ,次に,人の行為や意図に関する理解が必要な「行動的系列」や「意図的系列」がそれぞれ何歳頃に達成可能になるのかを調べた。本研究の結果,全ての課題において3歳から7歳までに正答率が0%から100%近くまで推移し,機械的系列は4歳半頃,行動的系列は5歳後半,意図的系列は6歳半頃に達成可能になることがわかった。また課題間には明確な難易度の差があり,絵並べ課題のストーリーの内容によって課題を解決するために必要とされる知的能力が異なることが示唆され,適切なカテゴリー設定を行うことで絵並べ課題を発達評価に利用できる可能性が示された。
著者
清水 里美 郷間 英世 船曳 康子 米澤 朋子
出版者
平安女学院大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

(1)1歳6ヵ月児健診、3歳児健診、および5歳児健診時における発達スクリーニングに適した項目と保護者向けの発達評価に関する問診項目を選定し、タブレットで反応を収集分析できるシステムを開発する(2)開発したタブレット版発達スクリーニング検査を各健診の該当年齢児に実施し、新版K式発達検査の2020年版の標準化データと比較する。また、タブレット版実施時に行動を直接観察評価し、タブレットによる取得情報と比較する。以上の分析を通じてタブレット版の有効性について検討する(3)クリニック等に協力を求め、臨床事例にタブレット版発達スクリーニング検査をおこない、適用可能性を検証する
著者
大谷 多加志 清水 里美 郷間 英世 大久保 純一郎 清水 寛之
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.142-152, 2019 (Released:2021-09-30)
参考文献数
17

じゃんけんは日常生活の中で,偶発的な結果に基づいて何らかの決定や選択を得るための一つの手段として広く用いられている。本研究は,子どもがどのような発達過程を経て,じゃんけん課題の遂行の基礎にある認知機能を獲得していくかを「三すくみ構造」の理解に関連づけて検討することを目的とした。対象者は,生後12ヵ月(1歳0ヵ月)超から84ヵ月(7歳0ヵ月)未満の幼児と児童569名であった。本研究におけるじゃんけん課題は,じゃんけんの「三すくみ構造」をもとに「手の形の理解課題」,「勝ち判断課題」,「負け判断課題」の3種類の下位課題から構成された。また,じゃんけん課題の成否と子どもの発達水準との関連を調べるために,対象者全員に『新版K式発達検査2001』が併せて実施された。本研究の結果,「手の形の理解課題」は2歳7ヵ月頃,「勝ち判断課題」は4歳9ヵ月頃,「負け判断課題」は5歳4ヵ月頃に平均的に達成されていくことが明らかとなった。また,「手の形の理解課題」,「勝ち判断課題」,「負け判断課題」の3種類のじゃんけん課題の成否および反応内容から評価したじゃんけんに関する知識や技能の獲得の段階(5段階)と『新版K式発達検査2001』の発達年齢との間で統計的に有意な相関が認められた。よって,本研究のじゃんけん課題は子どものじゃんけんの理解の段階を評価し,幼児の発達水準を査定するために有用であると考えられる。
著者
牛尾 禮子 郷間 英世
出版者
吉備国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

在宅重症心身障害児(者)の療育を行う中で、母親のストレスに注目した「療育相談モデル」の開発研究に取り組んだ。方法 : (1)全国の主な通園拠点事業施設を訪問し、療育内容について聞き取り調査を行った。(2)通園施設の母親から療育に対する満足度についてアンケート調査を行った。(3)重症心身障害児施設を有する全国の国立療養所に対して、在宅支援および養育者への支援状況などに関するアンケート調査を行った。(4)国立療養所A病院に療育外来を開設した。(5)母親支援として個別相談・グループカウンセリング・ノート交換などを試みた。成果 : アンケート調査結果ではスタッフの在宅支援に対する意識の高まりが見られるが、母親支援を重視し、実際的に機能している施設は皆無であった。また母親自身の満足度は低い。本研究者らが母親支援を重視した療育外来を行った成果として、母親が自覚した変化は、(1)精神的な安定感(明るくいきいきとしてきた・気分が軽くなった・楽しみができた・安心感がある・子どもと離れることができるようになった・子どもに余裕をもって接することができるようになった、など(2)身体的な変化(体調がよくなった)(3)福祉サービスが気軽に利用できるようになった。さらに、母親たちの協力体制の確立、自己の生き方や養育姿勢、および社会に関心を示すようになり、主体的な生き方が志向できるようになってきた。結論 : 養育者である母親の心身の安定は、子どもの養育に決定的な影響を与え、QOLを高めることになる。療育は、具体的な母親支援を機能させ、療育に包括させなければならない。
著者
田中 駿 牛山 道雄 郷間 英世 石倉 健二
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.90-97, 2023 (Released:2023-05-26)
参考文献数
12

本研究は,発達がアンバランスな幼児6名と定型発達児32名に対して,年少から年長にかけて身体模倣課題を実施し,身体模倣の獲得過程の違いを明らかにすることを目的とした。身体模倣の正中線交差なしは,アンバランスな児と定型発達児で有意な差は認められなかったが,正中線交差あり,および手指の模倣は,年中および年長で有意な差が認められた。また,身体模倣の発達については,アンバランスな児は,正中線交差なし,および正中線交差ありは,年少から年長にかけて伸びがあり,定型発達児は,年少から年中にかけて伸びがあると考えられた。本研究において,アンバランスな児の対象人数は少なかったが,アンバランスな児と定型発達児は共に年齢による発達がみられるものの,正中線交差ありや手指の複雑な模倣は,年中から差が生じ始めると考えられた。また,個別の検討により,アンバランスな児の模倣の発達には3つのパターンがあることが推測された。
著者
郷間 英世
出版者
日本小児保健協会
雑誌
小児保健研究
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.282-290, 2006-03

1980年公刊の「新版K式発達検査」と,2002年公刊の「新版K式発達検査2001」の標準化資料の項目別50%通過年齢を比較し,現代の子どもの発達的特徴を検討した。その結果,乳児期では50%通過年齢の小さくなった,すなわち20年前に比べ発達の促進している項目が62,8%,50%通過年齢の大きくなった,すなわち発達の遅延した項目が33.7%であったが,加齢とともに変化し,発達の遅延した項目は幼児期前半51.0%,幼児期後半89.7%と増加し,学齢期もこの傾向が持続してみられた。領域別にみると,言語・社会領域では幼児期前半に,認知・適応領域では幼児期後半から遅延する項目の増加が著明となった。これらの最近の子どもの発達の20年前に比べた変化は, 注目すべき,また緊急に検討,対応すべき課題と考えられた。
著者
郷間 英世 吉田 高徹 牛尾 禮子 池田 友美
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.199, 2017

目的 特別支援学校に看護師が配置され医療的ケアを担うようになったものの、看護師と教員の立場の違いによる連携の困難さを感じることが少なくない。そこでその問題点や課題について調査を行った。 方法 対象は近畿地方A県の「医療的ケア」を実施している特別支援学校30校の教員各3名および看護師各2名である。質問内容は「情報交換が十分かどうか」、お互いに「望むことや、理解してほしいこと」などであった。回答は、選択式質問はχ2検定を、記述内容はコード化しカテゴリーに分類した。 結果 18校(60.0%)から回答があり、教員45名看護師33名分を分析した。障害について情報交換が十分と回答したのは教師42名(93.3%)看護師16人(48.5%)、ケアの手技について情報交換が十分と回答したのは教師37名(82.2%)看護師14人(42.4%)と看護師は教員より低値で有意差(いずれもp<0.01)を認めた。記述内容では、教員は看護師に対し『十分コミュニケーションが取れている』という記述もあったが、「最大限活動に参加させたい教員の気持ちを尊重してほしい」「安全第一で守り過ぎないように」など『教育活動の理解』や「看護の立場からの考えや方向性を教えてほしい」「教育の場での医療的ケアについて共通理解をしたい」など『看護の考え方の理解や話し合いの必要性』を望む意見もみられた。看護師から教員に対しては「生育歴や内服薬など」「保護者と教員のやり取りの内容」など『ケア以外の情報の伝達や共有』、「安全への意識」「身体的な問題の基本的な理解」など『教師の医療的考えの理解不足』、「教育計画を立てるときの相談」「打ち合わせや話し合いの時間」など『コミュニケーション不足』について多くの記載が認められた。 考察 医療的ケアが必要な子どもに関わる教員と看護師の考え方の違いが認められ、お互いの立場の理解や連携のあり方についての方法の検討が必要と考えられた。
著者
郷間 英世 川越 奈津子 宮地 知美 郷間 安美子 川崎 友絵
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学紀要 (ISSN:03877833)
巻号頁・発行日
vol.115, pp.123-130, 2009-09

幼児期の「気になる子」の保護者の持つ養育上の問題点やその内容を調査し,子どもの行動特徴との関連などについて検討した。方法は保育園において発達上の問題を有する巡回相談事例119 例について,保護者がもつ養育上の問題点の有無と内容,子どもの持つ問題点との関連,などについて分析した。その結果,保護者に養育上の問題があったのは61.3%で過半数を占めた。内容は,手をかけない,手をかけすぎるなど母親の養育態度に問題を有するものが多く,その他,母親の養育能力不足,父親の養育態度の問題,虐待の疑いなどがあった。子どもの問題との関連では,保護者が養育上の問題を持つ子どもはそうでない子どもより,多動性や衝動性など行動上の問題を有する場合が有意に多く認められた。結果より,子どもが発達上の問題を有する場合は,保護者の養育上の問題も考慮した対応が必要と考えられた。The purposes of this study were to investigate parenting issues in raising their children who have developmental problems and to clarify the relationship between the parents' issues and the developmental problems of their children. We sampled 119 consulting cases (100 boys and 19 girls) of a psychologist's rounds at 18 nursery schools. We looked at cases in which parents had parenting issues and analyzed the relationship between parenting issues and the developmental problems of their children. Parenting issues in raising their children were seen in 73 out of 111 parents (61. 3%)-cases such as insufficient or overprotective parenting, lack of parenting ability, parents with their own developmental disabilities, suspicion of abuse and so on. Of the children whose parents had parenting issues, 26 out of 73 (42.0%) had behavioral problems-aggressiveness, impulsiveness and violence, while 5 out of 38 (15.6%) of the children whose parents didn't have parenting issues (p<0.05) had behavioral problems. Many parents raising children with developmental problems had various parenting issues. Further, it is indicated that there are relationships between parenting issues and developmental or behavioral problems of their children. We believe support is required not only for the children with developmental problems, but also for the parents of these children.
著者
郷間 英世 木下 佐枝美 川越 奈津子 中市 悠 木村 秀生 郷間 安美子
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学紀要 (ISSN:03877833)
巻号頁・発行日
no.117, pp.63-71, 2010-09
被引用文献数
2

最近臨床の場でよく見かける発達障害児や「気になる子」の描画は未熟な印象を受けることが多い。そこで幼児の人物画発達を調査し,障害児や「気になる子」の描画特徴について検討した。対象は保育園に在籍する3 ~ 6 歳の554 人の幼児であり,グッドイナフ人物画知能検査行った。描かれた画は描画発達年齢を求め人物画知能(DAM-IQ)を算出した。対象児のうち広汎性発達障害や知的障害など診断名のついている子どもは17 人(3.1 %)で描画発達は遅れており平均DAM-IQ は70.1 で低値であった。診断のない子どものDAM-IQ は平均98.3 で加齢とともに低下した。診断はないが行動や社会性に関して「気になる子」どもは計63 人(11.4%)おり,DAMIQ は平均92.2 とやや低く,成熟した描写と未熟な描写をともに持つアンバランスさを多くの画に認めた。今後その原因や発達の詳細との関連なども検討の必要があると考えられた。We have studied on children's development and have pointed out that present-day children have delay and unbalance in their development. The delay is prominent in drawing. In this study, we investigated the human figure drawing of children with and without disabilities using Goodenough-Drawing-Test (DAM). The subjects were 281 boys and 273 girls at nursery schools. We evaluated the developmental drawing age by scoring 50 items and calculated DAM-IQ. Then we compared the data between children with disabilities and children without disabilities. The number of children with disabilities is 17. The diagnoses of them are pervasive developmental disabilities, intellectual disabilities and so on. The drawing developmental of them is retarded and the average DAM-IQ is 70.1. As for children without disabilities, the average DAM-IQ is 98.3. The number of children "Kininaruko" who have social and behavior problems but have no diagnosis of developmental disabilities is 63(11.4%). The average DAM-IQ of them is 92.7, and in the drawing figures, there are both mature and immature descriptions, which we felt unbalance. There are delay or unbalance on the drawing figures of children with developmental disabilities or Kininaruko. More precise study regarding possible causes and other developmental aspects is needed.
著者
郷間 英世 小谷 裕実 池田 友美 落合 利佳 大谷 多加志 鈴木 万喜子 中市 悠 木村 由里 郷間 安美子 川越 奈津子
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

現代の子どもの発達の様子や問題点を探るため、過去50年間の発達検査の資料の検討、および、保育園幼児の認知発達や社会生活能力の検討を行った。標準化資料の50%通過年齢や項目別の年齢別通過率の検討の結果、1954年から1983年にかけては、子どもの精神発達が促進した時代、1983年から2001年にかけては、発達が遅延してきている時代と考えられた。また、現代の幼児の発達は、認知能力は男女差を認めなかったが、社会生活能力や描画発達は男児で女児より遅れると言う結果が得られ、最近の発達障害や「気になる子」の増加と関連があると考えられた。
著者
横井 輝夫 佐藤 典子 益野 淳子 郷間 英世
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.343-347, 2004
参考文献数
18
被引用文献数
1

離乳期の口腔機能に停滞していると考えられる重症心身障害児・者の適切な食形態の基礎資料を得るために,口腔機能の発達段階と食形態のレベルについて実態を調査した。対象は3歳から55歳(平均年齢28.1歳)までの摂食・嚥下障害が疑われる重症心身障害児・者92名である。方法は離乳の初期,中期,後期に特徴的にみられる口腔機能である舌運動と顎運動を評価し,提供されている食形態のレベルとの関連を調べた。結果,舌運動と顎運動については大多数が離乳中期までの段階に停滞していた。一方,離乳後期以降の食形態が主食で3割,副食で8割の者に提供されていた。全体的に舌運動と顎運動の機能に対し有意にレベルの高い食形態が提供されていた。口腔機能は,食形態や摂食姿勢などの食事環境との相互作用で発達していく。誤嚥性肺炎や食べる楽しみの喪失などを予防するために,口腔機能の発達段階に適した食形態のレベルについての再考が必要であると考えられた。
著者
郷間 英世 小谷 裕実
出版者
兵庫教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

重症心身障害児・者のQOLの評価検討を行った結果は以下の通りであった。1)重症心身障害児の両親へのインタビューより、(1)重症心身障害児・者も自己のQOL(生活の質)について様々な方法で表現している。(2)社会的役割として、重症心身障害児・者も周囲人々に様々な影響を与えていること。(3)障害児・者を育てたことを肯定的にとらえている親は少なくない、などの結果を得た。2)重症心身障害児に対するQOLの評価用紙を作成し、日常介護に携わっている保護者等に回答を求めた。評価項目は(1)健康(医療や健康)、(2)生活環境(日常生活)、(3)家族、(4)社会的情緒的人間関係、(5)教育や労働(日々の療育活動、労働、学齢時は教育)、(6)レジャー(趣味、楽しみ、レクレーション)、(7)全体的な生活に対する満足度、(8)自己表現や自己選択の度合いの8領域に分けた。その結果、重症心身障害児は、全体としての日常生活に在る程度満足している者が多いが、本人や家族を支援してくれる人は少なく、環境や福祉施策は不充分であり、将来の健康や生活に不安がある者が多いという結果であった。3)学齢児に関しては、養護学校の生徒の重症化の実態やQOLの視点から見た医療的ケアの重要性などについて、これまでの研究やインタビュー調査をまとめ報告した。重度の障害を持つ生徒にとって医療はQOLの基礎を与えると考えられた。これらの結果より、重症心身障害児のQOLの構造は、Subjective QOLとObjective QOLに、またObjective QOLはさらにHealth relatedと他の領域に分けられると考えられた。今後は、(1)QOL評価用紙の一般化、(2)QOLの基本である重症心身障害児・者自身の個人的満足度(subjective QOL)の評価などが課題となっている。
著者
井上 和久 郷間 英世
出版者
日本発達障害学会
雑誌
発達障害研究 (ISSN:03879682)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.342-353, 2001-02-28
被引用文献数
3