著者
石川 伸一 海野 玖仁湖 猿舘 小夏 小泉 玲子 住 正宏
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】分類することは、概念の整理や定義の確立に有効であり、調理の分野でも、食材、調理法、各国料理などを指標に、料理の分類が行われている。私たちは、①料理レベル、②食材・食品レベルおよび③組織・分子レベルの三段階から料理構造をモデル化し、エルヴェ・ティスが提唱した「食材の状態」と「分子活動の状態」の二つの要素に基づいた物理化学的な記号を使った「式」を用いて料理を表現することを目標にしている。この料理構造に基づいた「料理の式」によって、料理をこれまでにはない視点の新しい分類法で確立することが本研究の目的であり、本発表では①料理レベルでの料理の式化および分類について報告する。<br>【方法】NHKきょうの料理100選に取り上げられている料理をレシピに基づいて、エルヴェ・ティスの提唱した「食材の状態」(気体:G、液体:W、油脂:O、固体:S)と「分子活動の状態」(分散:/、併存:+、包合:&sub;、重層:&sigma;)の2つの要素で式化し、それらの比較およびクラスター分析等を行った。<br>【結果】式を作成した結果、食材の要素は、Sが最も多く使用されており、次いでWであった。また、+の状態構造を持つ料理が最も多く、次いで/が多い結果となった。従来の主食、主菜、副菜の分類ごとに式の特徴をみると、主食中に&sigma;の出現率が高く、副菜中には/が多く観察された。階層クラスター分析の樹形図作成の結果、大きく三つに分類した場合、Oの要素を含む長い式のグループ、Wを含み主に/と+で構成されるグループ、それ以外のグループに分かれる特徴が見られた。今後、より物理化学的な料理構造の特徴に基づいた分類を行うことによって、料理が持つこれまでの固定観念に縛られることなく、食品や料理の科学的体系化に役立つことが期待される。
著者
石川 伸一 猿舘 小夏
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成28年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.71, 2016 (Released:2016-08-28)

【目的】昨年度の本大会によって、エルヴェ・ティスの考えに基づき料理をマクロレベルとミクロレベルの双方から式化、分析し、料理を構造によって分類できることを示唆した。「料理の式」を確立するためにはより多くの式の作成、料理構造観察、定義の見直しを繰り返し行う必要があると考える。よって本研究では①レシピに基づいた料理の式の作成と②構造観察に基づいた料理の式の作成を行うこととした。また料理の式の応用例として新しい料理の開発が期待できるため、③新規料理開発方法の提案を行うこととした。 【方法】①森永乳業株式会社のウェブサイトに掲載されている「乳製品を使ったレシピ」から、主食・主菜・副菜あわせて380品を対象とした。②揚げ物の構造に着目し揚げ油の浸透具合を観察した。実験試料として鶏ささみを用い、脂溶性色素であるスダンⅣによって油を染色した。③料理式の改変パターンを考え、実際に「酒盗のピザ」について式を改変することにより料理を作成した。 【結果】①要素数を比較したところ、固体S、液体W、油脂O、併存+、包合⊃、重層σの数が「NHKきょうの料理」よりも「乳製品を使った料理」において有意に多い結果となった。これらのことから、乳製品の使用が料理の構造を複雑化している可能性を示した、②天ぷらのレシピに基づいた式はS1⊃(O/S2)であるが、観察に基づいて新しい基準に従うとS1⊃S2⊃(O/S2)に変化した。このことから構造観察に基づいた式は料理式の定義を見直す手がかりになることが考えられ、油の浸透割合など数値を用いることでより正確な構造を表現できることが示唆された。③式の改変方法には様々なパターンがあり、これらを組み合わせることで料理式は多様に変化すると考えられ、料理の開発への利用が期待できる。