- 著者
-
田中 伸子
岡村 浩
- 出版者
- The Japan Society of Home Economics
- 雑誌
- 家政学雑誌 (ISSN:04499069)
- 巻号頁・発行日
- vol.34, no.1, pp.13-19, 1983-01-20 (Released:2010-03-10)
- 参考文献数
- 35
以上の実験結果より, 食事がα-アミラーゼ活性の変動因子であることは明らかである.また, その構成要因の一つである咀嚼という口腔内の直接的機械的刺激がごく短時間に終了するという事実より考えると, α-アミラーゼ活性の変動は, 食物摂取による直接的な, あるいは生体内における代謝の機序を含めた間接的刺激が作用していると推察される.唾液中α-アミラーゼ活性の変動要因につき検討を加えた結果をまとめると次のようになった.1) 唾液中α-アミラーゼ活性の変動は, 生活のパターンと密接な関連性をもっており, 食事は大きな変動因子であることが認められた.2) 咀嚼という直接的機械的刺激を口腔内に与えると, ただちに唾液量, pHおよびα-アミラーゼ活性が増加する.また, 咀嚼終了とともに, 咀嚼時間の長短に関係なく, 唾液量, pHおよびα-アミラーゼ活性は減少し, ほとんど咀嚼開始前のレベルにもどり以後大きな変動は示さない.したがって, たんなる咀嚼という機械的刺激は, α-アミラーゼ活性に一過性の変動を与える因子であることが認められた.3) 唾液中α-アミラーゼ活性は個人差が大きく, 332名の女子大生の起床時における活性は271mg/ml salivaであったと同時に行ったアンケート調査より, 食物を口に入れてから嚥下するまでの平均咀嚼回数の多い者のほうが, 少ない者よりα-アミラーゼ活性が高いこと, 澱粉性食品を好む者のほうが, 普通もしくは好まない者より高いことに有意差が認められた.この結果より, 食生活における個人の習慣が唾液中α-アミラーゼ活性と関連があるものと考えられた.