著者
山形 孝志 敦賀 貴之 植松 良公 生藤 昌子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究課題では、炭素排出権取引市場や炭素税など炭素価格付加政策の排出削減効果と経済活動への影響を、統計・理論、両面からの分析を行う。具体的には、新たな高次元動学パネルデータ統計分析手法を開発し(研究課題1)、世界炭素排出量と経済の国際動学的関係を実証分析する。そして炭素価格付加政策の効果とマクロ経済に与える影響を、上記統計手法(研究課題2)ならびにマクロ経済理論(研究課題3)から分析する。さらに2020年以降の排出削減の国際的枠組みである「パリ協定」に科学的根拠を与えたIPCCの気温上昇予測値が多数の外部研究結果に基づきどのように導かれたかを、新たな統計的手法よって明らかにする(研究課題4)。
著者
生藤 昌子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

カタストロフィーは起きる確率は非常に低いが一度起きると経済的損失は莫大となる。本研究は、そのようなリスクが存在する状況下での政策分析を可能とする理論的枠組みを探ることが目的である。経済学では一般的に、リスクあるいは不確実性のもとでの意思決定について、リスク回避度一定の効用関数と期待効用理論が用いられる。しかし、1970年代に期待効用理論に整合的な確率変数の分布制約について議論され、その後その制約のもとで分析されてきた。それに対して最近のカタストロフィック・リスクのもとでの環境政策の研究において、期待値が発散する(つまり期待値の無くなる)状況を避けるために、損害の確率分布にその裾部を狭めるような仮定を置く分析の有効性について議論されている。本研究は裾野の広い確率分布に対して期待効用分析可能な効用関数の特性に着目した。環境政策に関する本研究の成果として、昨年度にワーキング・ペーパーのかたちで公表した"Expected utility and catastrophic risk in a stochastic economy-climate model"は、さらに改訂を行い"Weitzman Meets Nordhaus : Expected Utility and Catastrophic Riskina Stochastic Economy-Climate Model"として海外の専門誌に投稿中である。同様に昨年度公表した"Burr Utility"は効用関数の特性を詳細に分析している。絶対的リスク回避度は消費に関して減少し、相対的リスク回避度は増加するが有限であるPareto utilityが、どのような確率分布関数に対しても期待効用分析が可能であることが示されている。論文表題を改めた"Paret-Utility"は、査読付きの国際的な学術誌に掲載が予定されている。