著者
牛渡 亮
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.73-83, 2013-07-19 (Released:2014-08-31)
参考文献数
19

本稿の課題は,スチュアート・ホールによって1970年代に展開されたモラル・パニック論の内容を詳らかにするとともに,このモラル・パニック論と1980年代以降に展開される彼の新自由主義論との結びつきを明らかにすることにある.ホールによれば,モラル・パニックとは,戦後合意に基づく福祉国家の危機が進展するなかで人々が感じていた社会不安や恐怖感の原因を,社会体制の危機そのものではなくある逸脱的集団に転嫁し,当該集団を取り締まることで一時的な安定を得ようとする現象である.本稿では,このモラル・パニックを通じて高まった警察力の強化に対する能動的同意を背景に,それまでの合意に基づく社会からより強制に基づく社会への転換が起こり,そのことがサッチャリズム台頭の基礎となったことを示した.したがって,本稿での作業は,ホールが「新自由主義革命」と呼ぶ長期的プロジェクトの端緒を理解するための試みであると同時に,オルタナティヴの不在により今日ますます勢いを増す新自由主義を理解するための試みでもある.
著者
牛渡 亮
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
vol.96, pp.83-113, 2015-07-10 (Released:2022-01-21)
参考文献数
28

二〇一四年二月一〇日、スチュアート・ホールは腎不全による合併症のため、八二年にわたる生涯をイギリスで終えた。 本稿の課題は、ホールが遺した多方面にわたる理論的営為を、彼が晩年の論考で提示した「ネオリベラリズム革命」という視角から整理したうえで再検討し、その今日的な意義を解明することにある。 ホールは、一九七〇年代以降のイギリス政府の連続性を「ネオリベラリズムの長きにわたる行進」と表現し、政党にかかわらずそれぞれの政権がすべて「ネオリベラリズム革命」をそれぞれに推し進めてきたと主張している。 本稿の分析によって、ホールが生涯一貫して、戦後の「合意に基づく福祉国家型社会」から今日の「強制に基づくネオリベラリズム型社会」へといたる転換過程と「ネオリベラリズムの長きにわたる行進」に関する諸問題を、みずからの中心的な研究対象としてきたことが明らかになる。さらに、彼が死してなお、この「ネオリベラリズム革命」がこれからを生きる私たちにとって重要な課題であり続けることが示される。
著者
牛渡 亮
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.73-83, 2013

本稿の課題は,スチュアート・ホールによって1970年代に展開されたモラル・パニック論の内容を詳らかにするとともに,このモラル・パニック論と1980年代以降に展開される彼の新自由主義論との結びつきを明らかにすることにある.ホールによれば,モラル・パニックとは,戦後合意に基づく福祉国家の危機が進展するなかで人々が感じていた社会不安や恐怖感の原因を,社会体制の危機そのものではなくある逸脱的集団に転嫁し,当該集団を取り締まることで一時的な安定を得ようとする現象である.本稿では,このモラル・パニックを通じて高まった警察力の強化に対する能動的同意を背景に,それまでの合意に基づく社会からより強制に基づく社会への転換が起こり,そのことがサッチャリズム台頭の基礎となったことを示した.したがって,本稿での作業は,ホールが「新自由主義革命」と呼ぶ長期的プロジェクトの端緒を理解するための試みであると同時に,オルタナティヴの不在により今日ますます勢いを増す新自由主義を理解するための試みでもある.
著者
牛渡 亮
出版者
Tohoku University
巻号頁・発行日
2015-03-25

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