著者
石川 伸一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.372-373, 2019-08-20 (Released:2020-08-01)
参考文献数
4

私たちが普段料理やスイーツを食べる前に,その色や形のビジュアルや,漂う香りなどから目の前の料理を評価する。この料理やスイーツのおいしさを決める要因はさまざまで,外観,におい,味,温度,食感などの「食べもの側の要因」はもちろんであるが,空腹具合や健康状態の生理的な要因や,メンタル面の心理的要因などの「食べる人側の要因」も考えなければならない。つまり,おいしいスイーツの秘密を探ったり,おいしいスイーツを開発することを極めていけば,必然的に「食」だけではなく,「人」がおいしく感じることについても分子レベルで調べることに行き着くことになる。その例をいくつか紹介する。
著者
濟渡 久美 三浦 春菜 石川 伸一
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.174, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】【目的】食品中の成分や調理により添加された調味料の濃度分布等は,風味や食感に影響を与える。しかし,食品中の成分や調味料等の濃度分布を可視化した研究は少ない。本研究では,ハイパースペクトルカメラとデジタルカメラを用いて,揚げ物における油や煮物における煮汁に関し,時間経過や保存温度の違いによる浸透程度の観察を行うことを目的とした。【方法】〈揚げ物〉実験試料として鶏ササミ,エビなど用い,脂溶性色素スダンⅣで染色した油で天ぷらを揚げた。揚げた試料は,冷蔵,常温,ホットショーケースで保存し,一定時間後に試料の中 心を包丁でカットし,断面をデジタルカメラで観察した。 〈煮物〉実験試料としてダイコン,コンニャクなどを用い,水溶性色素青色 1 号で着色した煮汁で煮物を作製した。沸騰してから 15分煮込んだ後,試料の中心を包丁でカット後,断面をデジタル カメラおよびハイパースペクトルカメラで観察した。また各試料を鍋ごと冷蔵,常温で保存後,試料の中心を包丁でカットし,断面をデジタルカメラおよびハイパースペクトルカメラで観察した。 【結果・考察】〈揚げ物〉すべての実験試料において油の浸透は衣までであった。揚げてから時間が経っても油は内部まで浸透しな かった。保存温度の違いは油の浸透に大きな影響を与えなかった。 〈煮物〉ハイパースペクトルカメラでの観察の結果,常温保存の 試料の方が冷蔵保存の試料より煮汁が浸透した。 食品中の成分の空間的配置や存在状態などを明らかにすること,テクスチャーや風味との関連性を交えて検討することにより,おいしさの物理的解明につながることが考えられる。
著者
元木 康介 石川 伸一 朴 宰佑
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.92.20402, (Released:2021-01-31)
参考文献数
108
被引用文献数
2

The potential use of insects as a novel food resource has recently attracted a great deal of attention because of their environmental and nutritional benefits. Nevertheless, despite growing interest in the use of insects as food, residents of economically developed countries tend not to accept insect-based foods. This study reviewed earlier reports of the literature of consumer acceptance of insect-based foods. Based on the literatures, this review established a theoretical model of acceptance of insect-based foods. Sensory attributes (e.g., taste, smell, appearance) and cognitive attributes (e.g., nutritional value, environmental benefits), and individual traits (e.g., gender, food neophobia, sensation seeking) might influence the acceptance of insect-based foods via emotional processing (e.g., disgust, anxiety, excitement, curiosity). The practical implications for industries and future prospects are discussed.
著者
濟渡 久美 長谷川 莉子 桑原 明 石川 伸一
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.67-78, 2022 (Released:2022-03-04)
参考文献数
30
被引用文献数
1

豆乳および牛乳を用いて, 各種増粘剤 (ゼラチン, キサンタンガム, ɩ-カラギーナン) 添加によるエスプーマの起泡安定性を中心とした物理的特性, および若年層, 高年層による官能特性を検討した. 起泡性は, 豆乳N2Oエスプーマおよび牛乳N2Oエスプーマともに増粘剤添加濃度が高いほど起泡性が低下する傾向がみられた. 泡沫の安定性は, 豆乳N2Oエスプーマおよび牛乳N2Oエスプーマともに増粘剤添加濃度が高いほど増加した. 食材によって, 安定性の向上に適した増粘剤の種類や濃度が異なることが示唆された. 嚥下調整食コード2の食品物性を示したエスプーマは, 2.0%ゼラチン添加牛乳N2Oエスプーマ, 0.2%ɩ-カラギーナン添加豆乳N2Oエスプーマであった. 若年層, 高年層による官能評価の結果豆乳N2Oエスプーマは有意に飲み込みやすいと識別され, 豆乳CO2エスプーマは苦いと識別された. 0.2%ɩ-カラギーナン添加豆乳N2Oエスプーマは若年層において, 最もべたつきやすいと識別された. 増粘剤を添加した豆乳および牛乳エスプーマは, 嚥下調整食の新しい調製方法として期待される.
著者
元木 康介 石川 伸一 朴 宰佑
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.92, no.1, pp.52-67, 2021 (Released:2021-04-25)
参考文献数
108
被引用文献数
2

The potential use of insects as a novel food resource has recently attracted a great deal of attention because of their environmental and nutritional benefits. Nevertheless, despite growing interest in the use of insects as food, residents of economically developed countries tend not to accept insect-based foods. This study reviewed earlier reports of the literature of consumer acceptance of insect-based foods. Based on the literatures, this review established a theoretical model of acceptance of insect-based foods. Sensory attributes (e.g., taste, smell, appearance) and cognitive attributes (e.g., nutritional value, environmental benefits), and individual traits (e.g., gender, food neophobia, sensation seeking) might influence the acceptance of insect-based foods via emotional processing (e.g., disgust, anxiety, excitement, curiosity). The practical implications for industries and future prospects are discussed.
著者
石川 伸一 海野 玖仁湖 猿舘 小夏 小泉 玲子 住 正宏
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】分類することは、概念の整理や定義の確立に有効であり、調理の分野でも、食材、調理法、各国料理などを指標に、料理の分類が行われている。私たちは、①料理レベル、②食材・食品レベルおよび③組織・分子レベルの三段階から料理構造をモデル化し、エルヴェ・ティスが提唱した「食材の状態」と「分子活動の状態」の二つの要素に基づいた物理化学的な記号を使った「式」を用いて料理を表現することを目標にしている。この料理構造に基づいた「料理の式」によって、料理をこれまでにはない視点の新しい分類法で確立することが本研究の目的であり、本発表では①料理レベルでの料理の式化および分類について報告する。<br>【方法】NHKきょうの料理100選に取り上げられている料理をレシピに基づいて、エルヴェ・ティスの提唱した「食材の状態」(気体:G、液体:W、油脂:O、固体:S)と「分子活動の状態」(分散:/、併存:+、包合:&sub;、重層:&sigma;)の2つの要素で式化し、それらの比較およびクラスター分析等を行った。<br>【結果】式を作成した結果、食材の要素は、Sが最も多く使用されており、次いでWであった。また、+の状態構造を持つ料理が最も多く、次いで/が多い結果となった。従来の主食、主菜、副菜の分類ごとに式の特徴をみると、主食中に&sigma;の出現率が高く、副菜中には/が多く観察された。階層クラスター分析の樹形図作成の結果、大きく三つに分類した場合、Oの要素を含む長い式のグループ、Wを含み主に/と+で構成されるグループ、それ以外のグループに分かれる特徴が見られた。今後、より物理化学的な料理構造の特徴に基づいた分類を行うことによって、料理が持つこれまでの固定観念に縛られることなく、食品や料理の科学的体系化に役立つことが期待される。
著者
神崎 宣次 石川 伸一 森山 花鈴 服部 宏充 太田 和彦 斉藤 了文 篭橋 一輝 杉本 俊介 鈴木 晃志郎
出版者
南山大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2021-07-09

本研究の目的は次の二つです。第一に、人と各種サービス、技術、自然などの多様な要素の複合体としての都市を、個別の要素に着目するのではなく、それらの複合性に焦点を置いて分析し、都市の現在の問題と今後のあるべき姿を明らかにします。具体的には食、レジリエンス、情報、経済、そして倫理の観点を相互に連関したものとして分析します。第二に、このような学際的研究を遂行するために必要な研究手法を開発するため、プロジェクト組織を工夫することを含めた方法論のパッケージとして本研究をデザインしています。そして、都市を対象とした研究をそのモデルケースとして実施することで、方法論としての有効性を示します。
著者
濟渡 久美 吉成 愛未 石川 伸一
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】<br><br>低温調理は食材を一般的な調理温度より低い55℃~90℃程度の温度帯でじっくり加熱する調理法である。長時間加熱することで軟らかくなり,また真空包装して調理することにより様々な長所を有する。近年この真空低温調理が注目され,種々の食事提供の場で幅広く活用されているが,2日間以上の長時間調理の報告はほとんどされていない。そこで,真空低温調理による食肉への長時間加熱の影響を検討することを目的とした。<br><br>【方法】<br><br>牛すね肉,豚すね肉それぞれに対し1%重量の塩を添加後,真空処理し,恒温乾燥器で55,60,65,70,75℃で1,3,5,7日間加熱調理したものを試料とし,レオメーターを用いてかたさを測定した。官能評価は,牛すね肉は65℃で,豚すね肉は70℃で1,3,5,7日間調理したものを試料とし,「かたさ」「多汁感」「うま味」「香り」「脂っこさ」「色」「総合評価」の7項目について7段階評点法で行った。パネルは18歳~23歳の男女71名とした。<br><br>【結果】<br><br>レオメーターでの測定の結果、牛すね肉の長時間調理について、調理温度が高いほどテクスチャーが柔らかくなる傾向がみられ、全ての温度帯で5日間調理のサンプルは1日間調理と比較し有意にかたさの値が減少した。55℃~75℃の長時間調理ではタンパク質変性,特にコラーゲンのゼラチン化が最もかたさに影響を与えると考えられる。豚すね肉の官能評価について、総合評価では3日と5日、3日と7日で調理時間が長くなるほど有意に低下する傾向がみられた。豚すね肉はコラーゲンの変性の進行に伴い、コラーゲン変性を3日以内の加熱変性の状態に抑えたものが好まれる傾向にあるのではないかと考えられる。
著者
石川 伸一 猿舘 小夏
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成28年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.71, 2016 (Released:2016-08-28)

【目的】昨年度の本大会によって、エルヴェ・ティスの考えに基づき料理をマクロレベルとミクロレベルの双方から式化、分析し、料理を構造によって分類できることを示唆した。「料理の式」を確立するためにはより多くの式の作成、料理構造観察、定義の見直しを繰り返し行う必要があると考える。よって本研究では①レシピに基づいた料理の式の作成と②構造観察に基づいた料理の式の作成を行うこととした。また料理の式の応用例として新しい料理の開発が期待できるため、③新規料理開発方法の提案を行うこととした。 【方法】①森永乳業株式会社のウェブサイトに掲載されている「乳製品を使ったレシピ」から、主食・主菜・副菜あわせて380品を対象とした。②揚げ物の構造に着目し揚げ油の浸透具合を観察した。実験試料として鶏ささみを用い、脂溶性色素であるスダンⅣによって油を染色した。③料理式の改変パターンを考え、実際に「酒盗のピザ」について式を改変することにより料理を作成した。 【結果】①要素数を比較したところ、固体S、液体W、油脂O、併存+、包合⊃、重層σの数が「NHKきょうの料理」よりも「乳製品を使った料理」において有意に多い結果となった。これらのことから、乳製品の使用が料理の構造を複雑化している可能性を示した、②天ぷらのレシピに基づいた式はS1⊃(O/S2)であるが、観察に基づいて新しい基準に従うとS1⊃S2⊃(O/S2)に変化した。このことから構造観察に基づいた式は料理式の定義を見直す手がかりになることが考えられ、油の浸透割合など数値を用いることでより正確な構造を表現できることが示唆された。③式の改変方法には様々なパターンがあり、これらを組み合わせることで料理式は多様に変化すると考えられ、料理の開発への利用が期待できる。
著者
石川 伸一 吉成 愛未 濟渡 久美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】<br><br>低温調理は食材を一般的な調理温度より低い55℃~90℃程度の温度帯でじっくり加熱する調理法である。長時間加熱することで軟らかくなり,また真空包装して調理することにより様々な長所を有する。近年この真空低温調理が注目され,種々の食事提供の場で幅広く活用されているが,長時間調理の報告はほとんどされていない。そこで,真空低温調理によるリンゴへの長時間加熱の影響を検討することを目的とした。<br><br>【方法】<br><br>リンゴは8等分にし、30%濃度のシロップを添加後、真空パックし、それぞれ60,70,80,90℃の湯浴中で1,12,24,48時間加熱調理し、色差測定とテクスチャー測定を行った。70℃で加熱したリンゴを用いて,18歳~23歳の男女66名をパネラーとした官能評価を行った。「かたさ」「甘さ」「酸味」「香り」「色」「総合評価」の6項目をそれぞれ7段階評価で行った。<br><br>【結果】<br><br>色差測定では60℃調理と70℃12,24時間のサンプル間を除いたほとんどのサンプル間で,同じ温度条件で時間経過に伴い明度が有意に低下した。加熱時間が長くなるほど,褐変が進行すると考えられる。テクスチャー測定では70℃サンプルでは時間の経過に伴い有意にかたさの値が減少した。70℃調理では調理時間が長くなるほどペクチンの分解が進むと考えられる。官能評価では,理化学試験の結果と同様に,硬さと色は時間の経過とともに値が有意に減少した。しかし,甘さ,酸味に関して,理化学試験ではみられなかった有意差がみられた。
著者
石川 伸一 鈴木 龍太郎 五家 建夫 安田 靖彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.27, pp.45-51, 1999-04-23
被引用文献数
3

衛星コンステレーションを検討する場合は伝送遅廷、サービス領域、地上の移動端末からの可視衛星の最低仰角そして衛星に対する宇宙放射線の影響からなる多くの要素を考慮する必要がある。我々のプロジェクトでは遅延時間を短くする事がマルチメディア通信サービスを達成するための鍵となる要素の一つであると考えて衛星間リンク機能を持つLEOコンステーションを想定した。ここでは、軌道高度、軌道傾斜角、衛星数、軌道面数等のLEOコンステレーションのパラメータについて検討した。例えば、バンアレン帯やサウスアトランティックアノマリ(SAA)での放射線の影響は軌道高度と軌道傾斜角の選定において考慮した。また、衛星間リンクの配置の観点からコンステレーションのパラメータについて検討した。