著者
宮前 多佳子 井崎 桜子 生田 孝一郎 横田 俊平 山中 寿
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.226-232, 2013 (Released:2013-08-31)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

Chédiak-Higashi症候群は原発性免疫不全症候群のひとつに分類され,わが国では約14例の報告があるに過ぎない.臨床的には易感染性,部分白子症(特異な白銀髪,虹彩色素の減少,乳白色で,紫外線により赤味を帯びる皮膚),出血傾向,進行性神経障害を特徴とするが,accelerated phaseと呼ばれる増悪期には,発熱,脾腫,骨髄抑制などを伴う血球貪食性リンパ組織球症を併発する.また,主に顆粒球系細胞に特徴的な巨大顆粒(ライソゾーム),細胞質封入体を認める.一方,本症候群でみられる血球貪食性リンパ組織球症は原発性血球貪食症候群の一つに分類される.診断には本症候群の存在と特徴的血液像を認識することが必要である.自験例は4ヵ月の男児.発熱,哺乳力低下,肛門周囲膿瘍,肝脾腫にて入院,当初は末梢血で異型リンパ球増多(後に本疾患特有の巨大顆粒を有するリンパ球と判明)が検出され,ウイルス関連血球貪食症候群が疑われた.しかし,ASTやLDHなど細胞傷害を示す細胞逸脱酵素の変動は軽微で,血管内皮障害と凝固線溶系の破綻も急速進行性ではなく,EBウイルスなど明らかな起因ウイルスは検出されなかった.末梢血スメアで細胞内巨大顆粒を検出し,特異な白銀髪,部分白子症と,HLH-2004改定案の診断基準に基づき,血球貪食性リンパ組織球症を呈したChédiak-Higashi症候群と診断した.骨髄移植により臨床症状と検査所見の改善を得た.