- 著者
-
田上 亮太
- 出版者
- 熊本大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2012
2次元高分子ナノ構造の自己組織的構築のための方法論として、芳香族Schiff base反応を分子間のカップリング反応として用いた「固液界面平衡重合法」を検討している。芳香族Schiff base反応の反応平衡をpHで制御することで、均一溶液中では反応かぎりぎり進行しないにもかかわらず、モノマーの濃縮と疎水効果による反応促進効果が働く固液界面では選択的に平衡重合が進行する。固液界面で起こる自発的なカップリング反応と自己組織化により、分子レベルで配列した構造が形成することをプローブ顕微鏡による観察により明らかにしている。前年度の成果としてのベンゼン骨格をベースとした最小のユニット同士の組み合わせから、ベンゼンユニットがアゾメチン結合によってハニカム状につながれた構造を構築することに成功している。π共役的に繋がれた最もシンプルなベンゼンユニットからなるポーラスハニカムネットワーク構造は、グラフェン、グラフェン状窒化炭素(g-CN)に続く第三の共有結合性2次元ネットワーク状モノレイヤとしての展開が大いに展開される。この成果を受けて本年度は2次元ハニカム状メッシュ構造性薄膜の基板成長の検討を柱に検討を行った。本年度の成果としてモノレイヤに対するこれまでのプローブ顕微鏡による観察に加えて、光電気化学測定によって可視光領域での光電流の発生を確認することに成功した。このことはプローブ顕微鏡での視覚的知見に加えて表面での重合による共役系の延長を裏付ける非常に有力な証拠となり得る。さらに、研究室が持つ基板選択的な重縮合反応に基づく多層薄膜成長のノウハウを組み合わせることで、ポーラスハニカムメッシュ構造を基板上で連続的に自発成長させることで、π共役系がネットワーク状に広がった有機薄膜のその場構築にも成功した。モノレイヤと同様、多層薄膜においても可視光領域における光電流の発生が確認された。