著者
髙橋 儀平
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.62-67, 2020-01-01 (Released:2021-01-15)
参考文献数
2
被引用文献数
1

本稿は日本における1960年代後半のバリアフリーの発祥から今日までの展開を概観したものである.日本のバリアフリーの動きは1970年初頭に始まっているが,当初から欧米諸国からの学びが多く,同時にその経験をいち早く実行に移した,障害者自身の行動力によるところが大きい.一方,研究者らはそれらへの技術的情報提供を怠らなかったともいえる.その後80年代の福祉のまちづくりの取り組みを経て,90年代以降のバリアフリー関連法制度の時代が始まる.そして2020年の東京オリンピック·パラリンピックの開催決定を向け,多様な市民の共生を謳うインクルーシブな社会環境への創出に向かっている.ユニバーサルデザインはこれらをハード·ソフトの両面から具体化する技術的プロセスとして今や十分な市民権を有したといえる.バリアフリーの新たな展開に対応した重要なキーワードの1つである.
著者
吉尾 雅春
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.110-115, 2022-04-01 (Released:2023-04-15)
参考文献数
5

脳卒中患者において立位で膝関節の伸展保持ができないことは,運動療法の選択の大きな決定因子になる.廃用症候群に陥りやすい遷延性意識障害などの重症例に対しては長下肢装具を用いた立位・歩行による感覚刺激で大脳皮質の覚醒を促す.さらに歩行再建に向けて長下肢装具で膝を固定した上で,股関節に主眼を置いて足関節の動きを伴った積極的な立位・歩行練習を行う.立脚中期~後期に臼蓋から突出した大腿骨頭と伸張された大腰筋とのせめぎ合いこそがヒトの姿勢制御の根幹を作っている.股関節への荷重と筋紡錘の伸張によるこの脊髄小脳路と橋網様体脊髄路の活性化で得られる姿勢制御の場面を作るためには膝の支持性は不可欠である.
著者
山本 征孝 藤本 康浩 森 義統 椿野 稔
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.248-254, 2015-10-01 (Released:2016-10-15)
参考文献数
20
被引用文献数
3

カットダウン可能な時期における急性期脳卒中片麻痺患者を対象に,長下肢装具(以下,KAFO)と短下肢装具(以下,AFO)のそれぞれを用いたリハビリテーションの治療効果の調査を行った.対象は急性期脳卒中片麻痺患者で,AFOを使用した歩行が可能な者14名とした.AFOを使用する群とKAFOを使用する群に対象を分け,練習前後で非麻痺側・麻痺側下肢最大荷重量,歩幅,歩行速度,歩行率を比較した.その結果,KAFO群では麻痺側下肢最大荷重量,歩行速度,歩幅が練習後において有意な差が認められた.KAFOを使用した立位・歩行練習はカットダウン可能な時期を経過した場合においても歩行能力や麻痺側下肢の支持性を即時的に改善することが示唆された.
著者
藤﨑 拡憲 山城 勉 平山 史朗 島袋 公史 渡辺 英夫
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.51-56, 2013-01-01 (Released:2014-04-15)
参考文献数
5
被引用文献数
13

脳卒中片麻痺に処方される短下肢装具の機能を調査する目的で,全国の回復期リハビリテーション病院にアンケート調査を行った.集計した 226 病院の 2,260個の短下肢装具の機能について検討した結果,シューホーン AFO やオルトップ AFO など足関節の底屈,背屈に制動と補助の機能があるタイプが 56.62%と最も多く,底屈,背屈に固定,遊動,制限の設定ができるタイプが 16.64%で第2位であった.全国を 8つの地域区分で検討すると,ほぼ類似の処方傾向が見られたが,各県別での検討ではばらつきも少なくなかった.
著者
前田 朗 堀部 秀二
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.196-203, 1999-07-01 (Released:2010-02-25)
参考文献数
7

関節は, 骨, 関節軟骨, 靱帯, 関節包, 滑膜, 支帯, 半月, 関節唇などで構成され, 運動の中心, テコの支点, 荷重負担, 衝撃緩和, 位置覚のセンサーとしての機能がある. 関節の運動は並進運動 (すべり) と回転運動 (ころがり) が組み合わさって行われる. 関節の物理的特性としては, 粘弾性特性や小さな摩擦力が特徴的である. 関節の安定性は骨形態, 靱帯, 半月, 関節唇, 関節周囲筋, 関節内の陰圧, 拮抗する関節周囲筋などによって保たれているが, なかでも靱帯の果たす役割は大きい. 靱帯は関節において骨と骨を連結する紐状あるいは帯状のコラーゲン線維組織であり, 関節の安定化, 関節運動の誘導, 過度の運動に対する制動, 関節の固有知覚のセンサーとしての機能がある.
著者
梅田 匡純 森下 元賀 川浦 昭彦 河村 顕治
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.222-229, 2018-07-01 (Released:2019-07-15)
参考文献数
27

脳卒中患者の歩行獲得にとって,長下肢装具(KAFO)から短下肢装具(AFO)への移行は重要な要素となる.膝継手遊動化のKAFOを装着した歩行練習は,その過程の中で多く経験するが,足部調整には経験則によるところが大きい.AFOを対象にした報告では,足底屈制動の有効性に異論はないが,膝伸展を補うとされる足背屈制動については,推進力が抑制されるなどその見解は分かれる.そこで健常者13名を対象に,膝継手遊動のKAFOを装着し足背屈制限有無の歩行時床反力から検討を加えた結果,足背屈制限を付加した場合においても推進力は維持され,かつ膝関節は伸展方向へ安定させる傾向を示した.この結果からKAFOにおける足背屈制限は,AFO移行に向けた有効適応の可能性を示唆させた.
著者
沖川 悦三
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.28-33, 2011-01-01 (Released:2013-08-15)
参考文献数
3
著者
村山 稔
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.216-220, 2022-07-01 (Released:2023-07-15)
参考文献数
21

脳卒中患者の歩行練習において,長下肢装具の使用開始から短下肢装具に移行するまでの間にも,歩行能力の改善にともなって段階的な難易度の調整が必要と考えられる.そこで今回,長下肢装具から短下肢装具に移行する間の歩行練習と装具の設定について,考慮すべき点をまとめた.長下肢装具は膝関節を固定するだけでなく,30°屈曲に可動させることにより,荷重応答期から立脚中期における内側広筋の筋活動比が増加する.また,膝継手を屈曲遊動にした介助歩行により,短下肢装具に比べて強制的に速い速度の歩行が可能になる.短下肢装具では踵からの初期接地を補償し,荷重応答期に底屈を促す設定で継続使用することで,荷重応答期における前脛骨筋の筋活動比が増加する.それぞれの時期に適切に装具を設定することで,先行研究で懸念されている長下肢装具や短下肢装具の使用による廃用性筋萎縮は,防ぐことが可能と考えられる.
著者
渡辺 英夫
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.107-112, 2007-04-01 (Released:2010-02-25)
参考文献数
1
被引用文献数
9
著者
増田 知子
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.22-27, 2013-01-01 (Released:2014-04-15)
参考文献数
10
被引用文献数
6

脳卒中片麻痺患者に対し,長下肢装具を使用して運動療法を行う目的と実際の進め方,神経機構を基にした歩行トレーニングの考え方について述べた.歩行能力の向上に従い,長下肢装具から短下肢装具へのカットダウンが検討される.変化が大きく明確な基準が存在しないこの過程を円滑に進めるためには,より細かく段階を刻み,双方向への変更が可能な「セパレートカフ式長下肢装具」の活用が有効であり,使用例を交えて紹介した.セラピストは,治療戦略において装具を効果的に使用できるよう,装具自体に施す工夫に加え,その使い方に関しても,探究し習熟する必要がある.
著者
高島 悠次 阿部 浩明
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.52-59, 2018-01-01 (Released:2019-01-15)
参考文献数
30
被引用文献数
7

急性期に長下肢装具(以下,KAFO)を作製した脳損傷(脳卒中および頭部外傷)後片麻痺例と作製しなかった片麻痺例の回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)転院後の歩行および階段の機能的自立度(以下,FIM)のFIM得点の推移を後方視的に調査した.2010年より2年間に回復期リハ病棟に入院した重度片麻痺例のうち,急性期病院にてKAFOを作製した8例をKAFO群とし,同等の条件(年齢,発症からの日数,回復期リハ病院入院日数,麻痺の重症度,歩行機能,階段昇降機能)で作製せずに回復期リハ病棟に入院した20例を非作製群として抽出し,2群のFIM歩行とFIM階段の経時的変化を調査した.FIM歩行とFIM階段は経過に伴い,両群とも自立度が向上した.KAFO群は非作製群よりFIM歩行が早期に向上し,退院時のFIM階段が有意に高かった.重度片麻痺例において早期にKAFOを作製し,理学療法を実施することは,歩行自立度を早期に向上させ,階段昇降の自立度を向上させると思われた.
著者
林 典雄 橋本 貴幸 鵜飼 建志 長田 瑞穂 篠田 信之
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.228-232, 2003-07-01 (Released:2010-02-25)
参考文献数
11
被引用文献数
3

自然歩行中のフットプリントより分類された, 正常足, 横アーチ低下足, 後足部回内足に対する舟状骨パッドの設置が, 努力下最速歩行時の歩幅に及ぼす影響について検討した. 舟状骨パッド非設置時の歩幅は, 単位身長あたり正常足で平均54.4±6.9%, 横アーチ低下足で平均52.5±2.7%, 後足部回内足で平均52.6±3.9%であった. 横アーチ低下足と後足部回内足は正常足に対しその割合は有意に低値であった (p<0.05%). 舟状骨パッドの設置により, 正常足では平均54.5±7.2%と歩幅の延長は認められなかったが, 横アーチ低下足は平均53.4±3.0%に, 後足部回内足では平均53.7±3.5%となり有意にその割合は増加した (p<0.05). また, その割合は正常足と有意差を認めなかった. 横アーチ低下足, 後足部回内反足等のアライメント異常を有する足部に対する舟状骨パッドは, 荷重に対する足部のアライメント不良を是正することによる屈曲モーメントの効率化と共に, 足部内在屈筋力の増大作用により, 歩幅が延長したと考えられた. しかしながら, 正常足に対する舟状骨パッドの設置ではその効果が乏しく, 処方に当たっては目的の明確化が必要である.
著者
栗田 慎也 髙橋 あき 髙橋 忠志 久米 亮一 山崎 健治 尾花 正義
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.69-73, 2021-01-01 (Released:2022-01-15)
参考文献数
15

脳卒中発症早期より長下肢装具(Knee-Ankle-Foot-Orthosis : 以下,KAFO)を使用する報告は増えているが,KAFOの使用や作製に伴う有害事象の報告はない.そこで,急性期病院である当院で,脳卒中発症早期患者に対するKAFOの使用や作製に伴う有害事象を後方視的に調査し,それに対する対策を行った.対象は2017年8月から2019年7月までの間に報告された有害事象データとした.この調査期間内の有害事象は376件あり,そのうちKAFOに関するものは25件(6.6%)であった.有害事象の多くは備品KAFOで生じており,最も多かった内容は医療関連機器圧迫創傷(Medical Device Related Pressure Ulcer : 以下,MDRPU) 6件であった.急性期病院での備品KAFOの使用には,MDRPUの発生予防対策や創傷に対する知識獲得が重要と考える.
著者
藤原 健司
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.108-111, 2015-04-01 (Released:2016-04-15)
参考文献数
4
被引用文献数
1

四節リンク機構と油圧電子制御を組み合わせた世界で初めての膝継手ALLUXTM(アルクス)を開発した.ナブテスコ(株)の義足分野の取り組みは1974年に兵庫県総合リハビリテーションセンターからの依頼を受けたのがきっかけであり,1993年に世界で初めての電子制御義足「インテリジェント義足膝継手」の製品化に成功した.その後,多様化したニーズに対応すべく,さまざまな膝継手を開発した.そして新しく開発したALLUXTMは,いままで培ってきた多節リンク設計技術や高性能油圧設計技術などのコア技術に加え,新たに電子式歩行センサや歩行制御システムを組み合わせた最新の膝継手である.本稿では開発の経緯や特徴を紹介する.
著者
吉尾 雅春
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.76-79, 2012-04-01 (Released:2014-01-15)
参考文献数
12
被引用文献数
2
著者
渡辺 英夫 平山 史朗 島袋 公史
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.7-12, 2012-01-01 (Released:2013-12-15)
参考文献数
10
被引用文献数
3

脳卒中に対してのシューホーンブレースとその類似装具を含めたシューホーン型短下肢装具は,わが国での処方頻度が高いが,その形状と適応病態との関連についての検討はまだ十分とは言えない.本装具の形状によるプラスチックのたわみの程度と完成時の背屈角度,靴を履いて起立した時の下腿の前傾角度(SVA)などの違いによって,適応となる足関節部の筋力,膝関節の安定性,下腿三頭筋の痙縮の程度などが変わることを強調した.さらに本装具を装着しての歩行で問題が見られた時の対処法について述べた.
著者
遠藤 正英 橋本 将志 篠原 志保 児玉 春生 猪野 嘉一
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.50-52, 2016-01-01 (Released:2017-01-18)
参考文献数
6

脳卒中片麻痺患者において,長下肢装具の使用は重要である.しかし,種々の理由により長下肢装具の処方を躊躇することがある.そこで,短下肢装具へ容易に変更可能な長下肢装具があれば,用途に応じた使用が可能になると考え本装具を作製した.本装具を症例に使用したところ,訓練中は長下肢装具と日常生活は短下肢装具での使い分けが可能となり,日常生活が車椅子で自立した.また,麻痺の状態に応じて長下肢装具,短下肢装具の使い分けも可能だったため,カットダウンがスムーズに行え,短下肢装具での退院が可能となった.
著者
江原 義弘
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.57-61, 2012-01-01 (Released:2013-12-15)
参考文献数
3
被引用文献数
2