- 著者
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濟渡 久美
吉成 愛未
石川 伸一
- 出版者
- 日本調理科学会
- 雑誌
- 日本調理科学会大会研究発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.30, 2018
【目的】<br><br>低温調理は食材を一般的な調理温度より低い55℃~90℃程度の温度帯でじっくり加熱する調理法である。長時間加熱することで軟らかくなり,また真空包装して調理することにより様々な長所を有する。近年この真空低温調理が注目され,種々の食事提供の場で幅広く活用されているが,2日間以上の長時間調理の報告はほとんどされていない。そこで,真空低温調理による食肉への長時間加熱の影響を検討することを目的とした。<br><br>【方法】<br><br>牛すね肉,豚すね肉それぞれに対し1%重量の塩を添加後,真空処理し,恒温乾燥器で55,60,65,70,75℃で1,3,5,7日間加熱調理したものを試料とし,レオメーターを用いてかたさを測定した。官能評価は,牛すね肉は65℃で,豚すね肉は70℃で1,3,5,7日間調理したものを試料とし,「かたさ」「多汁感」「うま味」「香り」「脂っこさ」「色」「総合評価」の7項目について7段階評点法で行った。パネルは18歳~23歳の男女71名とした。<br><br>【結果】<br><br>レオメーターでの測定の結果、牛すね肉の長時間調理について、調理温度が高いほどテクスチャーが柔らかくなる傾向がみられ、全ての温度帯で5日間調理のサンプルは1日間調理と比較し有意にかたさの値が減少した。55℃~75℃の長時間調理ではタンパク質変性,特にコラーゲンのゼラチン化が最もかたさに影響を与えると考えられる。豚すね肉の官能評価について、総合評価では3日と5日、3日と7日で調理時間が長くなるほど有意に低下する傾向がみられた。豚すね肉はコラーゲンの変性の進行に伴い、コラーゲン変性を3日以内の加熱変性の状態に抑えたものが好まれる傾向にあるのではないかと考えられる。