著者
後藤 正夫 黄 奔立 牧野 孝宏 後藤 孝雄 稲葉 忠興
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.189-197, 1988-04-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
40
被引用文献数
19 17

静岡県,香川県および徳島県でチャ芽,野菜およびモクレンの花から分離した氷核活性細菌について分類学的研究を行った。1978~80年静岡県で, 1987年香川県でチャ芽から分離した氷核活性細菌は,後者の1菌株を除きすべてErwinia ananasと同定された。これに対し, 1986年および1987年の両年に静岡県で,また1987年に徳島県で分離された氷核活性細菌は前者の1菌株を除き,すべてXanthomonas属細菌であった。このxanthomonadは最高生育温度等2, 3の性質を除き,形態,生理・生化学的性質からX. campestrisと同定されたが,チャをはじめ供試した数種野菜には病原性を示さず,ジャガイモ切片をわずかに軟化したのみであった。この結果,本菌をX. campestrisの新亜種と位置づけるのが妥当と考えた。タイサイ等の緑葉野菜,チャ芽およびモクレンの花から分離した氷核活性pseudomonadはすべてPseudomonas syringaeと同じ細菌学的性質を示した。これらは分離した植物,野菜類,Delphinium spp. に病原性を示さなかったが,ライラックに対しては接種した菌株のすべてが病原性を示したことからP. syringae pv. syringaeと同定した。ワサビから分離したpseudomonadはP. cichoriiに類似した性質を示したが,蛍光色素非産生,非病原性等からこれとは異なる細菌と判定した。これらの氷核活性細菌は,いずれも高い氷核活性を示し,過冷却温度は-2.8~-3.0Cにあったが,ワサビ菌株は-4C~-5Cであった。
著者
熊倉 和夫 渡辺 哲 豊島 淳 牧野 孝宏 市川 健 伊代住 浩幸 永山 孝三
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.384-392, 2003-11-25
被引用文献数
6

各種植物の根圏および栽培土壌から分離したFusarium属菌とrichoderma属菌について、イネの重要な種子伝染性病害であるばか苗病および苗立枯細菌病に対する発病抑制能を検討した。Fusarium属菌350菌株、richoderma属菌66菌株について、培養菌液または分生子懸濁液のイネ種子浸漬処理によるイネばか苗病発病抑制効果を検討したところ、両属とも高い発病抑制効果を示す菌株が高い割合で存在することが明らかとなった。また、ばか苗病に対して比較的低菌量処理で高い発病抑制効果を示すものの中には、イネ苗立枯細菌病に対しても高い発病抑制効果を示す菌株が多数認められた。高い発病抑制効果を示す菌株として、トマト根圏より分離したF. oxysporum SNF-356株、ノシバ根圏より分離したrichoderma sp. SK-1株を選抜し、ばか苗病および苗立枯細菌病に対する発病抑制効果を調べたところ、SNF-356株では、1.0×10(7)個/m1以上、SK-1株は1.0×10(5)個/m1以上の分生子懸濁液処理で、両病害に対して対照の化学薬剤であるイプコナゾール・銅フロアブル剤またはオキソリニック酸水和剤に匹敵する高い発病抑制効果を示した。特にSK-1株のばか苗病発病抑制効果は、種子の罹病程度に関わらず安定していた。両菌株を種子処理し、育苗期のばか苗病の発病を抑制した苗を本田に移植したところ、出穂期におげるばか苗病の発病頻度は無処理区に比べて明らかに少なかった。
著者
袴田 哲司 加藤 公彦 牧野 孝宏 山本 茂弘
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.162-167, 2004-08-25
被引用文献数
6

マツノザイセンチュウを接種したクロマツ小枝からの微弱発光の特徴を明らかにした.マツノザイセンチュウの接種後30分以内に微弱発光の第1ピークが現れ,接種の約70時間後には第2ピークが観察された.微弱発光が増大している時間は第1ピークでは1時間程度と短かっかが,第2ピークは100時間以上に及んだ.第1ピークはマツノザイセンチュウを殺して処理しても,また,マツノザイセンチュウの懸濁液を遠沈した上澄液を処理しても発生が確認されたが,第2ピークはこれらの処理では認められなかった.マツノザイセンチュウを接種すると,テーダマツはクロマツよりも発光強度は低いもののクロマツと同様な微弱発光の発生パターンを示したが,スギでは微弱発光の増大は観察されなかった.これらのことから,第1ピークの発生にはマツノザイセンチュウ由来の物質が,また,第2ピークの発生にはマツノザイセンチュウによるクロマツ組織の加害が関与する可能性が考えられた.