著者
田中 いずみ 神郡 博
出版者
富山医科薬科大学看護学会
雑誌
富山医科薬科大学看護学会誌 (ISSN:13441434)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.161-167, 1999-03

精神神経科, 入院または通院中の男性105名, 女性130名の235名を対象として, 習慣的喫煙の有無を性別, 疾患別に検討したところ, 精神疾患患者の喫煙率は, 男性74.3%女性269%であった.分裂病と躁うつ病群間に喫煙率は, 性差を考慮しても差はなかった.さらに分裂病(n=39)と躁うつ病(n=19), 58名の喫煙患者に対して, 喫煙の動機, 病歴, ハロペリドール投与量, 喫煙本数, ニコチン摂取量, およびタバコ依存症スクリーニング質問表(TDS)を用いてタバコ依存度を比較したところ, 分裂病群と躁うつ病群には喫煙の動機に差があった.喫煙の動機を気持ちが休まるとする分裂病群は躁うつ病群に比べて有意に多く, 手持ちぶさたとする躁うつ病群は分裂病群に比べて有意に多かった.また分裂病群は躁うつ病群に比べてハロペリドール投与量, ニコチン摂取量が有意に多かった.分裂病群と躁うつ病群のタバコ依存度には差がなかった.
著者
田中 いずみ
出版者
富山大学医学会
雑誌
富山大学医学会誌 (ISSN:18832067)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.35-40, 2008-12

目的:本研究の目的はリハビリテーションを行う精神疾患患者の事例から,どのような状況でエンパワーメントとディスエンパワーメントが起こるのかを明らかにすることである。研究方法:総合病院の精神科外来でSSTを行っている,統合失調病型障害の患者,男性,28歳であった。データ収集について面接法,観察法の他に,診療録を資料として用いた。分析方法には生活史法を援用し,事例研究を行った。結果:ディスエンパワーメントが起こった局面では,それに関わる状況として〔病気の苦しみ〕〔生活の困難さ〕〔病気の認めがたさ〕〔孤立した状況〕が見出された。エンパワーメントが起こった局面では,それに関わる状況として〔看護師とのつながり〕〔病気の苦しみ〕〔病気の認めがたさ〕〔家族との絆〕〔目標の設定〕〔SSTへの参加〕〔SSTメンバーとの対話〕〔問題の意識化〕〔情報の選択〕〔行動の拡大〕〔対処能力の向上〕が見いだされた。
著者
神郡 博 田中 いずみ
出版者
富山大学
雑誌
富山医科薬科大学看護学会誌 (ISSN:13441434)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.169-177, 1999-03

病院に働く看護婦は様々なストレスに曝され, 様々な精神保健問題に悩まされていることはよく知られている.しかし, これらの問題を扱った研究はわが国ではあまり見られないそこで我々はこの問題を明らかにするためにこの研究を計画し, 307名の看護婦を対象にかれらが経験している精神保健問題を調べ, 以下のような結果を得た.1)調査した対象者の81%は何らかの精神保健問題を経験し, そのうち5人に1人は精神的問題を持ち, 不眠や食欲不振, 抑うつなどの精神的・身体的不調を感じていた.2)また, 殆どの看護婦は精神保健問題の原因は彼等の対処方法, 仕事の能力, 職場の対人関係, および家族の問題にあると思っていた.3)若く経験の浅い看護婦はその原因を仕事にあると考え, 年配の経験のある看護婦はその原因を子供の養育にあると考えていた.4)対象者の3人に2人は看護婦として大らか, 生真面目, 社交的などの望ましい性格傾向を持っていた.そして大らかな人ほど精神保健問題の経験も少なかった.5)対象者のとっている, 精神保健問題の主な対処方法は寝る, おしゃべりをする, 本を読む, 音楽を聞く, 旅行をするであった.6)これらのことを考えると, 看護婦の仕事に影響する様々な精神保健問題の解決に当たっては, 看護婦自身の努力もさることながら, 病院が看護婦が気軽に利用できる効果的なカウンセリング機構を創り, そのニーズに応えることが重要である.