著者
王堂 哲
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.81-84, 2020 (Released:2020-05-15)
参考文献数
15
被引用文献数
1

L‐カルニチンはエネルギー源としての長鎖脂肪酸をミトコンドリアマトリクス内に運搬するために必須の成分である. L‐カルニチンの経口摂取によって身体的運動能力に期待される影響については①継続摂取効果 : 筋中への貯留を高めることによるβ‐酸化の亢進, ②単回摂取効果 : 肝での脂肪のエネルギー化促進, ③運動後の筋肉痛緩和効果 : 局所的な毛細血管での虚血状態が低減され, 結果として筋トレ後に発生する活性酸素に起因した細胞損傷が抑制される作用, などの側面に大別することができる. また心筋はエネルギー源としての脂質への依存性が高く, 遊離脂肪酸によるミトコンドリア膜透過性遷移誘導に起因する機能不全リスクに晒されやすい. ここで十分量のL‐カルニチンが共存することによりミトコンドリア膜が保護され, アポトーシス抑制を通じたアスリートの安全性向上への寄与も示唆されている. 近年L‐カルニチンのスポーツへの利用では特定の運動における持久力など単純なパフォーマンスの増進というよりも, むしろより一般的な体調マネジメント, 総体的なトレーニング効率の向上といった側面に主眼がおかれつつあるといえる.
著者
櫻井 洋一 長谷川 由美 難波 秀行 王堂 哲
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.753-762, 2018 (Released:2018-06-20)
参考文献数
37
被引用文献数
1

【目的】サルコペニア防止のための基礎的研究としてL-カルニチン(以下、LCARと略)と分岐鎖アミノ酸(branched chain amino acids;以下、BCAAと略)を投与後に運動負荷を行い、エネルギー基質代謝、身体組成、運動後の筋肉痛に対する効果を検討した。【方法】若年健常女性12名を対象に、LCAR+BCAA投与群(n=6)と非投与群(対照群、n=6)の無作為に2群に分け、運動負荷(VO2 max 50 %、60分)前後における血清エネルギー基質濃度、身体組成、筋肉痛の程度を検討した。運動負荷前にLCAR1000 mg/dayを14日間経口投与、運動負荷2時間前にBCAA7.2 gを経口投与した。【結果】LCAR+BCAA投与群の血清遊離・アシル・総LCAR値は対照群に比較して差を認めずBCAA投与後の運動負荷前後におけるLCAR+BCAA投与群の血清BCAA値は対照群に比較し有意に高値であった(P<0.0001)が、遊離脂肪酸値は低下した。運動負荷後の体組成は両群間に差を認めなかったが、LCAR+BCAA投与群の運動負荷24、48、72時間後の筋肉痛は有意差を認めなかった。【結語】運動負荷前のLCAR+BCAA投与は運動負荷後の体組成や筋肉痛には差を認めなかったが運動後の脂肪分解亢進を減弱する可能性が示された。