- 著者
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牧野 幸志
- 出版者
- 日本グループ・ダイナミックス学会
- 雑誌
- 実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
- 巻号頁・発行日
- vol.39, no.1, pp.86-102, 1999-06-30 (Released:2010-06-04)
- 参考文献数
- 60
- 被引用文献数
-
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本稿は, 説得に及ぼすユーモアの効果を検討した先行研究の結果を整理し, ユーモアの効果とその生起メカニズムを検討することを目的とした。最初に, 従来の実証的研究における3つの重大な方法論的問題点 (実験計画上の欠陥, 実験手続きの欠陥, 分析方法の欠陥) を指摘した。それらの問題点をもたない適切な先行研究の分析から以下のことを明らかにした。まず, 説得に及ぼすユーモアの主効果はみられないと報告する研究が多いが, ポジティブな主効果 (促進効果) を示す研究が一部みられた。しかし, ネガティブな主効果 (抑制効果) を示す研究は皆無であった。次に, ユーモアは8つの要因と交互作用することが明らかとなった。その方向は, 説得効果の促進と抑制のいずれの方向でもみられた。この結果は, 精緻化見込みモデルから解釈された。ユーモアの効果の生起メカニズムに関しては, 説得過程の媒介要因と考えられるメッセージへの注意, メッセージの評価, および送り手への好意への促進効果と受け手の肯定的感情への促進効果が有力であることが示唆された。さらに, 生起メカニズムを情報処理の観点から検討した。最後に, 今後の研究の方向性として, 1) ユーモア刺激の種類と量の効果の検討, 2) 受け手のユーモアのセンスによる効果の違い, 3) 情報処理の観点からのユーモアの効果の生起メカニズムの再検討, の3点を指摘した。