著者
山内 恭
巻号頁・発行日
2017-01-11

今、北極・南極の温暖化はどうなっているのだろうか?近年の地球温暖化の中で、北極は強い温暖化を示している。北極では、全球平均の2倍以上の激しい温暖化が現れており、北極海の海氷も著しく減少している。さらに、北極温暖化の影響が中緯度にも現れ、日本の冬の異常気象をもたらすことがあるとのこと。これには、上空の成層圏を通したプロセスも働き、成層圏ー対流圏結合を通して、秋の成層圏の極渦を弱め、それがさらに冬の対流圏に伝わり環状モードを弱めジェット気流の蛇行を拡大し、寒波の吹き出しを強め、ユーラシア大陸東岸、日本付近の寒波・豪雪をもたらすというものである。一方、南極では、南極半島域では強い温暖化が現れているのに対し(この温暖化が最近弱まっているとの説もあり)、昭和基地を含む東南極では温暖化が顕著にはみえない。南極上空にオゾンホールが発達したために温暖化が抑えられているとの説が有力である。オゾンが減ることで強められた極渦が対流圏にも伝わり環状モードを強め、暖気の流入を抑え温暖化を止めているとのことである。これも、成層圏ー対流圏結合が要になっているが、北極とは逆の方向に働いている。このような、南極、北極での温暖化の違い、成層圏ー対流圏結合の正反対の働き、これらはどのように統一的に理解されるのであろうか?
著者
山内 恭 Takashi Yamanouchi
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:2432079X)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.1-18, 2016-03

今,北極・南極は温暖化しているのだろうか? この質問に答えられるように,解説を試みた.近年の地球温暖化の中で,強い温暖化の現れている地域は北極域と南極半島域である.北極域の温暖化は全球平均の2倍以上の温暖化で,北極海の夏の海氷も著しく減少している.何がこの北極温暖化増幅をもたらしているのか,その原因を探った.一方,南極では,南極半島や西南極で温暖化が激しいのに対し,東南極では温暖化が顕著にはみえない.なぜ,温暖化が抑えられているのであろうか.オゾンホールが関係しているという説を述べる.さらに,北極温暖化の影響で,中緯度に寒冷化が起こる現象がみつけられ,様々な議論を呼んでいる.今後の研究が期待される.
著者
金戸 進 山内 恭 Susumu Kaneto Takashi Yamanouchi
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.459-476, 1999-11

第38次南極地域観測隊ドームふじ観測拠点越冬隊9名は, 1997年1月25日から1998年1月24日までの1年間, ドームふじ観測拠点での3年目, 最終年の越冬観測を実施した。今次隊では, 気水圏系プロジェクト研究観測の「氷床変動システム研究観測」と「南極大気・物質循環観測」を主に実施した。前者では, 36次隊から続けられた氷床深層掘削が中心課題として計画されていたが, 前次隊末のドリルスタック以来, 液封液の補充を続けたがドリルを回収できず, 深層掘削の再開には至らなかった。しかし, 前年までに掘削された氷床コアの現場処理・解析を続け, 多くのコア試料を持ち帰った他, 雪氷観測, 浅層掘削, 内陸旅行観測を行った。後者では, 新たな観測として, ライダーによる極域成層圏雲の観測やGPSゾンデによる高層観測, 大気循環場の観測等を精力的に実施し, 初めて内陸での極成層圏雲の通年の盛衰を捉えたり大気循環場のブロッキング高気圧に伴う熱や水蒸気の流入を捉えるといった成果を上げることができた。これら観測を支える設営面では, 水作りのための雪取りや, 燃料ドラムの搬入, 低温下での車両の立ち上げに苦労した。燃料事情は厳しかったが, 昭和基地からの補給を行ったことで内陸調査旅行が可能となった。越冬最後に, 基地の閉鎖作業を行い, 基地を後にした。
著者
山内 恭 森本 真司 青木 周司 菅原 敏
出版者
国立極地研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

南極域成層圏における温室効果気体の分布と変動を明らかにするため、 様々な改良を加えた小型成層圏大気サンプラーを南極・昭和基地から小型気球を用いて飛揚し、 14-29km の4 高度においてそれぞれ10.7 から7.0L(標準状態)の大気試料を採取することに成 功した。大気試料の精密分析によって、CO2、CH4、N2O、SF6 濃度、及びO2/N2 比、Ar/N2 比の鉛直 分布と経年変化が明らかになった。
著者
山内 恭
出版者
京都大学ヒマラヤ研究会・総合地球環境学研究所「高所プロジェクト」
雑誌
ヒマラヤ学誌 : Himalayan Study Monographs (ISSN:09148620)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.212-220, 2009-05-01

この30 年地球全体は温暖化の兆候にあるが, 氷の世界である南極, 北極の極地もやはり温暖化しているのだろうか. 極地の氷はどうなるのだろうか. 最近の研究成果から迫ってみた.
著者
山内 恭
出版者
京都大学ヒマラヤ研究会・総合地球環境学研究所「高所プロジェクト」
雑誌
ヒマラヤ学誌 : Himalayan Study Monographs (ISSN:09148620)
巻号頁・発行日
no.10, pp.212-220, 2009-05-01

この30 年地球全体は温暖化の兆候にあるが, 氷の世界である南極, 北極の極地もやはり温暖化しているのだろうか. 極地の氷はどうなるのだろうか. 最近の研究成果から迫ってみた.
著者
平沢 尚彦 青木 輝夫 林 政彦 藤田 耕史 飯塚 芳徳 栗田 直幸 本山 秀明 山内 恭
巻号頁・発行日
2016-12-02

第7回極域科学シンポジウム/横断セッション:[IL]極域科学における学術の大型研究計画について12月2日(金)国立極地究所 3階セミナー室
著者
山内 恭
巻号頁・発行日
no.565, 1978
著者
山内 恭 Takashi Yamanouchi
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.58-95, 1999-03

第38次南極地域観測隊昭和基地越冬隊31名は, 1997年2月1日から翌年1月31日まで1年間昭和基地での越冬観測を実施した。今次隊より, 研究観測は, 新しくプロジェクトとモニタリングの2本立てで計画され, 多彩な観測が実施された。プロジェクト研究観測では「東南極のリソスフィアの構造と進化の研究(シール計画)」「南極大気・物質循環観測」が重点的課題であり, 前者は夏期のアムンゼン湾域での調査が, 後者はドームふじ観測拠点での観測が中心となったが, 昭和基地での越冬中も関連観測が多く行われた。また, モニタリング研究観測としては, これまで定常観測として行われていた地震観測の他, オーロラ光学観測, 大気微量成分観測, 生態系モニタリング, 衛星データ受信等, 地球環境の長期的監視が必要な観測を着実に推進した。野外へは, 数多くの沿岸露岩域への生物, 地学調査や, みずほルートでの地球物理観測旅行が行われた他, 航空機観測も精力的に実施した。3年目のドームふじ観測拠点での越冬観測が続いていたため, これを支えるための夏期の人員・物資輸送の旅行に加え, 越冬中も補給旅行を実施した。10月から11月にかけ, 44日間の長期旅行となり, 8名が参加, 燃料補給等を行った。これらの基地, 野外観測を支えるための設営作業も多忙をきわめた。昭和基地整備計画に基づく, 新居住棟の建設が夏期間から続き, 6月に完成, 入居となった。基地施設は着々と整備が進んでいるが, それだけに維持管理の仕事量は増加し, 設備面で追いつかない面も見られた。野外活動のための雪上車類の整備, 旅行準備も大仕事であった。環境保護を目指し, 不用建物の解体, 廃棄物持ち帰りに努めた。大きな障害もなく進んだ越冬と思われたが, 11月末になって急病人が発生した。「しらせ」の昭和基地への急行を要請し, 病気の隊員は「しらせ」により予定を変更して南アフリカ, ケープタウンへ搬送, 帰国させた。