著者
牧野 行雄 塩原 匡貴 村松 久史 川口 貞男 山内 恭 田中 正之 小川 利紘 増谷 浩二 森井 正夫 Yukio Makino Masataka Shiobara Hisafumi Muramatsu Sadao Kawaguchi Takashi Yamanouchi Masayuki Tanaka Toshihiro Ogawa Koji Masutani Masao Morii
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.87, pp.1-22, 1985-12

南極中層大気の総合観測(Antarctic Middle Atmosphere Program)の一環として, 南極昭和基地において1983年3月24日から1984年12月29日まで(第24次および第25次南極地域観測隊)太陽光の赤外分光測定による大気微量成分(N_2O, CH_4,CFCl_3,CF_2Cl_2,HNO_3)の観測を行った。使用した分光計の分解能は最高0.1(cm)^<-1>まで設定可能であるが, 観測時間の長さやS/N比を考慮して0.8(cm)^<-1>で通年観測を行った。延べ111日間に計487個のスペクトルを得たが, これらは最終的に磁気テープに記録し大型電子計算機で処理する。測定されたスプクトルのS/N比から, CFCl_3(850(cm)^<-1>), N_2O(2576(cm)^<-1>), CH_4(6004(cm)^<-1>) のカラム密度は, それぞれ±40,±2,±6%の測定誤差を有することが見積もられる。特に1000(cm)^<-1>域のより精密な測定のために, 今後, 高感度検知器(MCTなど)の安定な使用による観測が望まれる。As part of the Japanese Antarctic Middle Atmosphere Program (Antarctic MAP), columnar amounts of atmospheric minor constituents such as N_2O, CH_4,CFCl_3,CF_2Cl_2 and HNO_3 were determined from measurements of infrared solar spectra for the period 24 March 1983-29 December 1984 at Syowa Station, Antarctica (69°00′S, 39°35′E). A Fourier-transform-infrared spectrometer was used to measure the solar spectra. The highest apodized resolution of the spectrometer is 0.1(cm)^<-1> (full width at half-maximum), but the resolution of 0.8(cm)^<-1> was adopted in routine operation because of an economy of data processing time and of better signal to noise (S/N) ratio. The accuracy of measurements is estimated from S/N ratios of the obtained spectra; typical errors of measured abundances were ±40,±2 and ±6% for CFCl_3 (at 850(cm)^<-1>), N_2O (at 2576(cm)^<-1>) and CH_4 (at 6004(cm)^<-1>), respectively. A MCT detector (cooled at 77 K) is desirable to attain higher resolutions (&acd;0.1(cm)^<-1>) and larger S/N ratios.
著者
堤 之智 牧野 行雄
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.1041-1058, 1995-12-25
被引用文献数
1

1987年から1991年にかけて行った日本上空の一連の航空機観測によって、若狭湾、遠州灘、その他いくつかの地域の上空で、対流圏オゾンの鉛直分布を観測した。そして観測されたオゾンピークの起源を探るために、それぞれのピークに対して流跡線解析とその流跡線付近の渦位分布を調べた。その結果、今回日本上空で観測されたオゾンピークのうちの多くは、日本西方で起こったトロポポーズフォールディングに起因していることがわかった。1989年1月21日に遠州灘上空で観測された2つの異なった高度、濃度のオゾンピークは、別のトロポポーズフォールディングを起源としていた。そして輸送中に拡散されながら、日本上空で層状構造をなしていた。同じ日に、同一のトロポポーズフォールディングを起源に持つ似た形のオゾンピークが約300km離れた地域で観測された。それらのオゾンピークは、高度は異なるが温位の傾きから、同じ対流圏オゾン層に属していたと考えられる。1990年8月8日に2つの異なった性質の大気が日本上空のそう離れていない2地点で観測された。1つは高濃度のオゾンと低濃度の水蒸気を含んだ大陸性の大気で、中国東北部から輸送されて来ていた。もう一つは、低濃度のオゾンと高濃度の水蒸気を含んだ海洋性の大気で、成層圏大気に出合わずまた都市域も通過せずに数日間海上を漂っていた。海洋性気団でも都市域や工業地帯を通過したものは、オゾンと水蒸気が正の相関、すなわちオゾン、水蒸気ともに高濃度を示した。1991年4月27日の筑波上空でのオゾンの鉛直分布はほぼ一様で70ppbvの高濃度を示した。これは、筑波上空の大気が鉛直方向の渦位勾配が緩やかなフォールデイング領域から来ており、しかもフォールデイングが起こって間もなく輸送されてきたためであろう。オゾン濃度と輸送された距離の関係から、対流圏中のオゾンの分布には成層圏からの流入だけでなく、輸送中の拡散も重要であると考えられる。