著者
玄 丞烋 車 源日 筏 義人
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.673-680, 1989-11-25 (Released:2010-11-22)
参考文献数
11
被引用文献数
30 40

ポリビニルアルコール (PVA) 濃厚水溶液を凍結させた後, 0℃付近の低温にて徐々に解凍させることにより高含水率で高強度なPVAハイドロゲルが得られる. 重合度1750, けん化度99.5mol%のPVA濃度30wt%の水溶液を-20℃で24時間凍結させた後, 5℃にて10時間かけて徐々に解凍させて得られたPVAハイドロゲルの強伸度はそれぞれ約60kg/cm2. と500%を示すのに対し, 同じ条件下で凍結させ, 室温下, 3時間で解凍させたPVAハイドロゲルの強伸度は35kg/cm2と400%であった. PVAハイドロゲルはPVA濃厚水溶液の凍結の際水相とPVA相とに相分離され, その後の低温結晶化により多孔質構造が形成される. X-線回折とSEM観察からPVAハイドロゲルは微結晶をもつミクロ多孔質構造であることが認められた.
著者
車 源日 玄 丞烋 筏 義人
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.425-430, 1991-07-25 (Released:2010-11-22)
参考文献数
14
被引用文献数
3 5

透明及び不透明ポリビニルアルコール (PVA) ハイドロゲルに対する種々のタンパク質の吸着量を比較した. タンパク質としてはクロラミン-T法で125Iラベル化した免疫グロブリンG (IgG), 牛血清アルブミン (BAS) 及びりゾチームを用い, 125Iの放射能を測定することにより吸着量を求めた. 透明PVAハイドロゲルに対するタンパク質の吸着量は不透明PVAハイドロゲルとポリ (2-ヒドロキシエチルメタクリレート) (PHEMA) ハイドロゲルより少なく, その値は1/2~1/30であった. また, 透明PVAハイドロゲルにおいてはIgGとBSAの吸着量がPVAハイドロゲルの含水率に関係なく一定の値を示したが, 分子量が14,600と低いリゾチームではPVAハイドロゲルの含水率に依存し, 含水率が低くなるにつれて低下した.
著者
堤 定美 南部 敏之 玄 丞烋
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

スポーツによる脳震盪などの障害を予防する防具としてのマウスガードやヘッドギアなどについて、その安全性について生体力学的に評価し、新しい衝撃吸収用生体材料の開発研究を行った。衝撃解析には有限要素法とMADYMOを併用した。マウスガードの効果についてまとめると、下顎への打撃に対して緩衝する能力は十分に認められ、特に開口時における打撃に対して有効であった。この緩衝効果は5人のボランティアにおけるオトガイへの振子による打撃試験において、頬骨への加速度の伝播状態からも確認できた。PVAゲルは生体にとって安全であり、高含水率、高弾性率を有するが、水が飛散し易いので、保水性に優れた化合物を複合化すれば、耐久性に優れた高衝撃吸収性ゲルとなり、生態親和性に優れた防具として使用できる。有機溶媒を用いたPVAゲル化合成法を考案した。重合度8800、30wt%のPVAを水:DMSO=2:8に調整した有機溶媒を用いて冷凍してゲル化すると、均一でヤング率の高い材料を作ることができた。重合度の低い(1700)PVA試料は、エタノールによって有機溶媒を置換し、冷凍してゲル化を促進させた。重合度の高い(8800)試料は、140℃、数百気圧にて押し出し成型を行い、冷凍してゲル化を行った。この方法により、20〜40%の高濃度PVAゲルが得られた。別に、PVAを140℃にてDMSOに溶解させ、メタノール中に再沈殿させてDMSOを除いた。再沈して得た試料を真空乾燥後、140℃で5分間ホットプレスで成形した有機溶媒沈殿法試料のtanδの温度依存性は、0〜50℃にピークを持ち、前記の試料とブレンドすれば、tanδが低い温度領域を相互補完できる。このPVAゲルは大きなヤング率を持つにも関わらず100%以上の伸び率を示し、80%まで伸ばした後、除荷した履歴曲線は、強い衝撃に対する吸収特性を示した。