著者
長谷川 功 北西 滋 宮本 幸太 玉手 剛 野村 幸司 高木 優也
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
pp.19-00028, (Released:2019-12-10)
参考文献数
77
被引用文献数
7

サクラマスとヤマメは,降海するか河川に留まるかというように生活史は異なるが,同種Oncorhynchus masou masouである。ただし,それぞれが利用される水域や目的はサクラマスは主に沿岸漁業,ヤマメは内水面の遊漁と異なる。また,現在の資源管理体制は両者の生物学的な共通・相違点は十分に考慮していない。そのため,一方の放流種苗が他方と交雑し,生活史の変化すなわちサクラマスとヤマメの資源組成が変化し得る等という懸念もある。本総説では,サクラマスとヤマメに関する先行研究から両者の性質を整理し,野生魚主体の包括的な資源管理を提言する。
著者
玉手 剛
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第51回日本生態学会大会 釧路大会
巻号頁・発行日
pp.832, 2004 (Released:2004-07-30)

体サイズの性的二型 (sexual size dimorphism, SSD)、すなわち体サイズの性差は多くの動物種で認められており、SSDの進化プロセスを解明することは進化生態学の主要課題の1つとなっている。本研究においては、降海型サクラマスにおけるSSDの緯度間変異の把握とその進化プロセスを検証した。 降海型サクラマスの回帰親魚の性比には緯度クラインがあると考えられている。例えば、降海型の南限地域 (北陸南部および三陸中部) においては回帰親魚の100%近くがメスで占められるが,北限地域にあたるロシア沿海州北部地域やカムチャッカ西岸ではメスの割合が60%ほどになる。 この回帰親魚における性比の緯度クラインは,北方域ほど回帰メス一尾に対する回帰オスの数が増加すること(すなわち実効性比が増加すること)を示している。 このことから北方の個体群ほど繁殖場での降海型オス間の競争が激化するため,より大型のオスが高い受精成功を得ることができる(北ほど大きな降海型オスが有利)と推察される。 そこで本研究ではサクラマスの降海型個体群において,1)メスの回帰親魚の平均サイズは緯度と関連がないが、個体群の緯度位置が高くなるほど 2) オスの回帰親魚の平均サイズは大きくなるので、3) 回帰親魚の相対サイズ (オスの平均サイズ / メスの平均サイズ) が大きくなることを予測した。 今回は、日本海沿岸の20個体群 (北緯36_-_49度の範囲) のデータを用いて、それらの予測を検証した結果を発表する。