著者
川嶋 辰彦 平岡 規之 山村 悦夫 田中 伸英 平岡 夫之
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

1.我が国の「都市圏システム」及び「都市圏の核都市システム」について:(1)都市圏システムは集中化段階をほぼ終えており、近い将来加速的分散化段階に入る可能性が大きい。(2)核都市システムは分散化段階をほぼ終えており、近い将来加速的再集中化段階に入る可能性が大きい。(3)核都市システムは、空間的循環過程に於いて都市圏システムより凡そ20年先行している。2.我が国の「巨大都市圏システム」及び「中小都市圏システム」について:(1)巨大都市圏システムは、減速的分散化段階の後半期にある。(2)中小都市圏システムは、減速的集中化段階の後半期にある。3.我が國の大都市圏人口の変化について:(1)三大都市圏(東京、大阪、名古屋)の人口増減は、米国大都市圏の人口増減動向を後追いしている。(2)「都市圏人口の純減過程」に対する先行指標と見做せる「核都市人口の純減過程」に目を遣ると、二大都市圏(大阪、名古屋)の核都市人口は既に比較的長期間に恒り続減している。(3)大都市圏の核都市は、空間的人口集散過程の文脈に於て、将来郊外部に対して相対的強者(即ち人口吸収力が相対的に勝る立場)となり得る。(4)大都市圏の核都市は将来、中小都市圏の核都市に対して相対的強者となり得る。(5)三大都市圏人口は1960年代以降続伸しているが人口成長率は三者とも0%に近づきつつあり、これら大都市圏は将来中小都市圏に対して暫らく弱い立場に立つとは言え、上述の諸点に照らすと比較的早い時期に中小都市圏に対して再び相対的強者となり得る可能性が小さくない。4.以上を踏まえて判断すると、大都市圏の核都市部が今後極めてクリティカルな都市機能的役割りを果たす可能性が大きく、その意味で特に東京都市圏中心地域の積極的な創造的都市投資が強く乞われている。