著者
浅野 正二 内山 明博 塩原 匡貴
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
気象集誌 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.165-173, 1993-02-25
被引用文献数
4

1991年および1992年の1月から4月の期間に筑波(36.05゜N,140.13°E)において、大気柱に含まれるエーロゾルの光学的厚さ(AOT)の波長分布を多波長サンフォトメータを用いて測定した。1992年に観測された大気柱のAOTは、1991年に比べて0.1〜0.2ほど大きかった。この違いの主な原因は、1991年6月に起きたピナトゥボ火山の大噴火に起因する成層圏エーロゾルの増大と考えられる。成層圏エーロゾルによる光学的厚さは1992年2月に最大であり、この値は1982年12月に観測されたエルチチョン火山の場合の最大値を超えた。AOTの波長分布から大気柱内エーロゾルの粒径分布を推算した。成層圏エーロゾルに対するAOTから、約0.6μmのモード半径および0.05より小さい有効分散値をもつ一山型の狭い分布が、ピナトゥボ火山性エーロゾルの粒径分布として推定された。この一山型の狭い粒径分布は、ビショップ光環のシミュレーションから推定された粒径分布(Asano,1992)と合致する。
著者
内山 明博 浅野 正二 塩原 匡貴 深堀 正志
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.513-532, 1999-04-25 (Released:2009-09-15)
参考文献数
43
被引用文献数
4 4

気象庁気象研究所では、上層の氷雲の微物理特性と放射特性同時観測のために地上からの観測システムを開発した。観測システムは、雲粒子ゾンデ(HYVIS)、ライダーと各種放射計からなっている。本論文では、観測システムの概要と1989年6月22日,30日に観測された梅雨前線に伴う巻層雲の構造と放射特性について述べた。HYVISによって観測された氷晶の粒径分布は、べき乗関数で近似でき、その指数は全層平均で3.2であった。粒径分布の顕著な温度依存は、見られなかった。全天日射量の透過率は、同時に測定したサンフォトメーターから推定した可視の光学的厚さに関係づけ、理論値と比較した。その比較は、氷晶粒子に対する非等方因子(asymmetry factor)は球形の粒子に対するものより小さいことを示している。放射温度計の測定値から波長10.5μmでの有効射出率を推定した。さらに、フーリエ変換型赤外分光光度計のデータから波数800から1200cm-1の間の有効射出率の波数分布も推定した。観測した巻層雲は可視の光学的厚さが1.0以上で有効射出率は0.4以上あり光学的に厚かった。
著者
内山 明博 浅野 正二 塩原 匡貴 深堀 正志
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.513-532, 1999-04-25
被引用文献数
1

気象庁気象研究所では、上層の氷雲の微物理特性と放射特性同時観測のために地上からの観測システムを開発した。観測システムは、雲粒子ゾンデ(HYVIS)、ライダーと各種放射計からなっている。本論文では、観測システムの概要と1989年6月22日, 30日に観測された梅雨前線に伴う巻層雲の構造と放射特性について述べた。HYVISによって観測された氷晶の粒径分布は、べき乗関数で近似でき、その指数は全層平均で3.2であった。粒径分布の顕著な温度依存は、見られなかった。全天日射量の透過率は、同時に測定したサンフォトメーターから推定した可視の光学的厚さに関係づけ、理論値と比較した。その比較は、氷晶粒子に対する非等方因子(asymmetry hctor)は球形の粒子に対するものより小さいことを示している。放射温度計の測定値から波長10.5μmでの有効射出率を推定した。さらに、フーリエ変換型赤外分光光度計のデータから波数800から1200cm^<-1>の間の有効射出率の波数分布も推定した。観測した巻層雲は可視の光学的厚さが1.0以上で有効射出率は0.4以上あり光学的に厚かった。
著者
牧野 行雄 塩原 匡貴 村松 久史 川口 貞男 山内 恭 田中 正之 小川 利紘 増谷 浩二 森井 正夫 Yukio Makino Masataka Shiobara Hisafumi Muramatsu Sadao Kawaguchi Takashi Yamanouchi Masayuki Tanaka Toshihiro Ogawa Koji Masutani Masao Morii
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.87, pp.1-22, 1985-12

南極中層大気の総合観測(Antarctic Middle Atmosphere Program)の一環として, 南極昭和基地において1983年3月24日から1984年12月29日まで(第24次および第25次南極地域観測隊)太陽光の赤外分光測定による大気微量成分(N_2O, CH_4,CFCl_3,CF_2Cl_2,HNO_3)の観測を行った。使用した分光計の分解能は最高0.1(cm)^<-1>まで設定可能であるが, 観測時間の長さやS/N比を考慮して0.8(cm)^<-1>で通年観測を行った。延べ111日間に計487個のスペクトルを得たが, これらは最終的に磁気テープに記録し大型電子計算機で処理する。測定されたスプクトルのS/N比から, CFCl_3(850(cm)^<-1>), N_2O(2576(cm)^<-1>), CH_4(6004(cm)^<-1>) のカラム密度は, それぞれ±40,±2,±6%の測定誤差を有することが見積もられる。特に1000(cm)^<-1>域のより精密な測定のために, 今後, 高感度検知器(MCTなど)の安定な使用による観測が望まれる。As part of the Japanese Antarctic Middle Atmosphere Program (Antarctic MAP), columnar amounts of atmospheric minor constituents such as N_2O, CH_4,CFCl_3,CF_2Cl_2 and HNO_3 were determined from measurements of infrared solar spectra for the period 24 March 1983-29 December 1984 at Syowa Station, Antarctica (69°00′S, 39°35′E). A Fourier-transform-infrared spectrometer was used to measure the solar spectra. The highest apodized resolution of the spectrometer is 0.1(cm)^<-1> (full width at half-maximum), but the resolution of 0.8(cm)^<-1> was adopted in routine operation because of an economy of data processing time and of better signal to noise (S/N) ratio. The accuracy of measurements is estimated from S/N ratios of the obtained spectra; typical errors of measured abundances were ±40,±2 and ±6% for CFCl_3 (at 850(cm)^<-1>), N_2O (at 2576(cm)^<-1>) and CH_4 (at 6004(cm)^<-1>), respectively. A MCT detector (cooled at 77 K) is desirable to attain higher resolutions (&acd;0.1(cm)^<-1>) and larger S/N ratios.
著者
山内 恭 和田 誠 塩原 匡貴 平沢 尚彦 森本 真司 原 圭一郎 橋田 元 山形 定
出版者
国立極地研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

両極におけるエアロゾルの航空機集中観測を通じ、極域のエアロゾルにとって、南極・北極ともに,大気の長距離輸送過程が支配的であることが明らかになり、気候影響の大きい黒色炭素の問題等も興味ある発展が期待される。1.16年度5〜6月に、ドイツ、アルフレッド・ウェーゲナー極地海洋研究所(AWI)と共同で、同航空機2機を使った「北極対流圏エアロゾル雲放射総合観測(ASTAR 2004)」を実施した。航空機による散乱係数,吸収係数とも汚染の度合いの高かった北極ヘイズの活発な時期であったASTAR 2000の3〜4月の結果に比べいずれも低めの値が示されたほか、黒色炭素粒子が硫酸液滴に取り込まれた内部混合粒子が卓越することが明らかにされた。また、地上では降水に伴うエアロゾルの除去過程が観測され、エアロゾルと雲の相互作用が類推された。2.18年12月から19年1月にかけて、引き続きAWIの航空機による南極域での「日独共同航空機大気観測(ANTSYO-II)」を実施した。大西洋セクターではノイマイヤー基地を中心に内陸のコーネン基地まで、合計22フライトを実施し、インド洋セクターの昭和基地側では大陸上S17拠点をベースに内陸、海洋上水平分布と鉛直分布を取得する観測飛行を合計15フライト実施した。エアロゾルの物理、光学、化学特性の3次元分布を得たと共に、温室効果気体の鉛直分布を得るための大気試料採取も行った。南極大陸沿岸域でも、西経側に位置するノイマイヤー基地周辺では、大気が南極半島側から輸送されることが多く、一方東経側に位置する昭和基地では、南大洋を越え南米大陸からの輸送が多いことが、エアロゾルの性質を特徴づけていること、さらに昭和基地近傍で内陸からの大気の中にも黒色炭素の多いエアロゾルが見られることが明らかになった。そのほか、昭和基地観測、海鷹丸観測と併せ、海洋起源物質の寄与の解明も期待される。
著者
原 圭一郎 林 政彦 塩原 匡貴 橋田 元 森本 真司
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

南極で出現するヘイズの物理的・化学的特性、空間分布、出現頻度に関する知見を得るために、昭和基地において、エアロゾル・ガスの同時観測を実施した。得られた観測データと過去のデータの再解析から、強風下で起きる海氷域からの海塩粒子放出がヘイズ現象の主要因であることが示された。ヘイズの出現頻度は7-9月に増加しており、海氷面積の季節変化との対応が確認された。ヘイズ層は主に地上近傍~2kmの高度で観測されることが多かったが、4kmまでエアロゾル層が広がった例も確認された。極夜明け時期(8-10月)のヘイズ現象時にオゾン濃度も確認されたことから、ヘイズ現象は大気化学過程と密接に関連していることが示唆された。
著者
中澤 高清 森本 真司 塩原 匡貴 和田 誠 青木 周司 山内 恭 菅原 敏
出版者
東北大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1997

1998年7月、1998年12月〜1999年3月にスバールバル諸島ニーオルスンにおいて、大気中の温室効果気体やエアロゾルなどの実態の把握を目指し、集中観測を行った。これらの観測から、北極域におけるCO_2、CH_4、O_3の変動が詳細に捉えられると同時に、CO_2データは海水表層でのCO_2交換の評価のための基礎データとなった。エアロゾルについては今回の集中観測で多くの基礎データの蓄積がなされ、冬から春にかけての極域におけるエアロゾルの特徴をとらえることができた。北極域における大気微量成分の広域3次元分布、特に極渦の形成・崩壊期に着目した輸送・循環・変質の過程を調べるため、1998年3月6日〜14日の期間、航空機にオゾンおよびCO_2の連続測定装置、大気サンプリング装置、エアロゾル計測装置、エアロゾルサンプリング装置等を搭載し、観測を実施した。観測は北極点を通過し北極海を横断する長距離高高度飛行(巡航高度12km)を基本とし、その他、スピッツベルゲン島近海上空およびアラスカ州バーロー沖合上空では海面付近から高度12kmまでの鉛直プロファイルの観測を行った。機器は概ね順調に動作し、良好なサンプルやデータを取得することができた。その結果、(1)CO_2やO_3濃度は圏界面高度で不連続に変化し、圏界面を挟んで鉛直混合が大きく妨げられる様子が確認された、(2)CH_4とN_2O濃度に見られた正の相関は前年度にスウェーデンで実施された大気球による北極成層圏大気の観測結果と良い一致を示した、(3)硫化カルボニル(COS)の高度分布測定から、COSが成層圏エアロゾルの硫黄供給源であることを示唆する結果が得られた、(4)北極ヘイズ層は多層構造をなし対流圏上部まで到達することがあった、(5)エアロゾルの直接サンプリングにより、成層圏・自由対流圏では主に硫酸粒子、下部混合層では海塩粒子の存在が確認された。