著者
遠藤 正英 橋本 将志 篠原 志保 児玉 春生 猪野 嘉一
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.50-52, 2016-01-01 (Released:2017-01-18)
参考文献数
6

脳卒中片麻痺患者において,長下肢装具の使用は重要である.しかし,種々の理由により長下肢装具の処方を躊躇することがある.そこで,短下肢装具へ容易に変更可能な長下肢装具があれば,用途に応じた使用が可能になると考え本装具を作製した.本装具を症例に使用したところ,訓練中は長下肢装具と日常生活は短下肢装具での使い分けが可能となり,日常生活が車椅子で自立した.また,麻痺の状態に応じて長下肢装具,短下肢装具の使い分けも可能だったため,カットダウンがスムーズに行え,短下肢装具での退院が可能となった.
著者
田代 耕一 遠藤 正英 川﨑 恭太郎 猪野 嘉一 森 政雄
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.77-77, 2016

<p>【はじめに】</p><p>脳卒中片麻痺患者(以下:CVA患者)において歩行の獲得は日常生活動作(以下:ADL)に大きく影響を及ぼす。歩行の獲得には杖や補装具といった歩行補助具の役割が重要となる。特に杖は麻痺側下肢に代わる体重の支持、歩行中のバランス保持などを目的に使用される。そして臨床上、杖の高さの違いによって歩容が変化することを経験する。いくつかの教本によると、杖の高さは大腿骨大転子部の高さとされているが、CVA患者の歩行において大転子の高さでは合わないことも経験する。そのため実際、杖の高さの設定はセラピストの視覚的評価に頼っており、力学的評価を簡易的に測定することは困難である。</p><p>そこでグリップの把持により上肢荷重量が測定可能なリハビリ支援ツールTree(リーフ株式会社製)、足圧インソールモニター(以下:Pit)(リーフ株式会社製)を使用し、グリップの高さの違いがCVA患者の歩行における非麻痺側上肢の荷重量(以下:上肢荷重量)、麻痺側下肢の立脚期荷重量(以下:立脚期荷重量)に与える影響について検討した。</p><p>【方法】</p><p>対象は脳卒中左片麻痺患者1名であり、Brunnstrom recovery stage上肢Ⅲ手指Ⅱ下肢Ⅲ、歩行はT杖、短下肢装具を装着し2動作前型で自立であった。その対象者に対し、Treeのグリップの高さを変更しつつTree使用下での歩行を3回実施した。グリップの高さは、対象者が日常的に使用している杖の高さである90cm、その高さから上下に5cmずつ変更した場合の3条件とした。Treeの設定はフリー走行モードとし、速度は10m歩行にて抽出した快適歩行速度0.35m/sとした。また、測定は85cm、90cm、95cmの順で実施した。そして各3条件においてグリップを把持する上肢荷重量(kg)、立脚期荷重量(%)をそれぞれ測定した。上肢荷重量は全歩行周期における平均値を算出し、立脚期荷重量は連続する3歩行周期における平均値を抽出した。立脚期荷重量はPitを使用し、立脚期は1歩行周期における麻痺側下肢の踵接地からつま先離地とした。Pitでの計測数値は対象者の全体重を100%とし算出した。</p><p>【結果】</p><p> グリップの高さ85cmの場合、上肢荷重量の平均値が1.87kg、立脚期荷重量が53.4±28.2%であった。90cmの場合、上肢荷重量の平均値が1.62kg、立脚期荷重量が50.1±26.5%であった。95cmの場合、上肢荷重量が1.34kg、立脚期荷重量が62.0±31.1%であった。</p><p>【考察】</p><p>グリップが高くなるにつれて上肢荷重量は減少する傾向がみられた。これはグリップが高くなるにつれて、上肢の下方への支持が難しくなったためと考える。</p><p>また立脚期荷重量においては、自身の杖の高さとは異なる場合に増加する傾向がみられた。85cmの場合は、90cmの場合と比較して左下肢前遊脚期に体幹・骨盤帯の右回旋が増加し、さらに体幹の前屈を生じるため股関節屈曲位での振り出しとなる。結果的に屈筋共同運動が誘発され、床から足底までの距離が大きくなる。そのため左立脚期における衝撃が大きくなり、立脚期荷重量が増加したと考える。95cmの場合は、85cm、90cmの場合と比較して左下肢前遊脚期に体幹の前屈・右回旋が減少し麻痺側への重心移動が容易となったため、麻痺側への重心移動が大きくなり立脚期荷重量が増加したのではないかと考える。以上のことから、杖の高さによって上肢荷重量、立脚期荷重量に変化を示し杖の高さが歩行時の重心移動に影響することが考えられる。しかし、Treeのグリップは杖と同機能ではない。そこで今後は症例数を増やし杖使用時、Tree使用時の比較を含めた検証を行っていく。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>対象には本研究の内容を説明し同意を得た。また当院倫理審査委員会にて承認を得ている。(2016040402番)</p>